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10 悲惨なドライブ!

 そして待ちかねた翌朝。

 中々寝付けなかったとは思えないほど気持ちの良い目覚めを迎えました。

 しかし、肝心のお天気の方がアレですね……。

 そう、気持ちの良い天気とはほど遠い、具体的に言うと雨が降っていたのですよ。


 えー!!うそでしょ?

 ひどい、ひどすぎます。

 これは神様が私にお与えになった試練なのでしょうか……。

 シクシク。

 しかし、私はあきらめません。

 これから止むかも知れないのです。

 もっとも止んだとしても、雨でぬかるんだ道をお散歩とかどうなの?

 みたいな懸念は有りますが今は置いておきます。

 私は神様に晴れにしてくれるように必死に祈り続けました。

 するとなんということでしょう!

 昼の鐘がなってしばらくすると、雨がドンドンと弱くなってくるじゃないですか。

 霧のような雨はまだ降っているものの、薄く陽の光まで差し込み始め、もうしばらくしたら完全に雨が上がってしまうように思えました。

 ありがとう、神様。これからも相変わらず毎日お祈りしますね。

 と、心の中で感謝の念を浮かべていた時の事、それは起こったのです。


「やぁ、ミス・シドニー。急いで準備をしてください。さぁ、早く!」


 そうです、空気の読めない突然の来訪者……グレーヴスさんがやって来たのです。


「えっ!?一体どうされたのですか、グレーヴスさん」


「トウイツケナムに行くんですよ。ドンやエステラも一緒ですよ」


「トウイツケナム?」


 トウイツケナムってここからかなり離れてるところよね?

 なんでそんな所に行くのかしら?

 というか私は行く気なんてありませんけど。

 頭に???を浮かべている間に、いつのまにやらお兄様とエステラもやってきます。


「昨日の夜から三人で計画を立てていたのよ。メアリーを驚かそうと思ってナイショにしていたの。ねぇ、驚いてくれたかしら?」


 そう言ってエステラは「フフフ」と笑います。


「えっっと……それはびっくりしたけど。ってそういう事じゃないわ。私は行きません」


「「「えっ!?」」」


 三人は同時に声を上げます。

 タイミングがピッタリにハモってましたね。

 いや、そんな『信じられない』って顔で見ないでください。

 だってそんな約束してないじゃない、行きませんよ。


「おぃ、メアリー。折角ミス・グレーヴスがお誘いしてるんだぞ?行かないとはどういうことだ?」


「お兄様すみません。もう他の方と出かけるお約束をしてしまったのです。なので一緒には行かれません」


「約束?一体だれと?」


「レディ・スピードマンと昨夜、一緒に散歩に行くお約束したのです。晴れていたらって約束だったけど、もうスグ雨も上がるのでそろそろいらっしゃるはずです」


 それを聞いたお兄様は明らかなしかめっ面をします。

 大方、『なんて約束をするんだ!』といった所でしょうか?

 というかですね、例え約束が無くてもグレーヴスさんとドライブする気は毛頭ありませんから。


「は、晴れていたらって話だろ?まだ降っているし、今日は来ないんじゃないか?」


「そんな事はありません。絶対晴れますし、晴れたらいらっしゃると思います」


「……ねぇ、メアリー。今日の道の様子だとたとえ雨が上がってもお散歩なんてむりよ、どこもかしこも泥んこだもの」


「……そうかしら」


「えぇ、そうよ。だからいらっしゃらないと思うわよ」


 むー。

 そう言われるとそうかもしれないけど……。

 でも……。

 チラリとグレーヴスさんを見て、そして昨夜のスピードマンさんを思い出し、比較します。

 はぁ……、全然比べ物になりませんね。

 グレーヴスさんと出かけるよりも、わずかでも来る可能性があるならばスピードマンさんを待っていた方がマシに思えますね。


「でも……」


「いや、来ないと思うな。昨夜貴女と踊っていたあの男も一緒なのでしょう?」


「はい、レディ・スピードマンとスピードマンさん、お二人でいらっしゃるはずです」


「で、あれば絶対にこないな。僕はあの男が女性と一緒に馬車にのって出かけるのを見たんだ」


「えっ!?ほ、本当ですか、グレーヴスさん」


「あぁ、本当ですとも、うん、間違いない。だからその二人は絶対にきませんよ」


「そんな……」


 一体どういう事でしょうか。

 朝から雨が降り続いていたので、止むことはないと思って出かけられてしまったのでしょうか……。

 えーん。

 お天気が悪いとはいえ、計り知れないダメージを心に受けてしまいました。


「そういう事なら、僕達と一緒に出掛けても問題ないですよね、さぁミス・シドニー。一緒に行きましょう」


「そうだよ、メアリー行こう」


「ねぇ、メアリー、一緒に行きましょうよ」


 三人があまりに熱心に誘うせいか、だまって成り行きを見ていたエンジェル夫人にも、


「お約束が無しになったんなら、行ってきたら?」


 と、言われていまいました。

 とほほ……。

 こうなってはお断りするのは難しそうです。


「はい、わかりました。ではお兄様たちと出かけてきます、おばさま」


 そうして私は失意のうちにグレーヴスさん達と出かける事になってしまいました。






§ § §






「では行きますよ、ミス・シドニー。おい、ドン。行くぞ」


 そう声を掛けるや否や、グレーヴスさんの馬車を先頭に馬は駆け出します。

 そしてしばらく馬車が駆けだしたころ、私は見てしまったのです。

 えっ!?

 うそっ!?

 あれって……。

 そう、間違いありません!

 スピードマン兄妹じゃないですか!

 そしてレディ・スピードマンと私の目が合います。

 レディ・スピードマンはその綺麗な目をぱちくりさせて、とても驚いた顔をしていた……ように見えました。


「ちょ、ま、まってください!グレーヴスさん馬車を止めてください!」


「はははは、ミス・シドニーどうされたんですか?一旦走り出したら僕の馬車は簡単には止まれませんよ」


 そう言ってグレーヴスさんは馬車を止めようとはしません。


「い、今、スピードマンご兄妹がいましたよ!どういうことですか?お二人は出かけられたのではなかったのですか?」


「……おや?そうでしたか?きっと貴女の見間違いでしょう。さぁスピードを上げますよ。ミス・シドニーはしっかりと僕につかまってください。そうでないと振り落とされてしまいますからね」


 そう言ってグレーヴスさんは馬に鞭を入れ、さらにスピードを上げます。

「ガコン」と大きく馬車が揺れ、私は「きゃぁ!」と叫びながら必死で隣のグレーヴスさんにつかまります。


「く、グレーヴスさん!止めてください!降ろしてください!」


 と、私は必死になって叫びますが……。


「ははは、聞こえませんよ、ミス・シドニー。これ以上口を開くと舌を噛んでしまいますよ。それ!それ!」


 そう言って馬にさらに鞭を入れます。

 ぐぬぬぬ……。

「がこん、ガコン」と馬車が大きく揺れる為、大きな声を上げていると本当に舌を噛みかねません。

 私は口をぎゅっと結びながら必死でグレーヴスさんの腕にしがみつくしかありませんでした。

 だけどそんなスピードが長続きするわけはありませんよね。

 しばらくすると馬も疲れたのか、スピードが緩みます。


「……グレーヴスさん!なぜ嘘をついたのですか?先程スピードマンご兄妹が私のホテルへと歩いてる姿を見ましたよ」


 と、グレーヴスさんを強く非難したのですが。


「……貴女の見間違いではないのですか?僕は確かに昨日の男が馬車にのって何処かへ行くのをみましたよ」


 ……なんということでしょう、グレーヴスさんはご自分の非を決して認めようとはしません。

 でもその時の私の頭には、グレーヴスさんがわざと嘘をついて私をだましたんだ、という思いでいっぱいでした。

 その後もグレーヴスさんはイロイロとご自分を正当化されるような事を話していましたが、その時の私はすっかり頭に来ていたので、何を話していたのかはよく覚えていません。

 それに、嘘を吐いたグレーヴスさんに神様からの天罰が下りました。

 一時は回復すると思われた天気でしたが、再び雲が厚くなり始めると、ポツリ、ポツリと雨が降り始めたのです。


「ちっ、雨か」


 グレーヴスさんも恐ろしい顔で空を睨みつけましたが、雨はドンドンと強さを増し、最終的には土砂降りになります。


「おい、ステファン。この雨じゃトウイツケナムに行くのは無理だ。ホテルに戻ろう」


「畜生、なんてことだ」


 そして私達はホテルへとUターンします。

 つめたい雨に降られ、私もグレーヴスさんもびしょぬれです。

 そして、再びホテルに戻るまで、私達は一言も話すことはなかったのです……。

 そしてホテルにたどり着いた私は挨拶もそこそこに部屋に戻ります。

 すると私をみたエンジェル夫人が、


「あらメアリー、びしょぬれじゃ無いの。そのままでは風邪をひいてしまうわ、早く着替えてらっしゃい。……あっ、そうそう。貴女が出かけた後にスピードマンご兄妹が尋ねてきたのよ。貴女が出かけたと知ると、とても悲しい顔をしていたわ。可哀そうに、貴女が出かけなければよかったのにねぇ」


 などと仰ってくれるではありませんか……。

 私は「おばさまが『行ってきたら?』って言うから仕方なく出かけたんですよ!」と声を大にして言いたかったのを喉元でなんとか止めます。


 その日は私は寝るまで、いえ、ベッドに入ってからも悲しい気持ちでいっぱいでした。

 うぇーん、泣きたいよ……。

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