00 プロローグ
皆さま、おはこんばんにちわ。
私はメアリー・シドニーと言います。
歳は花も恥じらう17歳!
お父様は貴族……などではなく牧師をしております。
これでも教区の人には慕われているんじゃないかな?
家は貧乏ではなく、そこそこの財産はあるはず……勿論貴族様とは比べ物になりませんが。
兄弟姉妹は上に三人のお兄様、下に一人の妹と五人の弟がおります。
えっ!?多すぎる?
そうかしら?他の家の比べてもそれほど多いとは思わないけれど……。
両親の素質を受け継いだのか、全員大きな病気らしい病気はめったにせず、素晴らしいことだと思います。
……だけどね、ちょっと容姿には不満があるかもしれません……。
でもそれも仕方ないのかもしれません。
健康体を受け継いだのが両親からなら、容姿を受け付いたのもまた両親からなのです……。
私は昔から、自分の不器量さは自覚していました。
なので近所の器量よしのお姉さんの真似をする事はすっぱりとあきらめ、男の子に交じって遊ぶことが多かったのです。
特にクリケットでは同年代で名人と言われていたのです、エヘン。
だってお人形遊びや、お花を摘んで飾りを作ったりするんはつまらないし、自分に合った遊びとは思えなかったんですもの。
勉強も方もイマイチ身が入らず、家庭教師の目を盗んではコッソリと抜け出し、あとでコッテリと怒られてばかり。
とは言え、本を読むのが嫌いってわけでは無かったのです。
特に好きなのは冒険小説!
ウォルポールという作家の描いた「アラゴン城の冒険」やラドクリフの「ガロンヌ城の怪奇」、ポーの「ロデリック家の狂気」などなど。
どうも世間様がいうところの有益な内容が書かれた本は嫌いで、為になる事が何も書かれていない、頭を空っぽにして読む娯楽小説は大好きなのでした。
でもそんな私も17歳にもなればいろいろと変わってくるのです。
やっぱり女の子足るもの舞踏会とかにはあこがれを持ってしまうじゃない?
外で泥んこになるまで遊ぶことも随分と前に卒業しました。
もう外出の度に服を汚して、お母様に怒られる事もありません。
それに久しぶりにあった親戚とかが「あら、メアリー。随分と綺麗になったじゃない」などと言ってくれることも多くなったのです。
勿論、お世辞が多分に含まれている事は承知していますよ?
でもでもそんな事を言われて喜ばない女の子はいないと思うのですよ。
そんな折でした、私の中の物語が動いたのは。
私の父の教区はノーサンプトン州ブラックレー村にあるのだけれど、地元の名士であるエンジェル氏が体調を崩し、風光明媚で知られるチェルトナム地方へ病気療養しに行くことになったのです。
そ、そしてなんということでしょう!エンジェル夫人が私も一緒にどう?と誘ってくれたのですよ。
エンジェル夫人は信心深く、そのせいもあるのか牧師の子である私も小さいころからとてもとても目にかけてくれました。
その話を聞いた私は間髪をいれず了承すると、急いでお父様とお母様を「説得」したのでした。