零Ⅵ:一人でいた私がなんかヤクザさんに絡まれたんだけど……
こんにちは、ヤバいです。しばらく書いていなかった所為で文章能力及びその他が(多分)著しく低下しております。
なので更新を増やす予定です。そろそろ本題に入るのでね……。
ということで、お願い致します。
「これからどこに行くのですか?」
私は訊いてみた。何しろあれから結構な距離を歩いたはずなのに、未だにご主人様は歩き続けるのである。
ご主人様はそんな私の問いに反応して私をじっと見る。
私の顔に何か付いているのだろうか。
そう不審がるとご主人様はおっしゃった。
「もう疲れたのか、しょうがない。あのベンチで少し休憩するか?」
そんな、疲れてない、です……。
言葉を発しようとしたが、出たのは疲れ果てた私の声。
確かに私は疲れているようだ。
「はい……お願いします」
仕方なく私はベンチに座る。
すると彼は、私に一言「ここで待て」と言ったまま、どこかへ行ってしまった。
なら、待つしかあるまい。
「だけど……」
そう。
暇だ。
暇でしかない。
ご主人様の命令は絶対。ゆえにそれも耐えなければいけないのだが……。
これほど暇であることは、初めてかもしれない。
「よお、そこのお嬢ちゃん」
そんな時に声をかけてきたその男に、私は心を躍らせてしまった。
音に聞くヤクザ、という奴だろうか。
ガラの悪そうな大柄な男が二人、私の方へやってくる。
いい暇つぶしになりそう。
ついそう思ってしまう。
「ごめんなさい。今とても急いでないので、私の話相手をしていただけませんか?」
意味わからない文法でもいい。この機会にヤクザの会話、いや庶民の会話でもいい。それを知りたいのだ。
そのためには興味をひかねば。
「ほぉ? ちょっと何言ってるか分かんねえが、遊ぶってことならいいぜ」
「いいですね? 何して遊びます?? おままごとかしら、それとも……」
「は? 何言ってんだ??」
……?
はっきり言って私の方が「は?」と言いたい。
逆にそれ以外何をしようと言うのだろう?
ここにはなんのものもない。あるのはベンチと草。
だったら草で人形やら家具やら作ることしか遊びでは出来なくないか? そう思ったのである。
「そもそも遊ぶの定義は何ですか? まさか貴方は草を見るとかベンチに座るという行為をしろと貴方は言うの?」
「おい……お前何言ってるんだ?」
それはこっちの台詞だ。
そっちこそ何を言っているのですか?
そう言おうとしたが、やめておく。
そうだ、私が無知なのかもしれない。
「えっと、私と何をしようとしているのですか?」
「は?」
……アレ?
何か私、また変なことを言ってしまった気がする。
えっと……。
私が口籠もると共にヤクザは驚いた顔から、段々私を面白がるような目つきに変わっていく。
そして戸惑う私に彼らはこう言った。
「なら……ちょっとこっち来いよ」
どこかで見たことのあるような――不敵な笑み。
体が勝手に震えるほどそれは恐ろしいものだった。
何だろう、この眼。
「……嫌です!」
その疑問とは裏腹に、反射的に言葉が出てしまう。
彼のその眼は、駄目だ。いけない。この人に近寄ってはならない。
本能がそう呟き始めたのだ。
これがデジャヴ、というのだろうか。
私は不思議な感覚に包まれていた。
「……はぁ? おい、お望み通り暇つぶし相手になってやるって言ってるんだぞ? お前が言い出したことだ。今更やめるって言い出したって、もうこっちはその気だっつぅの」
後退り、してしまう。
「嫌です!」
何度言ってもこの男達は、というかこのヤクザは聞かなかった。
まだ私には彼らの目的は分からない。だが私が彼らに恐れていることだけは分かる。
そして、その恐れはどんどん大きくなって……。
「いやああああああ!」
いつの間にか私はうずくまってしまいた。
嫌だ、嫌だ嫌だイヤだイヤダイヤダイヤダ!!
「大体お前、奴隷だよな。見た感じどっかから脱走してきた奴隷だろうが、そうなら別に何をしたって、誰も咎めないよなぁ??」
笑いながら私の服の襟元を掴んだ彼は、ここで少し不思議そうな顔をした。
そして次の瞬間――彼が次の言葉を発するが早いか、彼は蹴り飛ばされていた。
蹴り飛ばした主はすぐに分かった。見窄らしい服装に蒼いマント――ご主人様だ。
私の心の中で、枷が外れた音がした。
「は? 何だてめえ!」
もう一人のヤクザがご主人様に襲いかかるが、それもすぐに倒される。
恐らくご主人様の魔法だろう。
「……誰だ? お前は」
私を掴みかかっていたヤクザは起き上がりながら、ご主人様に問いかける。
「そいつの持ち主、だな」
「……」
落ち着いた声――。
だがその声には、何か怒りのようなものが含まれていることを私は感じる。
それをヤクザも感じたのか、彼は思わず絶句した。
そして戸惑いながら、彼は突然私に襲いかかり……
「動くな、さもなければこいつの命はないぞ」
――!
私は首元にナイフを当てられ、後ろに仰け反ってしまう。
思わず私はご主人様を見た。
ご主人様はまだ冷静で、冷たく彼を睨む。
その刹那。
ご主人様は一瞬にして私の首元に当てられていたナイフを奪い、彼と私は無理矢理引き剥がして彼に刃を向けた。
彼も、いや私も唖然としていた。あれだけの距離から私を守ったのだ。
そして唖然した彼にご主人様は言葉を放つ。
「俺の所有物に手を出すな」
その小さく迫力のある言葉は、辺りを震え上がらせた。
原因が何だったのか。私は知らない。