厨二病の形は一つじゃない。
【私の真一用ノート】
第1章「真一との異世界旅行」より抜粋
真一のノートに魔法の世界に行くと書いてあった!!!!
ノートはいっしゅんしか見せてくれなかったけど、そこには私も一緒に行ってその世界で私と真一は結婚するって書いてあったの!!!やったね!!!
照れて隠したのかな?可愛いなぁ!
真一は魔法の世界について1ページ分しか書いてなかったみたいだけど、私に話してくれたことをこのノートにメモしようと思います!
という訳でここから下は真一の言ってたことのメモです!
・この世界に来る前に真っ白な世界に一回入れられるみたい!
注意!
そこから早めに逃げ出さないと、いつか消めつするって言ってたから真一にテレポートしてもらうこと!
その時に日本に戻ると魔法は使えなくなって、地球にはいん石がふってきてぜつめつするって言ってたから地球に戻るのは絶対にダメ!
・魔法の世界には名前の通り魔法があって、私は回復魔法が使えて真一が疲れた時に回復するらしい。
・白い世界へ行く前に私は######すること!!!
* * *
「これってどういう状況だってばよ?」
俺の声が白い空間に響き渡る。
その声に気付いた奈緒は恐る恐ると言った感じで体育座りっぽい座り方から、顔を上げ話しかけてきた。
「真一……
あんたよくこんな状況で平然としていられるわね」
「いやいやっ、心外な!
私は決して平然となんてしておりませんよ。
こんな状況になったらまずは冷静に分析しないと、死亡フラグがたってお亡くなりになるのが定番だからね」
そう言いながらも俺の足は生まれたての子鹿状態でとてもじゃないが、あと三十分はここから一歩も動けそうにもない。
「そういうキャラが一番最初に死ぬのよ……はぁ」
何か言われた気がするが、俺は気にしない。だって俺もそう思うもん。
それにそんなことを考えるよりもっと大事なことがあるからな。
まずは、そもそもここに来るのに、急に宙を舞ったと思ったら次の瞬間にはここにいて?それで俺は立ってて奈緒は体育座り?色々とツッコミどころ満載だなぁ。まだまだ言いたいことはあるが……
「なぁ、奈緒?お前いつから体育座りしてる?」
「えっ、私は空飛んだ時からずっと丸くなってて……それで、気づいたらここに……
あれ、私いつ真っ直ぐに座ったんだろ」
やっぱりかぁ、奈緒にも記憶が無いとするとまあ、やっぱりなんかこう、凄い力が働いたんだろうな。
「なおー、これからどーする?」
「こっ、これからって言われても真一はどうするつもりなの?ここには何もなさそうよ?」
「あー、それなんだけどねぇ……
なんか魔法が使えるよって脳みそに直接話しかける何者かがいるんよ。それによれば俺は瞬間移動が使えるらし……
はい、あの、睨まれても困るんですけど、本当に聞こえてきます」
話し始めてすぐに意味ありげな顔で奈緒が睨んでくるが、俺には本当に聞こえているのでどうしようもない。マジでその目怖いんでやめてください。
「で?どーする?
さっきまでいた所までよゆーで戻れるぜ!って声が言ってくるけど?戻る?」
そう言うと、奈緒は物凄い形相でその場から立ち上がり、泣きそうな顔で俺に抱き着いてきた。
「ふぇ!?
ちょっ、奈緒!?何してんの!?」
「ダメっ!それだけは絶対にダメ!多分私達二人ともそうすると死んじゃう!」
奈緒の突然のぶっ飛んだ発言を聞いて、驚いて固まっていると、それを無視して奈緒は話し始めた。
「私達が今戻ると、地球に隕石が落ちてきて二人とも死んじゃうから!それに二人だけじゃなくて人類全滅しちゃうから!
真一のノートには書いてなかったけど、私のノートにはちゃんとメモしてあったから!」
「ちょっちょま……
へ?ノート?人類滅亡?一体全体何の話をしていらっしゃるのかな……奈緒さん?」
「昔書いてたお遊びのノート!
真一とくだらない設定を考えて、異世界がどうだとか妖怪だとか!そう言う厨二病みたいなことを真剣に書いてたノートの話!」
異世界に妖怪と、な……
あ、あれ、なんか身に覚えがあると共に……頭が凄く痛く──
『お前は忘れるべきだ。
そんな恥ずかしい過去など。
こんな状況でおかしくなった女など放って、さっさと元の世界に帰るべきだ』
プチン、俺の中で何かが切れた気がした。
あ、こいつは俺を怒らせたわ……
俺、奈緒の悪口だけは昔から許せねぇんだわ……
「し、しんい、ち……?」
急に形相を変えた俺を見て、怯えながらも奈緒は俺の名前を呼んだ。
だが遅い。俺はもうとっくにキレてしまったらしい。一度深く息を吸い込んで、限界まで空気を吐き出すと次のステップに移る。
俺の内側にいるであろうソイツに向かって、俺は無意識に魔力をぶつけた。悶え苦しみ、消えたような感覚はあるがまだしぶとく生き残っていそうだったが今はしばらく無害そうなので放置する。
だがまぁ、そんなことはどうでもいい。
俺には魔力があると自覚があった。無限のように感じる魔力が、俺の中にはあると。突然、それがわかった。
なんか厨二病っぽいなぁと少し考えるが、状況そのものが非現実的で、そんなこと気にする暇も全然なかった。
「っと、ごめん奈緒。ちょっとうるさい声を叩きのめしてきたのよ」
「う、うん?
真一が大丈夫そうならなんでもいいんだけど……今のこの状況ね、真一は覚えてなさそうだけど実は」
「いや、俺も思い出した。
これ、俺が小学校の時にノートに書いて楽しんでた物語と一緒だわ。
あんまり内容覚えてないけど俺が無敵だったのは覚えてるなぁ、懐かしい……じゃなくて!
確か今日本に戻ると魔法使えなくなるんだよなぁ、しかも隕石が地球に落ちてきて人類滅亡でしょ?救いようがねぇな」
「う、うん、真一……結構覚えてるね」
軽く引き気味で肯定してくる姿が心にグサリきた……まて、誤解や。
「言い訳させてくれ、この話だけ気に入ってるんだよ。
奈緒も出てくるしそれにけっこn……
ゲフンゲフン!
なんでもーないっ!
そう、気に入ってるから覚えてるだけ!!!他に他意はない!」
「ふーん、まあ、そこに関しては目を瞑ってあげましょう」
何か含みのある顔をされたがとりあえずは納得してくれたようなので、早期撤退が正しい判断だろう。
「ところで、真一はこの後どうするつもりなの?
異世界かなんかに行くってノートには書いてあったけど……」
「俺、ノートによると無敵らしいんだ。
ってな訳で異世界行きましょう。絶対に行こう!理由はそれだけじゃないが行きましょう!」
「う、うん……私も、行く」
蹲りながら頷いて、俺について来てくれると言ってくれた。
奈緒の顔は、見える範囲全てが紅く染まっているように見えたがその理由を知るのはまた後日──
「えーっと、じゃあもう行くか」
「うん、確か昔の記憶が正しければねぇ、長く居座ってるとこの空間自体が消滅するって言ってたから急がないとね」
「マジか、小学生ながら強烈な設定作りやがるぜ俺……
んじゃ、ほい」
そう言って奈緒の前に手を差し出すと、まん丸な目を見開いて、手と顔を三度見以上していた。
「ん?おーい、奈緒?ほら、手繋ぐぞ」
「な、ななな、なんで真一と手繋がないといけないわけ!?」
「いや、あの……ほら瞬間移動する訳だからお前と一緒に行かないと。
さっき一緒に行く言うてたろ?」
「あっ、あーそうか……ソウダネ、ハイ」
急にカタコトになってしまったが手をしっかり繋いでくれた。
手は細かに揺れているし、顔は真っ赤で凄い顔になってる奈緒を見て、あまり気にしてなかった俺も急に気にし始めて顔が赤くなるのを感じてきた。
やばい、早くしないと手汗出てきそう!
そう思ってからはとても早かった。
まるで身体が元々知っていたかのように魔力を練り、魔力が形を帯びていくのを感じていると、魔法がゆっくりと発動した。
すると──
「ちょ、え、まって、なんで服から先に魔法がかかる訳!?
え、これ、えっ!?
真一!目、瞑って!」
予想した瞬間移動って一瞬でシュバッて消えて、目的地に着く感じだったけど……まさか服から先に消えていくなんて思ってる訳ないだろ!?
「わっぷ、ちょまちょま、今目を瞑ると失敗するかもだし、お前はスタイルいいからそんなに気にすn
ぐはっ、痛てぇなばかっ!
お前!失敗したらどーすんだよ──」
次の瞬間俺と奈緒は真っ白な光に包まれた──
* * *
次に見えたのはちょっとした森らしき木の群衆と、裸のまま呆然と佇んでいる奈緒の顔だった。
あ、さっきも見たけど胸きれi
「バカ!スケベ!」
そう言って鈍い音のするパンチで俺のことを殴ると、近くにあった大きめの葉っぱを簡単に加工して身に着けていた。
「いや、でも、俺のせいじゃねぇし……」
とか言いながら殴られた顔面を触ってみると、うっすら腫れ始めていた。
あっ、あれ?
ねぇ、俺の身体無敵なんじゃないの……
異世界到着後、一瞬にして無敵説に不安要素が出てきてしまった真一であった。