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第四十七話 首都ユーミール

 エル会長が「あとは、任せたわよ!」と言ってから、城門から一直線に伸びている舗装された道路を目指し、ぶどう畑にある農道を歩いている。そして、会長の言葉から30分が経過しようとしていた。


 後ろを振り返れば、本隊は既に戦闘を開始していた。その光景は、様々な技が飛び交っているせいか、その周辺だけ様々な色で光り輝いていた。


「ロドリゴ先輩たち、大丈夫でしょうか?」


 それを見たリリーが心配してか、尋ねていた。


「大丈夫だわ! アミルでの戦いを見たでしょ? 私たちを倒せる敵なんてそうそういないはずよ!」


 俺はアミルでの戦闘を見ていたわけじゃないが、会長が言うならその通りなのだろう。俺は会長の言葉に頷いた。


「それより、見てちょうだい!」


 俺たちは会長の指さす方向を見ると、騎士1500人ほどが馬に跨っている。その騎士達は本隊がいる方角に向かっている。先頭には、ユーミール小国連合の紋章が入った、高貴な鎧を身に着けた人物が周りの騎士達に何やら話している。その様子はまるで、一国の王のようだ。


「あの先頭にいる人物って、指導者ルーサーじゃないですか?」


 俺は気になり、二人に尋ねていた。


 しかし、二人ともルーサーの顔を知らないようで、首を傾げている。


「あの人がルーサーかどうかは分からないわ。だから、はやく場内に進入しましょう!」


 会長は高級な鎧を身に纏った人物を見ながら言っていた。


 会長の言う通りだ。あの男がルーサーだと断定できない俺たちは、場内に潜り混む方がより確実にルーサーを討つことができる。それも、俺たちがロドリゴ先輩たちを信じているからこその行動だ。


 俺たちは会長の言葉に頷くと、舗装された道路に出た。


「いい? 城門の警護は薄いはずよ。強行突破で行くわよ!」


 俺たちは身体強化を使い、舗装された道路を歩いている人々をかき分け、城門を突破しようと試みる。もちろん、風魔素を使い城壁を突破することもできる。だが、その方法だとかえって目立ってしまう。


 いきなり宙に浮いている3人が、城壁を超えようとするのだから、街にいる人間が不審に思うのは当然だろう。


 なので、俺たちは通行を求めて並んでいる人々を、物凄い速さで追い抜いていく。並んでいた人々は何が起こっているか分からず、ただ驚きの声だけを上げていた。


 だが、城門で前を向いていた衛兵は物凄い速さで近づいてくる俺たちに気づいたようだ。


「止まれ! さもないと、刺し殺すぞ!」


 数十人の衛兵たちは、俺たちに槍を向けていた。


 俺たちはそんな衛兵の言葉に聞く耳を持つつもりはない。俺は黒炎(ダークフレイム)を少量の魔力で唱えた。


 すると、禍々しい黒い炎が回転しながら、衛兵たちだけでなく、城門そのものを焼き尽くしていた。


「イツキ! さすがにそれはやりすぎだわ!」


 リリーはその光景を見て、苦笑いしていた。会長も同意なのか、頷いている。


 アミルで覚醒しなければ、ちょうどいい具合になっていたはずだ。だが、あまりにも魔力が上がりすぎた今は、この程度の力でも城門を燃やし尽くしてしまうようだ。


 これは後で調整が必要だな。俺は心の中でそう思いながら、無に消えた城門を楽々突破した。


 だが、城門がなくなったことに気づいたのか、「何事だ!」とか「至急、城門に援軍を送れ!」とか色々な声が聞こえてくる。複数の足音も俺たちがいた城門に近づいているようだ。


「衛兵をいちいち相手している余裕はないわ! 急ぎ、ローブを脱ぎましょう!」


 会長の指示通り、裏通りに入ると俺たちはローブを脱ぎ捨てた。


「これで、作戦の第一段階は成功のようですね!」


 リリーはエル会長の方に尋ねていた。


「そうね! ここまで来たら、後はユニ先生を探すだけだわ!」


 ハァハァと息を切らしながら、そう言う二人は思いのほかセクシーだった。『こんな時に何を言っているのか』と自分でも言いたいが、汗が衣服に纏わりつき、汗が太ももを伝い、息を切らしている様子を見れば、少しは興奮するはずだ。


 だが、こんな時にそんなことを考えている場合ではない。それに、エル会長はロドリゴ先輩の彼女だ。見惚れるわけにはいかない。俺は任務に集中するため、裏通りの民家を眺める。


 どうやら、見渡す民家はレンガ造りだが、アムステリアとは違う構造をしているようだ。


 民家を眺めていると、段々と冷静になることができるな。この調子なら、冷静になれるだろう。


「イツキ? なんで、民家を眺めているの? なにか発見した?」


 そんな俺の様子を逆に気になったのか、リリーが尋ねていた。


「いや! 何でもないんだ! 珍しい民家だと思って」


 俺のその緊張感がない発言に、二人は肩をすくめていた。


 二人が呆れるのは当然だ。もし、リリーや会長が、任務中にそんなことをしていたら、俺だって肩をすくめるだろう。ここは、話を切り替えたほうがいいな。そう判断した俺は、ユニ先生を探す方法について尋ねることにした。


「とりあえず、ユニ先生をどうやって探しますか?」


 俺はできるだけ二人のことを見ないように尋ねると


「わからないわ。でも、おそらくユニ先生は城の周辺にいるはずよ」


 エル会長はそう言っていた。


「たしかに、この街を探すのは難しいですよね。そうユニ先生も思っているはずです!」

「ええ、そうね! 流石はリリーさん!」


 二人が言いたいことはおそらく『ユニ先生は俺たちが来ることを知っているので、城壁の外側でアクシデントが起こることを待っていたはずで、それを合図にユニ先生は、城周辺で騒ぎを起こすはずだ』ということだろう。


 そして、俺も二人の意見には同意だ。普段はのんびりしているユニ先生だが、非常時の頭の回転はとてつもない。必ず、俺たちの期待に応えてくれるはずだ。


 俺も会長とリリーの会話に頷く。


「全員の意見が一致したことだし、早速城周辺に向かいましょう!」


 会長のその言葉に俺とリリーは頷いた。


 だが、二人はまだ汗でセクシーな状態だ。俺は二人の姿をなるべく見ずに、城周辺まで向かうことにした。


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