第三十九話 イース最強の集団
エル アルジャンテ side
館の入り口に向かうとルルちゃんとA組の生徒は大通りからゆっくりと進軍する騎士達を見つめていた。私も視線を騎士たちに移すと、どうやら位の高そうな衣服を身に纏った騎士が数十人いるようだ。彼らの足取りはその他大勢の騎士たちのそれより勇ましく、どこか余裕があった。
「ルルちゃん! 大丈夫?」
「エルちゃん! 大丈夫です...... それより、見てください」
ルルちゃんは大通りを進軍する騎士達を指さす。
「ええ、わかっているわ。相手はラムース側の騎士だけど民間人には危害を加えないはずよ。それは、明確な戦争犯罪でしょうから」
「エル。これからどうするつもりなんだ?」
ロドリゴが私の判断を聞きたげな顔をしていた。正直にいえば作戦などありはしない。でも、正直にそれを言えばA組の士気は下がるだろう。それだけは避けなくてはならない。私は深呼吸をすると士気を下げない為に堂々と作戦を話すことにした。
「3年生と2年生は正面からくる敵を迎え撃ち、1年生は後方から援護詠唱をお願い! 相手は必ずこの入口から侵入してくるはずよ! 数が多くても狭いこの場所なら私たちのほうが有利だわ!」
「でも、壁をよじ登ってくる可能性もあるのでは? それに風使いなら上からくる可能性も」
A組の生徒の一人の指摘は的確だった。たしかにその通りだ。肝心な時に頭が回らないのでは意味がない。しっかりしなければ。
「たしかにそうね。じゃあ、それも1年生がカバーしてくれるかしら?」
私がそういうと1年生たちは「会長! わかりました!」と答えていた。
「おい! 話してる場合ではない! くるぞ! 全員詠唱開始!」
ロドリゴは詠唱を開始するとA組の皆も詠唱を開始する。それと同時に敵も詠唱を開始していた。その詠唱の音に思わず身震いした。
大丈夫。イツキ君がいなくても、この程度の敵には勝てるはずよ。落ち着きなさいエル アルジャンテ
私が心で自分を落ち着かせると同時に、進軍してくる騎士の群れに天界光を唱えていた。
「おお! みろよ、敵の騎士の大半が俺たちの技に倒れているぜ!」
イツキ君やリリーさんのような魔力はないから、規模は大きくないけど私たち65人が放った技は確実に敵の騎士達の戦力を削いでいた。でも、1000人という数は多かった。敵の騎士は盾を詠唱し、今にも魔法武器で斬りかかろうとしていた。
「敵が来るわ! 3年生と2年生はこれから近接戦に入る! 1年生は辺りを確認しながら後方の部隊をつぶしてちょうだい!」
私たちはそれぞれ役割通りに戦闘を始める。前方では私たちが敵を切り刻み。後方からは詠唱が聞こえてきて敵の騎士達を倒していく。これなら大丈夫! 敵の数も大分減ってきたし、勝てるわ。
そう確信したとき、後ろから悲鳴が聞こえてきた。私は敵を斬りながら、後ろを振り向くと1年生数人が敵の奇襲により倒されていた。その敵は位の高そうな衣服を身に纏っていた。この騎士達は一味違うはずだわ。放置していたら後方から壊滅してしまう。
ならばロドリゴを向かわせるしかないわね。
「ロドリゴ! 1年生の援護に行ってちょうだい! おそらく奇襲部隊は手練れだわ!」
「ああ! 任せてくれ!」
ドロリゴは後方の支援に向かった。そんなロドリゴは敵をバッタバッタと倒している。流石ロドリゴと言わざるを得ない。後方は大丈夫そうね。
「エル会長! 前衛部隊に負傷者が出ました! どうしましょうか!」
今度は前衛に負傷者が出たらしい。見ればさっきの高貴な騎士が1対1で2年生を倒していた。
残酷な言い方をすれば負傷者が出ても、何か起こらない限りこの戦闘は勝利するだろう。だが、こんなにも血生臭く負傷者も出る戦闘は初めてだ。辺りを見渡せば悲鳴や魔素がぶつかり合う音があちこちから聞こえてくる。
「これが戦争ということね......」
「会長!?」
「ごめん! 負傷者は地下に運んでください。ここは私がなんとかします」
私が言うと男子生徒は負傷者を地下まで運んでいた。
正直にいうと私も救護係になりたい。だけど、名門貴族生まれの騎士として、この国を守る騎士としてそれは許されない考えだ。私は立ち向かってくる騎士たちを斬撃で斬り、甘えた考えを捨てた。
◇
「勝ったわね......」
結果を言うと私たちは勝利した。だけど、A組の生徒の数人は重傷を負い病院に運ばれていた。他にも軽傷者多数いた。
「エルちゃん大丈夫? ぼっーとしているけど」
「大丈夫よ! それより、ルルちゃん! ここはもういいから休みなさい」
ルルちゃんは私の疲れ切った姿をみて察したのか、声をかけてくれていた。本当にこの子は天使だわ。後でもふもふ触ってやるんだから。
それはさておき、もはや私はこの街を守る責任者の立場にある。学院の会長しか経験のない私には重い任だ。これからどうすればいいのだろう。
「エル。そう気負うな。一人で考える必要はないだろ? A組みんなで考えればいい」
ロドリゴもルルちゃんと同様に察したのか声をかけてくれていた。ルルちゃんとは違い可愛くないけど、長年連れ添ったロドリゴだ。感謝してもしきれない。
「ええ、そうね...... 早速だけど、頼らせてもらってもいいかしら?」
「ああ。もちろんだ」
「私たちは今後どうすればいいのかしら?」
「それは難しい質問だな...... それは後でみんなで考えればいい。だが、リーシュ陛下にアミル奪還及びリリー姫を取り戻したことを伝えたほうがいいだろう」
「そうね...... 後で早馬を送らせるわ」
「ああ。そのほうがいいだろう」
「ねえ、ロドリゴ。あと、A組の皆に『宿で休みなさい』と伝えてちょうだい」
「エルはどうするんだ?」
「私はこの街の衛兵を集め、死亡者の埋葬と警備の確認をするわ」
「相変わらずだな。無理しすぎるなよ」
ロドリゴはそう言うと、地下へと向かっていた。
リーシュ陛下の判断があるまで、私がこの街を守らなければ。
私は気合を入れるため、ガッツポーズし衛兵のところへと向かった。




