第二十三話 悪魔との交信
「そんなの決まっている。降参するわけがない」
「そうか。それは残念だ」
俺の前方にいるニールはそう言う。天界光や他の大技が使えないこの状況では、天使の衣が破られないことを祈るのみだ。天使の衣さえ突破されなければ、俺が勝つ見込みはある。
俺は深呼吸をする。
「光よ、力を貸してくれ!! 天光!」
俺は光の棒を出現させると、それは秒速34万kmでゼドのほうに向かって行く。しかし、どこか歴戦の老兵を思い浮かばせる彼はそれを回避すると、俺に詰め寄り闇剣を振りかざしていた。
なんという速さだ。光の速さを持つ天光を避けて、その上に俺の目の前まで来ていたのだ。おそらく身体強化の類ではないだろう。だとしたら、俺が知らない技ということになる。
ニールと同等の強さだと思っていたがこの男はその数段上をいく強さだ。
「ハハハハ!! 相変わらずゼドはイツキ同様凄まじい強さだな。お前らのその才能が羨ましいぜ」
「俺は才能があるわけではない。この力はニドの神々によって与えられた力である」
ゼドはそういうと上を向き、どこか祈っているように見える。ゼドは俺と同様に邪悪な神々に会ったことがあるようだ。そして、ゼドは与えられた力だと言っている。ということは、俺の知らない知識がまだあるということだ。
「それにしても貴様のそのオーラ。見ただけで、それは神々より与えられたものだとわかる。貴様の魔力はいかほどだ」
「俺はお前らが信じる神々によって力を与えられたとは思えない。偶然、能力を得ただけだ。あと、俺の魔力は4万ほどだ」
それを聞いたラムースの生徒はあり得ないといいたいのだろうか、口をぽっかり開けている。俺だって初めて聞いたときはそう思ったさ。
「なるほどですな。人歴3000年の間に魔力が4万を超える人間は存在しなかった。超えていた人間は英雄アカギただ一人ですな。きっと貴方様はアカギとなんらかの関係あるのでしょう。そして、この方ならニドとの交信もできそうですな。くれぐれも殺さないでください」
いつの間に俺たちの話を聞いていたのだろうか。ザイードは俺をまるで観察対象の様に見つめていた。
「わかっている。そこで大人しく見ていろ」とゼドは不機嫌そうに言う。
「じゃあ、戦闘再開だな。ゼドと俺とレオで攻撃をしかける。負傷しているアリサは遠距離詠唱を頼む」
4人同時で仕掛けられたら天光!で倒せるのは一人が限界だ。
だとすれば
「光よ、力を貸してくれ!! 天盾! 光炎!」
「いくら魔力が高かろうが、私を忘れてもらっちゃ困るわねぇ ミラの神々よ、私に力を貸して!! 光光線! 光盾!」
俺は光光線!を天盾!で防ぐ。この技ならこの盾が壊されることはないだろう。しかし、魔力を集中させながら残り3人に対処するのはなかなかに困難だった。
光炎は広範囲技だが、威力自体は強いものではない。それは簡単に防がれていた。だとしたら、確実に一人けずるべきだ。
俺は天光!を詠唱し、レオに向かって解き放つ。アリサ同様に凄まじいスピードでそれを避けようとしたが、避けきれず脇腹に直撃していた。
「流石にすさまじい魔力だな。だが、そのためにこの作戦を練ったんだ」
ニールはそう言いながら、ゼドと共に俺の両脇から襲い掛かる。
当然避けれるわけもなく、天盾がその攻撃を防いでいた。
じりじりと光輝く天盾が削れていく。このまま受け続ければ確実に突破されるだろう。それを黙ってみているわけにはいかない。
「光よ、俺に力を貸してくれ! 天光!」
「あまいな!!」
ゼドはそういうと俺が放ったそれを、いとも簡単に切っていた。こいつの速度は化け物だ。
俺は為す術もなく、じりじりと追い詰められ、天盾は突破されていた。
「皆さん流石ですね。よくやってくれました。では、その男の手をこの石板の手形にあててください」
「ザイードさん。ついに私たちの目標の一つである神々との交信ができる」
「そうですよ、レオさん。おや? レオさんとアリサさんは攻撃をくらっているようですね。ここは私たちに任せて隅で回復詠唱でもしていてください」
「わかったわ。あとは任せたよぉ」
ゼドとニールは俺を持ち上げると、石板のほうに向かい、手形に俺の手を合わせていた。
「すまないが、イツキ。闇の魔素を纏って、手に集中してくれないか」
「断る」
「断ることはできない。断れば、我が貴様の大事な人を切り刻むだろう」
ゼドはそういうと早くしろと言わんばかりにこちらに目を向けている。
「イツキ!! 私たちのことはいいから、それだけはやっちゃだめよ!! もし、交信したらイースに再び戦火が広がるわ!」
「そうだ。私も姫様も覚悟をしてここまで来ている。それに私たちは誇りある騎士見習いだ。纏ってはいけない」
クソっ。リーシュ陛下が言っていた助っ人はどこにいるんだ。全く気配がないじゃないか。
それに、二人はそう言うが、俺には二人を殺すことはできない。それは俺の友達だからって理由だけではない。俺は好きでもあるんだ......
俺は覚悟を決めて闇の魔素を纏い、集中し手に全魔素を送り込む。ニール達はそれを見て歓喜している。
「だめだよ、イツキ!!」
「そうは言っても、俺はリリーやイリアを殺すことはできない......」
そうだ。もし天使や悪魔が攻めてきても俺が何とかして倒せばいいのだ。
俺がそう考えていると、俺の手は黒く、禍々しく染まっていた。
「つ、ついに。我々の神々が姿を現す!!!!」
ニールたちは禍々しく輝く俺の手を固唾をのんでみていた。
すると、天井に描かれた円から禍々しく、どこか神々しい闇の通り道とでもいえるそれは天井から地面へと繋がり、その円の中央は空洞のようで周だけが禍々しく染まっていた。
しばらくすると、天井の円から羽が生えた人影が見える。
「貴様ら、よくやった。その男を俺に渡せ。いや、殺すのだ」
突然の発言で皆驚いたのか、かたまっている。
「そ、そう言われましても。この男も人間なのです。ご容赦を」
「いや、ダメだ。その男は我々の脅威になる。以前そうだったようにな」
悪魔にそう言われたザイードは仕方あるまいといった表情で俺を見つめ
「すまないな。これもラムースのためなんだ。それに、神々に従わなくてはならない」
「やめなさい!! あんたたち!! 殺すなら私を殺せばいいわ! アムステリア帝国の継承権を持つこの私を!!」
「いや、殺すならば、この私がいいだろう!」
リリーとイリアは俺を庇うべく自分を犠牲にしてでもそう言ってくれている。
だが、それも意味をなさず、ザイードに命令されたゼドは俺のほうを向き闇剣を振りかざそうとしていた。
そうか、俺はここで死ぬのだ。異世界に来る漫画の主人公の様にここで死んだら転生できればいいな......
そう思ったそのとき
「久しぶりだな! アリサにゼド、レオにニール!!」
「先生!! どこにいたのですか!!」
ラムースの生徒は驚いた顔で見ていた。そこにいたのはA組の先生であるユニ先生だった。




