第二十二話 4人の生徒
そこに現れたのは青髪ツンツンヘアーの男、ニールだった。
「どうしてお前がここに?? ミラニド学院で学んでいるんじゃなかったのか」
「正規の騎士達がこの地を踏むということは、戦争行為に近い。だから、俺たち学生が遺跡の調査に協力しているってわけさ」
ニールがそういうと他の3人もフードを上げ、喋りだした。
「こいつが魔力大会でニールを倒したやつね! どんな外見をしてるかと思えば、普通の外見じゃない。つまんなーい」
「こいつが未知の技使いか。興味はあるが任務は任務だ。皆、早く片付けるぞ」
「そんなこと言われなくてもわかっている」
リリーと同じく金髪、碧眼の女が一人、真面目そうな顔で茶色い髪でしっかりセットしている男が一人、同じく茶色の髪だがおとなしそうな眼鏡をかけている女子が一人。アムステリア帝国魔力大会の時はこの3人はいなかったはずだ。
「あなた達、アムステリア帝国魔力大会のときはいなかったわよね。ラムースの生徒かしら」
「その通り。我々はラムースからやってきた。遺跡の調査が優先、よって我々はいなかった」
真面目そうな顔の男はまるで何年も修行した老兵のような男だ。微動だにせずそう言っていた。するとニールがはっとした表情で喋りかけてきた。
「こいつらは、順にアリサ、ゼド、レオだ。俺たち4人と先生がアムステリアに送られてきたはずだが、いつの間にか俺たちだけになっちまった」
「そうよ! 先生は今どこにいるのかしら!! 肝心な時にいないんだから」
その先生とこいつらは仲がいいのか、親しげにそれでいて少し寂しそうに悪口を言っている。
「まぁ、ともかくだ。抵抗するなら戦うしかねえ。悪いが倒させてもらうぞ」
ニールがそういうと、さっきまでの表情とは違い険しく真剣な表情になっている。相手はニールを入れて4人だ。あの老人も数に数えるなら5人だが、あの老人はおそらく大した魔力を保有していないだろう。老人は俺たちの戦闘に関心がないのか、石板を興味深そうな表情で見つめている。
とすれば、俺が2人を相手にするべきだ。リリーとイリアに二人の相手をしてくれなんて、口が裂けても言えるわけがない。そんなことを言えば、俺は男ではなくなってしまう。
「俺がニールともう一人の相手をする!! リリーとイリアは他を頼む!!」
「だが、そうすればイツキが危なくなる」
「そ、そうよ!! 私が二人相手にするわ!!」
「少しは恰好をつけさせてほしい。リリーとイリアに二人の相手をさせることはできない」
そういうとリリーとイリアは顔を赤くして俯いている。やってしまった。なんで俺はくさい台詞を堂々と恥ずかしがることもなく言ってしまったのだ...... 今すぐこの記憶を消し去りたい。
「わ、わかったわ!! 気を付けてね......」
俺は頷くとニールのほうを見る。たしかニールのメイン魔素は闇だったはずだ。それに、Aクラス級の魔力を保有しているとみてまず間違いないだろう。ニールの仲間であるアリサも同じく高い魔力と練度だろう。ならば、俺はリリーとイリアが他の生徒を倒してくれるのを待つのが一番確率が高い。つまり、俺の役割はタンクだ。
リリーとイリアを見ると既に戦闘は始まっている。いかに時間をかけるかが勝負の鍵だ。
「へぇー! イツキとか言ったよね。私とニールが相手だけど、果たして相手になるかなぁー。その男気だけは認めてあげるけど」
「帝国大会以来だな。あの時は未知の神々の技を喰らったが、ここで大技は出せないだろうしこっちが有利だぜ。2対1だが本気でいかせてもらうぜ」
「二人が相手だろうが、大技が出せないとしても今の俺にはそれは関係ない! さあ、かかってこい!」
もちろん、そんなわけがない。これは時間稼ぎのためのただのはったりだ。俺の言葉を聞いて少し苛ついたのか、目を細め俺を睨みつけている。少し言い過ぎたようだ。すぐにでも戦闘が始まるだろう。
俺は深呼吸をし、光の魔素を集中させる。すると周囲に大量の光魔素が集まりだし、それはオーラとして輝き始める。天使の技、知識をぼんやりと覚えている俺は強者の衣ではなく、天使の衣を発動する。
俺の現時点での魔力は4万近い値だ。二人の魔力がどれほどかは知らないが、リリー級の魔力、2万ほどではないのならどんな攻撃でも防げるだろう。その間にリリーとイリアがそれぞれの敵を倒してくれれば俺たちの勝ちだ。
「へぇー! やっぱ君面白い技をつかえるんだね!! 遺跡調査をしている私たちより神々の技を使えるなんて、君は神々に選ばれてるなぁー。いいなぁー。ずるいなぁー」
「神に選ばれたわけじゃない。俺は1回天使に殺されそうになっている」
「そっかぁ。でも、教えの通り神々は存在しているんだね。それに君はその神々に会ったことがあるってそれは素晴らしいことなんだよぉ?」
なぜ俺が天使に呼び寄せられたかはわからない。そもそも、何の意図があって俺を召喚し呪ったのかもわからないが、俺を殺そうとした天使が素晴らしい神々なんてことは絶対にあるはずがない。
「アリサ、無駄話はそこまでにしとけ。 ニドの神々よ、俺に力を与えたまえ 闇刀!! 身体強化、付与! 暗黒力」
「わかってるって! ミラの神々よ、私に力を貸して!! 光剣!! 身体強化、付与! 光明力」
どうやら、アムステリア帝国魔力大会の時はあれでもまだ手加減をしていたということらしい。付与の技は独自の魔法武器の能力を向上させる天使と悪魔が持つスキルだ。いくら天使の知恵を得ていようが、俺はまだ魔法武器をうまく扱えていない。ならば
「光よ、力を貸してくれ!! 天光!」
すると目の前に光の直線的な棒が出現する。俺はそれをアリサに向かって投げつける。しかし、直前で避けたアリサは右肩を負傷するだけであった。
「クッ......身体強化したのに避けられないなんて、なんて素晴らしい技なの。その技のせいで右肩が負傷して剣をうまく振るえないじゃない!!」
「天光があるかぎり、俺たちは迂闊に前に進めないってわけか。イツキ、お前いつの間にそんな化け物になってしまったんだ。じゃあ、作戦変更だな」
ニールはアリサのほうをみてウインクをしている。なにか作戦があるのだろう。ここで、迂闊に技を出すわけにはいかない。俺は慎重に彼らを見つめる。
「質問していいか、イツキ。 おまえはどうやってその力を得たんだ。その力は誰も知らない未知の技だ」
「それは俺にもわからない。だが、あの戦いの後、天使の知恵や技が俺の頭の中に微かに残っているんだ。何のために天使が俺とコンタクトを取ったかわからないが、俺はそれを使っているだけだ」
「なるほどな。おっと......話してる間にイツキのお仲間はやられたようだぜ」
そんな馬鹿な。リリーもイリアも屈指の魔力を誇るはずだ。それが、こんなにも簡単にやられるわけがない。俺はリリーとイリアを見ると、そこには傷だらけでうずくまっている二人が見えた。
「リリー、イリア!! 大丈夫か?」
「深い傷は受けていない。姫様もおそらく大丈夫でしょう」
「ええ、私も大丈夫だよ。ごめんね、イツキ倒せなかった......」
二人が立ち上がろうとするのを俺は止める。
「確かにこの二人の魔力は一流だった。が、我らが技も覚えていないやつに負けるはずがない」
真面目そうなゼドがそう言っていた。だが、俺はAクラスの上位であるリリー達がこうもあっさりとやられるとは思わなかった。二人はかなり強い。少なくとも帝国近衛騎士レベルはあるだろう。そんな二人が古代の技を覚えているか、覚えていないかで負けたのだ。この4人は明らかに強い。どうするべきか。
「さて、1対4になったが、どうする?」
「そんなの決まっている。降参するわけがない」
何が何でもこの4人を倒すしか他に手はない。俺はそう言うしかなかった。




