第十六話 アムステリア帝国魔力大会3
アムステリア帝国10騎士 ユリウスside
私は今リーシュ アムステリア陛下の護衛の任務で首都アムステリア内の大競技場に来ている。というのは、陛下がアムステリア学院に在籍している姫様を見るためにここにきているからである。
辺りを見渡せば大勢の観衆が白熱した試合を楽しんでいる。時には野次を飛ばしたり、物を投げ込む輩もいるようだ。私は陛下の護衛が任務であるから特にいうべきではないが、このことは後で議題にあげられるべきであろう。
「して、リリーの試合はいつ頃になる」
「次に始まる試合には出場なされないようです。おそらくはトーナメントの終盤辺りかと」
「ふむ、そうか。次に戦う相手にミラニド学院というのがあったな。アムステリア皇帝の威信は失墜しておる。野心的な地方貴族たちが、新たな皇帝になろうと企んでいるな。愚かなものよ、ラムースの邪教を利用し皇帝になったとしても、邪教の勢いは止まらず革命がおこるだろうに」
「それについては、既に帝国10騎士の一人を任務にあたらせています。さらに、アムステリアの他の国々にミラニド教の情報を得るために帝国10騎士を派遣しています」
「流石はユリウス。行動がはやいな。なにかあったらしらせよ」
「は!」
ただ単に布教するのがラムースの目的だろうか。私にはそうは思えない。ラムースとは前に戦争状態であったし必ず何かあるはずだ。もしかしたら、この大会中に行動を起こすかもしれない。既に競技場内に騎士を配置してはいるが、もう一度配置の確認をしておこう。
「続いての試合は!! 名門アムステリア学院 vs 謎の新設校、ミラニド学院です!! 準備はいいですね! では、スタート!!」
考えているうちに試合が始まっていたようだ。アムステリアの生徒はなかなか面白い戦略をする。だが、あの青髪の青年の技はいったいなんだろうか。アムステリアでは見たこともない技をつかっている。闇の書物でもあのような技はどこにもない。ということは、アムステリアの人間ではないだろう。
「ユリウス、あの青髪の青年の技を知っておるか?」
「私にもわかりません」
「ふむ。あの青髪の青年はやりおる。これは良からぬ展開であるな」
陛下の仰る通り、アムステリア学院のほうが劣勢であった。もう一方のグループはアムステリア学院が優勢であるが、青髪の青年が頭一つ抜けている。あの青髪の男はいったい――
ズドドドオオオオオオオオオオオオオン
一瞬の出来事で何が起こったか判断するのに時間がかかった。空が光ったと思えば空から光の光線が青髪の青年に直撃していた。青髪の青年は立ち上がることなく、ジャッジが下る。
さらに続けて、青年が詠唱する。
「神よ、我に力を与えたまえ 光矢」
このままでは青年が死んでしまう。いや、これは違う!!
上を見ると、大競技場の上に無数の光矢が出現していた。このままでは防御することができない一般市民は皆殺しだろう。そう思っていると
「光よ、我に力をあたえたまえ 光盾」
陛下が詠唱すると、競技場には巨大な光の盾が出現していた。私は攻撃詠唱が得意であるが、さすが陛下である。私よりも魔力も、練度も高い。
「あの青年の相手は私がいたします。その隙に陛下はリリー姫と共にお逃げください」
「よかろう。まかせたぞユリウス」
私はそういうと、競技場中央にいる青年のもとに向かう。
「もうやめよ。このままでは君は死刑に処されるぞ。即刻、降参せよ」
「神よ、我に力を 天界光」
空を見ると、凄まじい数の光魔素が上空を明るく照らしている。どうやら、聞く耳を持たないようだ。
それにしても、さっきの青髪といいこの青年といい凄まじい新技を出してくる。
「2度は言わぬぞ。さあ、降参せ――」
先ほどの光がさらに輝度を上げていた。上をみあげると、照らしていた光魔素は一点に集合し凄まじい速度でこちらに向かってくる。凄まじい魔力だ。まるで人間業ではない。このような技を喰らえば私は死ぬだろう。だが、私も何年も修行しここまできたのだ。この程度の未完成な技など、かわしてみせよう。
「火よ、我に力を与えたまえ! |炎龍剣!! 身体強化!」
身体強化を使い速度を上げ着地点からすぐさま逃げる。着地点を見るとそこにはぽっかりと穴が開いていた。この青年は一体。虹彩が黄色に輝き、髪の色も金色に変わっているし、言葉も発することもできない。
おそらく、何らかの方法で呪われたのであろう。それ以外考えられないだろう。
私は競技場の人々が避難したことを確認する。私も本気を出させてもらおう。
「炎龍剣炎龍破!! 風よ、我に力を与えたまえ 風矢!」
私は渾身の一撃である炎龍破と無数の風矢!を繰り出すが、帝国10騎士でも防げるかどうかわからないこの技を、この青年はいとも簡単に何層にも重なった光盾で防いでいた。馬鹿な。この技を盾で防ぐなど、不可能なはずだ。このようなこと未だかつてあったことがない。
空が再び黄色に染め上げられ、今度は3つの点が出現した。これは非常にまずい。避けることも防ぐこともできまい。だが、この青年には弱点がある。未熟であるがゆえにワンパターンであり、魔力をコントロールできないところをみると、他の魔素は使えないかつ身体強化も使えないだろう。
そう考えた私は意識を集中させ青年の後ろに回り込む。間違いない、青年は身体強化はおろか光魔素以外の技はつかえないようだ。
ならば、抜刀!炎龍剣!!
私は青年の後ろに炎の斬撃を喰らわせる。
「俺はいまどこに..... 」
どうやら、青年は意識を取り戻したようだ。私は少年に近づき息があることを確認する。
意識が戻ったら詳しい話を聞かねばならないな。
私は青年と青髪の青年の未知の技と魔力に圧倒されのか、突然疲労がグッときた。私もまだまだ未熟だな。私はそう思うと青年を回復するため、競技場をでた。




