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第十四話 アムステリア帝国魔力大会1

 サミーがいなくなってから1週間がたち、俺たちはアムステリア帝国首都アムステリアの大競技場に来ている。そう、今日はアムステリア帝国魔法大会だ。各校代表の10名同士で戦う。先に全滅させたほうの勝ちだ。大競技場は学院の演習場より大きく、競技場所がいくつかに分かれている。周りを見渡せば大会をみようとたくさんの人たちで溢れていた。俺たちは今競技場中央で行われているトーナメントの組み合わせ抽選会を見ていた。


 競技の職員が順に校名が書かれた紙を取り出し、巨大なトーナメント表に書き読み上げていく。


「シードのアムステリア vs グランデ公立学校」

「シードのアムステリア学院 vs ミラニド教所属 ミラニド学院」


 すると、リリーが


「ミラニド教って確かラムースで信仰されている宗教だったわね、どうしてアムステリアに.......」

「姫様、それはおそらく前に話した手引きしている国が我が国の貴族を洗脳し、布教するため学院を作ったのでしょう。もしくは、買収されたか」

「ということは!! 怪しいのはガリア皇国ね」

「ええ、私もそう思います」


 そういえば、この大陸には7つの国があったな。アムステリア帝国、ガリア皇国、ユーミール小国連合、マルーク王国..... あとはなんだっただろうか。忘れてしまった。


「なんでガリア皇国なんだ?」

「それはね、ガリア皇国って名前でしょ? この国では大昔から神話を信じていて天使と悪魔に選ばれた民たちという思想がはやってね。だから、選ばれた民であるガリアの民はミラニド教の教えと一致してるの」


 そういえば、アムステリアに来てから宗教というものを聞いたことがない。神話があるってことは古代には神を信じていたはずだ。なぜアムステリアの人たちは神を信じなくなったんだろうか。


「ミラニド教ってなんだ?」

「ミラニド教は2000年前に流行ったとされる宗教だ。要は天使と悪魔が神であり私たちを導いてくれるという教えだ。それは今もラムースで信じられている」


 なるほど。ミラニド教もガリアの民も形は違えど天使と悪魔が神であると信じているようだ。仮に天使と悪魔が神だという神話が本当だとして、選ばれた民が自分たちだけだという傲慢な考えのガリアの人々とは話が合わなそうだ。


 ミラニド学院をリリーとイリアが知らなかったってことは最近できた学校なんだろう。勝手に邪教であるミラニド教を布教する学校を建てることができるとは、地方には皇帝を無視してもいいほどの力があるらしい。いや、まてよ。この前急速にアムステリア帝国の力が落ちているとリリーが言っていた。

 それが、こんな形でもでてくるんだな。これは何か起こる予感がする。と考えていると


「はいはーい。お話はおわりよ。もうすぐ抽選会も終わることだし、イツキくんは準備してらっしゃい」


 いったい誰だろうか。見たこともない女の人だ。赤い髪に赤い目、美人だけど怒ると怖そうなお姉さんのようだ。


「ユニ先生。いつの間ここにいたのですか」

「これは姫様。ちょっと寝坊しちゃったけど、今さっきついたのよ!」


 これがA組の先生か。確か名前はユニ プラーミアだったか。なんだか、先生というよりはどこかの酒場にいる露出が高いウエイトレスのような人だ。それになんで俺の名前を知っているのだろう。俺は予想より劣等生として名が挙がっているのかもしれない。だから俺の名前も知っているのかも。


 それにしてもリリーとユニ先生はあまり仲が良くなさそうだ。というよりも、リリーが嫌ってるといったほうがいいだろうか。リリーは「そうですか」というとそっぽを向いていた。


「試合もあるし俺はもう行く」

「イツキがんばってね!! 応援してるわ!」

「私も応援している 敵をたおしてこい」

「ついでに私も応援しているわ!!」


 投げキッスをしながら俺に向かってユニ先生はそう言った。


 どうやらユニ先生は変わり者らしい。それにしても周りの男子の視線がいたい。まるで俺が暗殺のターゲットのように鋭い視線を送ってくる。どうやらここは早く試合の準備に向かったほうがよさそうだ。




 俺は試合の準備をすると深呼吸をし演習場中央へと向かう。確か最初の試合はグランデ公立学校だったか。どこにでもある騎士を養成するための学校のようだ。だが、相手は選りすぐりの10名で来るだろう。

 油断は決してできないし、とても強い相手だろう。


「では!! 次に始まるのは名門アムステリア学院 vs グランデ公立学校の試合です! 両者、用意はいいですね? それではスタート!!!」


 辺りを見渡すと、学院の生徒だけでなくほかの学校の生徒や、一般市民のすがたも見えた。とんでもない人の数だ。中央に少し豪華な席がある。あれは貴族用だろうか。その中に騎士の恰好をした初老の男性が目についた。その男は剣を携え、背筋が伸びていて微動だにせず試合を見ている。おそらく上位の騎士だろう。修羅場を何回も潜り抜けた歴戦の騎士のような風格だ。


 それはそうと試合に集中せねば。みんなはもうすでに戦っていた。


 一人のグランデ公立学校の生徒がこっちにやってくる。


「なにぼぉっーとしてるんだよ。名門といえ、1位の俺ならD組の生徒なら勝てる確率はある

 さあ、戦え」


 そういうと、男子生徒は水槍(ウォーターバブル )を2本出していた。こいつは舐めているんだろうか。

 俺に向かってそれを投げる。俺はすぐさま闇の魔素を発現し、それをばらばらに分解する。


「んなばかな!! こんなの勝てるわけがないだろ!! 俺は降参する!! 頼む技を出さないでくれ」


 まさか、この生徒は本気で戦っていたのか。どうやら俺は自分が思うより強くなっていたらしい。

 いや、周りが強すぎるだけだろう。俺は相手の降参に応じ味方の援護に行こうとすると、グランデ公立学校の生徒は皆やられていた。


「今年の俺たちは運がなかった。シード校と当たるとは」と言い残し競技場を去っていった。




 次の試合は不気味なミラニド学院だ。少しでも休んだほうがいいだろう。

 そう判断した俺はリリー達が待つ観客席に戻った。



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