第七十九話 フトッチョの企み
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!
◇◇フトッチョ・ハゲラン邸宅◇◇
「お前らは本当に役に立たないな!!」
フトッチョが机をダンダンッと叩き、10円ハゲのついたボサボサ金髪がさらに乱れていた。
息の荒いフトッチョの前に元締め代理と荒くれ巨漢三人が縮こまっていた。
「娼館の収入が激減している!!」
クレアの経営する「魔性の館」を潰そうとしたが、失敗。
「最強暗殺者は何やっていたのだ?!高い金を払っていただろう!!」
「申し上げにくいですが、最強暗殺者は裏切りました。」
「何故、裏切った?!あれでも実力者だったんだぞ!?」
「さぁ・・・。それはなんとも。」
元締め代理は本当に理由がわからないと言った表情であった。
「チッ、我輩たちの作戦に支障が出る!!呼び戻せ!!」
「・・・え?裏切った者は信用できかねますが・・・?」
「裏切れぬように金積め!!あいつはカインズと同レベルの実力者だ!!」
フトッチョは最強暗殺者を高く買っているようだ。
最強暗殺者はカインズやセバスチャンと戦闘経験があり、生還している実力者という触れ込み。だが、事実としては命乞いして、生き延びているのをフトッチョは知らないのであった。
その命乞いを目撃した荒くれ巨漢三人は余計なことを言っては火に油を注ぐのが目に見えているので黙っていた。
「リリスが欲しい!!」
孤児院の経営するリリスを妻に迎え入れようとしたが、失敗。
「リリスはフォルトゥナ教のシスター。我輩の作戦に組み込むのに相応しい。何度も打診しているのに断られる。何故だ?我輩は騎士伯爵貴族だ。貴族と聞けば尻尾を振るであろうに。」
フトッチョが思い通りに行かず、バンバンと机を叩く。
「キヒヒ、落ち着いてはどうですかね?」
その場に歴史学者の頬のこけたネクラがいた。
「落ち着いてなどいられるか!!お前も知っているはずだ。カインズの娘のリーゼが戦争のドサクサに紛れ、蜥蜴族の住む鉱床の独占契約が動いてる!!」
フトッチョの声高にネクラがやや怯む。
「リーゼたちに亡国ルクテシア王国の調査を命じたのはギルドマスターである我輩だろう!!我輩の手柄なのに!!」
鉱床を我が物にしたいがために色々画策するフトッチョ。以前にリーゼの姉であるアンジェーナがリーゼのために縁談の募集をしてると聞きつけ、申し入れた。だが、結果は予想通りにダメだった。
「鉱床を手に入れさえすれば、我輩たちの作戦など弄せずに騎士伯爵貴族から公爵貴族以上に転身・・・いや、王族にさえ平伏せる立場に転身出来るかもしれんというのにカインズが妬ましい!!」
「キヒヒ。魔導兵器によるクーデター作戦はまだ時期尚早。戦争で没落した貴族を中心に協力者を集めていますが、やはり金ですねぇ。」
フトッチョがダンダンッと机を叩く。
「まだ独占契約に至ってない・・・。妨害してやる!!」
フトッチョが縮こまっている荒くれ巨漢三人に目を向く。
「蜥蜴族を皆殺しにしてこい!!」
「はいぃぃぃぃー!!」
血気走るフトッチョの命令に荒くれ巨漢三人が動く。
「それで俺は・・・。」
「最強暗殺者を呼び戻せ!」
「はい・・・。」
元締め代理は溜め息つきながら、最強暗殺者の元へ赴いた。
◇◇◇◇◇
「はぁ・・・・。」
裏の業界では有名な最強暗殺者が黄昏ながら、屋根裏に潜みながら寝転んでいた。
「(そろそろ足を洗おう。)」
最強暗殺者の脳裏には初めて対面したエンカとクレアの姿があった。
「(エンカという少女はなんとでもなった。だが、問題はクレア様と呼ばれるお方。あれは人の皮を被った化け物だ。勝てるビジョンが全く見えなかった。)」
その二人をそう評した最強暗殺者。
「(私は死ぬのが怖い。だから、強敵とみなした相手には必死で命乞いするさ。)」
最強暗殺者は何かの気配を感じたのか、ピクリと起き上がる。
「(誰か来たな。)」
短刀を忍ばせ、身構える。
「最強暗殺者!いるんだろ!!」
元締め代理が大声で叫びながら、キョロキョロする。
「何か用事か?」
最強暗殺者はフトッチョたちを裏切った手前、潜みながら、応答した。
「フトッチョ様が最強暗殺者を高く買っているようでな、呼び戻せだとよ。俺は反対したがな。」
元締め代理もまた最強暗殺者を警戒しながら、身構えていた。
「断る。」
「チッ、なら、金だ。いくらで動く?」
「無理だ。私はもう足を洗う。」
元締め代理が唖然とする。
「何がお前を変えたんだってんだ・・・?まさかクレアっていう強ぇぇ女っていうのか?」
「そうだ。クレア様はおそらく裏の業界を支配するだろう。そのような言動が見られた。となれば好き勝手にやれなくなる。お前も早いところ足を洗うなり、クレア様のところに鞍替えするなり、お勧めする。」
「そ、そうはいかねぇってんだ。交渉の最終手段だ。言い値で払おう!!これはフトッチョ様直々のお言葉だ!!」
「何?言い値だと?」
最強暗殺者の心が明らかに揺れ動いた。
「(足を洗うにも金がいる。私にも家族がいる。)」
元締め代理の前に姿を現す最強暗殺者。
「うぉっ!!」
唐突の出現に後ろに下がる元締め代理。
「それは本当か?」
「あ、あぁ、本当だ!」
最強暗殺者は元締め代理を値踏みする。
「金に意地汚いフトッチョがそんなこと言うとは思えないが?」
「俺たちの作戦が上手くいけばの話だ。話に乗るか?乗るなら、もう裏切るな!」
最強暗殺者は本能的に死を感じる選択肢を突きつけられていると感じた。まるで運命の分岐点のように思えてはならなかった。
「・・・。」
「白金貨10枚、前払いする。作戦成功の暁には言い値で払うと約束しよう。」
最強暗殺者は報酬の良さに目が眩み、腹を括る。
「わかった。乗ろう。」
最強暗殺者は死を感じる選択肢を選んだからにはもう引き返せないのであった・・・。
◇◇リュウ邸宅◇◇
「クレアとガイアスにそんなことがあったのね。」
リーゼがリュウから出来事を伝え聞く。
「ちょうどセバスチャンが同行してるわ。」
「ハッ。」
リーゼの後ろにセバスチャンがいた。
「フトッチョの収入を洗って頂戴。娼館はともかく孤児院の助成金をかすめてる可能性はあるわ。それに冒険ギルド内でも魔物の買い取りでレア素材を横流しして、利益を独り占めにしてるという噂もあることだし。」
「わかりました。結果がわかり次第、旦那様に報告しましょうか?」
「えぇ、お願いね。フトッチョを叩ける結果だったらいいわね。」
「ハッ。リーゼお嬢様たちはこれから護衛の任務ですね。」
リーゼを筆頭にリュウ、メイファ、アイリンが旅支度の準備を済ませていた。
「えぇ、お父様との鉱床の独占契約のためにウルスたちを迎えに行くわ。」
リュウたちはカインズから出したチーム指名クエストでウルスたち蜥蜴族の使節団の護衛を請け負った。顔の知らない人が行ってもウルスたちを不安にさせるだろうからという判断だ。
リュウ邸宅の使用人が集まる。兎人族の白髪老人の執事ラビットとカミュが前に出る。
「リュウ様。」
「ラビット。あとは頼む。」
その一言に「ハッ。」と深く頷くラビット。
「お気をつけください!ご主人様のお帰りをお待ちしています!!」
カミュが言うと他の使用人たちが頭を下げた。
「あぁ。」
リュウの使用人たちとリーゼのお付きのセバスチャンがリュウたちを見送った。
リュウたちはウルスたち使節団の護衛のために亡国ルクテシア王国方面改め、ジランド領の西ルクテシア方面に旅立つ。
その先にフトッチョの陰謀が待っているとは知らずに・・・。
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