第七十三話 メイファとポチ編
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。
メイファとポチ編
◇◇冒険ギルド 修練場◇◇
リュウとポチがお互い徒手空拳で戦っていた。
ポチは狼顔で上半身が体毛で覆われ、筋肉粒々。下半身が狼脚でズボンを履いていた。獣人族。
「ぐわぁぁぁワン!!」
リュウにやられ、仰向けに倒れるポチ。
「やったー!これでリュウとデート出来るニャ!!」
メイファが喜ぶ。どうやらポチがリュウとメイファとのデートを阻止するためにリュウに決闘を申し込んだようだ。
「(デートしたくて勝った訳じゃないからな・・・。)」
リュウが仰向けに倒れてるポチに近付く。
「俺の正体を知っても、なお勝負を挑むお前の根性に感嘆を覚える。獣人族は強くあらばならないというのだったな。お前はメイファに振り向かせたいのか?」
ポチが痛みをこらえ、起き上がる。
「・・・俺たち獣人族の故郷はディモール王国に滅ぼされた。当時、獣人族の長が俺の父だったワン。」
ポチはメイファとの関係に当たり、過去を語り出していく。
「俺の父は勇敢なる戦士だった。ディモール王国が攻めてきたとき、俺の父は故郷を守るために戦い、死んだ。まだ小さかった俺はただ逃げることしか出来なかったワン。」
「メイファとは幼なじみ。獣人族を集めて、もう一度再興したい。そのためには強くなる。」
ポチは狼顔をキリッとした表情でリュウと対面する。
「そしてリュウ・・・あなたを超えて、メイファを連れて行きたいワン。」
ポチがそう言い切るとリュウがふっと笑う。
「俺を超えるか。いいだろう。何度でも勝負を受けてやろう。」
お互いニッと笑う。男同士の友情が育まれ、良い雰囲気になる。
だが、空気の読めないメイファがリュウの腕を組む。
「さぁ行くニャー!」
リュウをズルズル引っ張っていく。その様子を見たポチがガーンガーンと四つん這いにショックを受けた。
「リュウを絶対に倒す!いずれ覇竜討伐するワン!!」
儚き友情であった。
「あ、何話してたのか知らないけど、ポチとは絶対にありえないから!!」
メイファにとどめを差されたかのようにグサッとポチがうつ伏せに倒れたのだった・・・。
◇◇ジランド王国周辺の森林◇◇
リュウはメイファと一緒に国が発行する食料クエストを受けて、食料調達に赴いていた。場所は生い茂る森林の奥深く。
「・・・・。」
リュウは背後に常に気配がして落ち着かない。メイファもだ。
何故なら木々に紛れ、ポチがストーキングしていたのだ。クエストを通じたデートを阻止するためのようだ。
「どうする?」
「ほっとくニャ!!」
メイファはずかずかと進んでいく。
「なかなか魔物に遭遇しないニャ!!」
先だっての戦争にて周辺に多大な被害を与えたためか、魔物は遠くに逃げ出していたようだ。
「川に行くニャ!魚ならいるだろうニャ!!」
食料クエストは魔物に限定しているわけじゃない。動物、魚なんでも大量に取ってくれればOKなのだ。
「さっかなさっかな〜♪」
リュウがメイファの後ろ姿を眺める。赤猫耳が頭に付き、赤髪ショートカットのボーイッシュな獣人族の女性。背が高く、上半身が人族と変わりなく、下半身が赤まだら模様の猫脚。鉄の胸当てが付き、ホットパンツを履いていた。
「(人間の美的基準で言えば美人・・・だよな?メイファに好かれるのは悪い気分ではないが・・・)」
「ポチに好意を持たれて嬉しいとは思わないのか?」
「あー!デート中にそういう話はしないのニャー!!減点!!デート中に他の男女について話題にしてはダメニャ!!」
メイファがややぷんぷんしてしまう。
「むぅ・・・。」
リュウが「(そういうものなのか?)」と首を捻る。
「まぁいいニャ。ポチは獣人族をまとめる長の息子だったニャ。まだ小さかった頃は仲良かったんだけどニャァ・・・。」
メイファが難しい表情をする。
「大きくなったら男と女との性別がはっきりしちゃって、よそよそしくなったニャ。アタイをエロい視線で見てくるニャ。」
「(確かにそういうところがあったな。)」
メイファの話に思い当たるリュウは隠れているであろうポチに振りむく。隠れて見えないはずの汗だらけのポチが見えるような気がする。
そうこうすると川に辿り着く。そこから下に流れる滝があった。
「魚が遡上してきたら、網で大量にゲットニャァ!!」
メイファがじゅるりと涎を垂らしながら、網を構える。どうやら滝を遡上するタイプの魚がいるようだ。
リュウが何気なく滝の先を見やる。そこには盛大な音が鳴る滝壺があった。
「あ、来た来た来たニャ!!」
滝を遡上してくる魚がちらほら見かけてきた。メイファが網で片っ端から捕まえる。
みるみる魚が大群となって遡上しだしてきた。まるで我が先に登ると言わんばかりに飛び跳ねる。
「今日は当たりかニャ!!」
メイファが豊漁豊漁と捕まえる。だが、そんな豊漁ボーナスはすぐ終わりを告げる。
滝に登る巨大な影が見えてきた。遡上している魚を食いながら、登ってくる。
「げっ!!ピラニアギャラドス!!」
ピラニアを模した水棲魔物である。鋭利な牙を持ち合わせている。巨大寄りの魔物であるため、食料に適している。
「倒すか!」
リュウとメイファが臨戦態勢を取る。
ピラニアギャラドスは二人の存在は既に知っていたため、遡上しながら、待ち構えている二人に飛び込むかのように噛みつき攻撃に転じた。
まずはメイファに噛み付いた。
「ニャハハ、はっずれ〜。」
メイファの姿が消える。既に影分身スキルによりかわしていた。
空振りしたピラニアギャラドスはそのまま川に飛び込み、二人の存在確認のため見上げる。
その時、リュウとメイファは川の両端の岸に上がっていた。川付近に待ち構えていてはピラニアギャラドスに有利な戦況になるだけだから。
二人の位置を把握したピラニアギャラドスは勢いよく潜る。攻撃準備のようだ。
「ピラニアトゥース!!」
ピラニアギャラドスはリュウに向かって噛みつきに行った。巨大な身体を持っていることもあり、川岸程度の陸地ならお構いなく攻撃が出来る。
「ドラゴンスキン(弱体化)!!」
リュウの体全体にドラゴンの鱗を纏わり付かせる。するとガキッとまるで金属を噛みついたかのような音が響く。
「ギャッ!!」
逆にピラニアギャラドスが悲鳴を上げる。刃こぼれならぬ歯こぼれしたようだ。心なしか涙目だ。
「ニャハハハ、そんな歯じゃ、もう噛めないかニャ?」
その言葉にピラニアギャラドスが逆上し、メイファの方に振り向いた。
「水鉄砲!!」
高速圧縮された水の弾丸がメイファを襲う。
「あ・・・。」
メイファの方は油断していたのか、避けるタイミングが遅れてしまう。
「メイファ!!」
木々に隠れていたポチが水の弾丸を素手で思いきり弾き飛ばした。
「ポチ!?」
ポチの登場にメイファが驚いた。同時にキュンとする光景でもあった。
だが・・・。
「かっこいいぜ!俺様!!」
親指をクイッと自分の方に立てて、無駄なポーズを決めるポチ。
「・・・・。」
メイファはキュンとしかけたが、ポチの言葉と無駄なポーズに急速に冷めていった。
「(ポチ・・・自画自賛しなければ良かったんじゃ?)」
人間の心の機微に疎いリュウでさえ突っ込むほどであった。
ポチの登場にピラニアギャラドスが驚く。
その隙にリュウがピラニアギャラドスの尻尾を掴む。
「ギ!?」
「水棲魔物なら陸上にあげれば弱いだろ。」
「ギャッ!?」
リュウが力一杯に陸上に上げるとピラニアギャラドスの強者感が一気に無くなり、ピチピチ跳ねるだけであった。
「ギッギッ・・・。」
そんなピラニアギャラドスにリュウ、メイファ、ポチの目の色が変わり、涎垂らす。
それは完全に食料としてのターゲットロックオンであった。
「ギギ・・・ギャァァァァァァァァァ!!」
ピラニアギャラドスは断末魔の悲鳴を上げるのであった・・・。
こうして食料クエストは完遂した。
◇◇◇◇
リュウとメイファがジランド王国を見渡せる丘に座って景色を眺める。
「いい天気ニャー!」
メイファがリュウに抱きつく。
「鉄の胸当てが当たって痛いんだが・・・。」
特に興奮する様子を見せないリュウ。
「アタイじゃダメなのかニャ?クレアやエンカだと反応が違うニャ。何が違う?クレアの巨乳?それとも小さい胸?」
不満げなメイファ。
「(それはドラゴンだからな・・・)」
人間とドラゴンは根本的に違う生物。それを知らないメイファ。
「それはそうとして獣人族は強さこそ誉れという文化があるのは理解できるが、別に俺じゃなくても・・・。」
「やっぱりアタイじゃ不満だってことニャ?!」
メイファがジト目でリュウを見る。
「い、いや、俺よりもポチが・・・。」
「またそういうこと言うニャ!アタイはリュウがいいのニャァ!!」
メイファがガーッと勢いよく指を差した。
「アタイのことどう思ってるニャ!!」
「(・・・あれ?これは答えに困るな。下手に答えたら、チーム崩壊の危機になるのでは?)」
リュウがいくら鈍くても直感的に気付いた。冒険者といえども恋のもつれでチームが崩壊する話は枚挙にいとまがない。
「・・・メイファは美人だと思ってるよ。」
リュウが苦し紛れにそう返事するとメイファがフニャァ~と体をクネクネして、喜ぶ。
どうやら返事を間違えるとチーム崩壊というこの場を切り抜けられたようだ。
「もぉー結婚して欲しいニャ!!」
リュウは「いや・・・。」と言葉を濁したのだった・・・。
次回 アイリンとシン編。
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