第三十九話 騎士貴族学校①
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。
◇◇騎士貴族学校◇◇
騎士貴族学校は7歳から15歳の騎士貴族の子供が通うところであり、騎士貴族の義務教育となっている。また卒業の進路でも騎士貴族の長男、長女はそのまま家督を引き継ぎ、国を支える。次男次女以降はジランド王国騎士団や文官、仕官が大半である。騎士男爵家と準男爵家の長男以外は冒険者や平民と言った進路が与えられる。
騎士貴族学校卒業OBのカインズ、ラインゴッド騎士団長、リーゼ、ソルといった活躍者がおり、騎士貴族学校に通う子供たちには憧れの的でもある。
リュウは制服を身に纏い、騎士貴族学校の校門をくぐると校庭には自主練なのか体を鍛える子供たちがいた。感心しながら、学校の玄関までたどり着く。
「来たわね。」
リーゼが待ち構えていた。挨拶もそこそこにリーゼの案内の下に騎士貴族学校の内部を歩く。
「これからリュウは礼儀作法を第一に騎士たる心構え、貴族に必須な社交ダンス、愛国心を養うためにジランド王国の歴史などを学んでもらうわ。通常は毎日、授業を受けに学校に来る必要があるのよ。」
「毎日?それだと冒険者活動ができないではないか?」
「時折、リュウのように騎士貴族に成り上がる者が出る。たまに年配の者もね。その場合は単位が取れば、自動的に卒業できるわ。」
「単位?」
「騎士貴族学校が指定される基準の必要な授業を受ければ、卒業できるってことよ。」
「ふむ。」
「今から授業を受けさせるけれど、良かったわね。あなたが15歳だから、違和感なく溶け込めるわよ。」
リーゼが教室に案内される。教室に入るリーゼに続き、リュウが入ると7歳から15歳まで年齢に幅のある子供たちが多くいた。皆が皆、一斉に注目を集めた。
「ここは?」
「礼儀作法の授業を受けるための教室よ。」
どうやらリュウはこれから礼儀作法を学ぶようだ。
「リーゼ様。お待ちしておりました。」
「ザマス先生。お願いします。」
メガネをかけ、キリッとしたおばさんがザマス先生。
「お任せくださいザマス。」
リーゼは教室の後ろに立つ。リュウを見守る保護者的な位置になっている。
「(俺が何かやらかすと思っているのか?)」
リュウが知り合いに見られる気恥ずかしやら、情けなさやら、入り混ざった感情になる。
「では、軽く自己紹介からお願いしますザマス。」
ザマス先生がリュウを招き、教壇に立たせる。
「(この場で何を喋ればいいんだ?)」
「俺はリュウ。騎士貴族になったばかりで右も左もわからないがよろしく頼む。」
適当に自己紹介するとあちこちから手が挙がる。
「戦争に行ったって本当ですか!?」
「活躍したから、貴族になれるなんてすごい!」
「あいつが貴族になれるなら、俺も上を目指して活躍出来っかな。」
ザマス先生が「静粛に!!」と教鞭を机に打つと静かになった。礼儀作法に厳しい先生のようだ。
「リュウさんの席は・・・。」
ザマス先生が席を探すべく教室内を見回すと手を挙げる男子生徒がいた。
「ここが空いてるぜ。」
男子生徒の言葉により、リュウはその席に座ることとなった。
「ふぅん。お前がリュウなのか。」
男子生徒が値踏みするかのようにリュウを眺める。逆にリュウも男子生徒の容姿を見る。どことなくカインズに似た雰囲気の獅子短髪に金髪碧眼で猛々しい印象がある男であった。
「君は?」
「カイル・トランスロッド。我が父、カインズの息子にして、リーゼを姉にもつと言えばわかるか?」
リーゼの弟のようだ。
「カインズの息子か。よろしく頼む。」
「俺はお前が嫌いだ。」
カイルの嫌悪宣言に戸惑うリュウ。
「今回はリュウのための授業になりますが、皆は復習のつもりで受けてほしいザマス。では授業を始めます。」
そんなリュウを他所に授業が始まるのであった。
◇◇礼儀作法の授業◇◇
「騎士貴族となったからには城の呼び出しを受けることもあるザマス。場合によっては王様の面会も。」
ザマス先生が教鞭を掌を叩くようにペシペシと音が鳴る。そして教鞭をリュウに向ける。
「基本的に王様の言うことに無言や否定してはいけないザマス。事前に段取りをお知らせしてあるはずザマス。」
「(ギクッ。なんで知ってるんだ?)」
「リーゼ様からランドルフ王様の謁見についてお聞きしておりますザマス。」
ザマス先生はランドルフ王との謁見の件をリーゼから聞いたようだ。
「他の国では無礼が打首になる場合もあるザマス。よって貴族の立ち振る舞いが求められているザマス。」
ザマス先生が分厚い本を持ち出す。
「まずは歩き方からザマス。この本を頭に載せて歩くザマス。」
頭に分厚い本を載せて背筋をピシッと立てて、姿勢よく歩く練習から始めるリュウであった。そこから敬礼や言葉遣いなど様々な礼儀作法を学んでいく。
「誰か王様の役割をお願いしますザマス。」
「俺がやるぜ。」
カイルが王様に見立て、リュウが片膝をつく。謁見の練習である。
「頭を上げよと言葉がない限り、王様を見てはいけませんザマス。目線は下ザマス。」
教鞭をペシッとリュウの頭を叩く。
「基本的に王様の謁見には段取りが決められていることが多いザマス。その段取りに沿って、進行すれば筒なく終了するザマス。しかし、時折、王様は世間話もなされることがあるザマス。では、まず自己紹介を交え、何か世間話を振ってください。」
「わかった。頭を上げよ。」
カイルの言葉にリュウが頭を上げる。そこには学校の椅子に座って、足を組んでどことなくふんぞり返っているカイルの姿があった。
「(こいつに嫌われるようなことをした覚えがないが、あからさまな態度には腹が立つな。)」
リュウが内心腹が立っていた。
「直答を許す。」
「おれ・・私はジランド王国より南から来ましたリュウと申します。」
慣れない口調だが、ザマス先生の教鞭が飛ばないように頑張るリュウ。
「遠路はるばるご苦労。余がカイル王である。にしてその角は何か?」
「蜥蜴族と人族のハーフである証でございます。」
ザマス先生がうんうんと満足そうに頷く。どうやらここまで順調であるようだ。
「リュウとやら。今日は寒いな。」
「いえ、そう感じませんが。」
ペシッ
ザマス先生の教鞭が飛んだ。リュウは頭を叩かれたのだ。
「王様の言うことを否定してはいけませんザマス。同意するのですよ。」
「(なんだと。世間話すら合わせなくてはいけないのか?)」
それだとランドルフ王の言うことに右ならえって独裁政権ということになるが、先日の謁見ではそういう雰囲気ではなかったようにも感じた。
「リュウよ。近う寄れ。」
「ハッ。」
ペシッ
またザマス先生の教鞭が飛んだ。
「そのように言われても一度断らないといけないザマス。」
「(なんて面倒なしきたりがあるのかよ!!)」
カイルがクックッと嘲笑っていた。リュウは内心憤りを覚えながらも我慢する。
「いえ、私めごときが近寄るなどと・・・。」
リュウは改めて断りの言葉を挟んだ。
「いいから近う寄れ。」
リュウがカイルに近づいて膝つく。すると頭ごなしに踏み付けられた。その行為に周囲が騒然となる。
リュウは突然のことで頭が追いつかなかったが、徐々にカイルに踏みつけられているのだと理解した。
「・・・・これはなんだ?」
「他国でこのような仕打ちされることもあるさ。その時はどうする?」
「・・・♯!!」
リュウが憤りを持ち、カイルに飛びかからん勢いで立つとリーゼが「そこまでよ。」と割って入る。
「カイル。やりすぎよ。」
ゴンッ!
「いてっ!!」
リーゼのゲンコツがカイルの頭に炸裂した。
「リュウ。愚弟でごめんなさいね。それと他国の謁見ではこのような挑発行為は我慢よ。戦争に直結する場合があるわ。もちろん場合によるけれど。」
「姉ちゃん!何するんだよ!!」
「リュウを足蹴にしておいてよく言うわね?」
「謁見の厳しさを教えてやってただけだ!」
「リュウに何かしようなら、私が黙ってないわよ?」
リーゼが姉としての威厳にカイルが「けっ」と不貞腐れて席に戻っていった。
「反抗期かしらね・・・。」
リーゼが溜め息ついた。
キーンコーンカーン
授業終了の鐘が鳴った。
「今日はここまでザマス。」
多少の騒動があったが、リーゼが諌めたおかげで気を取り直したザマス先生の言葉により、礼儀作法の授業が終わるのだった。
「(この覇竜を足蹴にする人間なんてそうそういない。覚えて・・・。)」
リュウはカイルに対して苛立ちを覚えていたが、すぐさま深呼吸する。
「(相手はまだ子供。俺は年上だ。許容してやらんと・・・。スゥーハァースゥーハァー。)」
深呼吸を何度も繰り返すのであった。
◇◇◇◇◇
「次は騎士教養の授業ね。」
一息を入れる間も無くリーゼに引っ張られて、別の教室を案内される。カイルとは別れたが、傍目に睨んできたのが見えた。
「ラインゴッド騎士団長。リュウをよろしくお願いします。」
「お久しぶりですな。リーゼお嬢。」
全身鎧にスキンヘッドで頬に傷のあるラインゴッド騎士団長が講師を務めるようだ。
「まさか、前科付きのリュウが騎士貴族になるとは思わなんだ。ハハハ。」
ラインゴッド騎士団長からしたら、リュウは底知れぬ何かを秘め、偽貨幣疑惑事件やスイートルーム宿泊事件を起こした要注意人物でもあった。
「騎士たる心構えを説くのですな。」
「えぇ、お願いね。」
ラインゴッド騎士団長が教壇に立つ。生徒はリュウだけでマンツーマンでの授業だ。
「騎士たるものは一般国民を守り,国を支える立派な職業。なんたらかんたら・・・。」
ラインゴッド騎士団長のお有難い念仏にリュウは瞼がだんだん重くなり、船を漕いでいた。
キーンコーンカーン
授業終了の鐘が鳴るとラインゴッド騎士団長が「おっと、ここまでか。」と切りあげた。
「そういえば、ディモール王国の元奴隷で君と同じように角を持った女性たちがおりましたが、知り合いですかな?」
「(クレアとエンカのことかな?)」
「クレアとエンカのこと?」
リーゼが代わりに答えた。
「おぉ、そういう名前でしたわ。元奴隷にしては妙に肉付きも色艶も良く、印象に残っておりましてな。ただ・・・。」
ラインゴッド騎士団長が一度咳払いする。
「元奴隷などと信じられないほどの強さを持ち合わせているような気がしなくもない。リュウもそうだが、蜥蜴族と人族のハーフは実力が掴みづらい。儂も耄碌したか・・・。」
ラインゴッド騎士団長はそう言って、教室を後にした。リュウたちの中身がドラゴンだとは気づいてないようだが、実力者から見たら、不審がるようだ。
◇◇◇◇◇
リーゼが「じゃぁ次の授業ね。」とまたまた連れられて、別の教室に案内される。
「(こんなに立て続けに授業とは・・・休憩はないのか?)」
リュウの燻る不満にリーゼは気づかない。
「次は魔法学よ。アイリンが子供向けに講師やっているわ。」
次の教室には子供たちが大勢いた。魔法の初心を学ぶ授業のようだ。
「リュウを連れてきたわ。よろしくね。」
「ん。」
アイリンが講師役を務めていた。
「それでは授業を始める。」
魔法学の授業が始まる。
「まず基本四系統の魔法は火、水、土、風。」
「上位系統は種族固有の魔法も含め、雷、氷、砂、樹木、光、闇などがある。私のエルフ魔法も種族固有魔法。」
「他に特殊系統の魔法で回復、補助、空間、召還などがある。」
「人間は通常であれば、2~3つ、多くて4つの系統の魔法を覚えられる。だけど、魔法の才能で言うと魔物の方が優れている。魔物は日常的に魔力を使って活動してるから、魔力や魔法の扱いのレベルが違うことが多々ある。」
「魔法にも下級、中級、上級、極大のレベルがあり、威力が変わる。また周囲の環境によって威力が変わることも覚えてほしい。中には命を削る魔法も・・・。」
アイリンが淡々と授業を進める。リュウも含め、子供たちの瞼が少しずつ重くなる。長い話は眠くなるだろうと見越したのかアイリンは話題を変える。
「私は先日、戦争に参加した。そこで魔竜と会ってきた。」
そう言うと子供たちが食いついてきた。興味津々のようだ。
「四大竜には天変地異を引き起こせるドラゴン魔法を持っている。魔竜は重力を操る魔法。皆を動けなくさせて、痛ぶる。こうグシャグシャと。」
アイリンが冷たい表情で子供たちを怖がらせる。
「魔法による対抗手段は魔法で相殺。魔法の素質にもよるけど、死にたくなかったら、魔法を覚える。」
子供たちがコクコクッと頷く。するとアイリンは満足げになる。いかにも魔法は素晴らしいものだと説く。
キーンコーンカーン。
「授業はここまで。」
アイリンが授業終了を告げる。
「お疲れ様。」
リーゼが労う。
「リュウ。私の授業は理解できた?」
「あ、あ、あぁ・・・。」
リュウが曖昧そうに答える。
「眠そうだったわよね。」
リーゼがそう突っ込むとアイリンがコクッと同意した。どうやら船を漕いでいるリュウを見ていたようだ。
「い、い、いや、ちゃんと聞いてたようん。」
リュウが参考になったと言わんばかりの表情で頷くが二人は信じられないといった表情であった。
「アイリンの授業で改めて思ったけれど、リュウの持つ魔法の種類が多いのが気になるわよね。」
リーゼの言葉にギクッとするリュウ。
「15歳で基本四系統のうち火、風、水を覚え、さらに上位系統の雷を覚えてるわよね?補助魔法も収納魔法も。そして戦争中に光魔法をいきなり覚えた。創造神のご加護でも受けてないと説明つかないし、まさか蜥蜴族は魔法のエキスパート?」
「い、いや・・・。」
蜥蜴族の生態もよくわかってないし、一度調べる必要あるかもしれないとリーゼとアイリンが話し合う。それを聞いたリュウがまずいと冷や汗流す。
「(実は500歳でリーゼたちの言う魔物であるドラゴンだから・・・なんて言えるわけないよなぁ。)」
アイリンの授業で話したように魔物の方が魔力の扱いが上手いこともあり、長く生きてきた覇竜にしたら魔法の種類が多くてもおかしくはなかった。だが、リュウは本当のことを言える訳がなく、言葉に詰まり、苦し紛れに過去の人物を挙げる。
「マクスウェルがいただろ?」
賢者マクスウェルは人族にして多彩な魔法を持っていたはずだ。
「・・・そうね。多彩な魔法を持つ賢者マクスウェルの前例があるわね。」
リーゼは自分に言い聞かせ、納得していた。リュウはリーゼからの多彩な魔法による疑問が自然に消えて、安堵した。
◇◇◇◇◇
「さぁ、次の授業よ!!」
リーゼがリュウを見やると忽然と消えたように姿がなかった。
「リュウは!?」
「逃げた。」
その場にいたアイリンが答えた。
◇◇グラウンド◇◇
「(学校ってめんどくさいところなんだな・・・。)」
リュウはグラウンドの端で寝そべっていた。周囲から見れば、授業をサボっている生徒に見えることだろう。
「いーち、にー、さーん」
剣術の授業なのか木剣を振る子供たちがいた。子供たちを指導している講師には見覚えのある顔であった。
「リュウじゃないか。」
ソルだった。
「ソル、なんでここにいるんだ?アイリンもいたけど・・・。」
「あぁ、たまに指名クエストで来るんだ。僕みたいな天才天才天才剣士や魔法使いは講師として呼ばれるんだ。」
ソルがきざったらしく髪を手で櫛上げる。
「(なんで天才を強調するんだ・・・。)」
「それでリュウはなんでここに?」
「リーゼから逃げてきたんだよ。授業授業ばかりでさぁ。」
「はは、そういえば騎士貴族になったから、ここに通うことになったのか。それじゃ、単位取らなきゃ、早く卒業できないぜ。」
「だからって休憩もなしに立て続けに授業じゃ、逃げる。」
「じゃ、息抜きに僕の授業を受けていけ。剣術の授業だ。体を動かすだけだ。それだけで単位もらえる。簡単だろ。」
「・・・わかった。」
リュウは剣術の授業を受けるが、そこにカイルの姿があったのだった・・・。
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