第三十八話 リュウの家
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。
◇◇貴族街◇◇
ランドルフ王から騎士男爵の爵位と邸宅を賜った。ジランド王国城の周囲は貴族街と呼ばれ、貴族や商人などといったお金持ちが住まう。
「ここよ。」
リーゼの案内により、我が家を初めて見るリュウ。中世欧風のTHE・貴族とも言える豪邸で庭も広かった。
「わ〜広いニャァ。」
「住みたい・・・。」
物見遊山でメイファもアイリンもついて来ていた。
「騎士男爵貴族としてはこのくらいの広さは普通よ。」
リーゼがさも当たり前のような表情をし、メイファとアイリンが目から羨望の輝きを放つ。当のリュウは「ふぅん。」と豪邸を見回す。リュウにとっては寝床さえあればいいという考えのようだ。豪邸の玄関付近まで来ると十人ほどの使用人が並んで迎えてくれた。
「リュウ様、お帰りなさいませ。」
二つの兎耳が頭につき、兎人族の白髪老人男性が執事服を着て、頭を下げる。
「お前はあの時の戦争奴隷の・・・。」
リュウが見たことあるといった表情をした。
「ハッ。儂はラビットと申します。このたびは命をお救いいただきありがとうございます!その上、仕事の配慮まで・・・。この老骨に鞭を打って、リュウ様に尽くしますぞ!!」
先の戦争でリーゼが戦った相手だった。(第二十六話参照)
「腕の調子は?」
リーゼが戦闘によってラビット執事の腕を斬ったことについて訊く。
「断面が綺麗だったおかげで回復も早く、この通り問題はありませぬぞ。感謝します。」
ラビット執事がくるくる腕を回して問題ないと意思表示した。リーゼによって斬られた腕は回復魔法によってつながっていたのだ。
次に茶髪セミロングで腕から手にかけ、茶色の羽がついた鳥人族の女子供のメイド服のカミュがを頭を下げる。
「リュウ様。カミュです。私をお救い頂いた恩人のために仕事を頑張ります!」
リュウがカミュをまじまじ見る。
「あ、あの。何か粗相しました?」
戦争の時に見たカミュは痩せほそって生気が感じられなかったが、今のカミュは肉付きが少し戻り、色艶が出てきていた。
「元気になったな。」
リュウがカミュの頭を撫でる。それだけを切り取れば微笑ましい光景なのだが、リーゼたちの反応は違っていた。
「(・・・なんでかしら。覇竜様の面影を感じるなんて。)」
リュウからただならぬ雰囲気に周囲が戸惑っていた。使用人たちもそう感じ取っているようだ。
「あ、ありがとうございます。」
カミュが頭を撫でられ、はにかむとラビット執事が涙ぐむ。
「うっ・・・。」
「どうした?」
「すみませぬ。私事ですが、生きていればカミュと同じ年齢であった孫を思い出しましての。」
ラビット執事の家族はディモール王国にて劣悪な奴隷環境により、死んだようである。
「俺は冒険者だから、家を空けることが多い。だから、お前はこの家を、カミュを守ってやるといい。リーゼに一発入れたくらいには強いんだろ。」
「はっ、お任せください!」
ラビット執事が手を胸に当て、頭を下げる。
「もしかして、他の使用人も同じ境遇か?」
リュウが並んでいる使用人たちの顔つきを見てそう感じ取った。
「そうよ。」
リーゼによると使用人全員、ディモール王国の元奴隷とのことだ。
「奴隷解放したのはいいけれど、仕事の便宜を図らないと生活に困るのよね。」
リーゼの考えから、使用人を手配したようである。使用人は住み込みで働き、給料も特別に国から出るようだ。通常は主人であるリュウが給料を出さなければいけないが、光魔法持ちの特権ということらしい。
「ささ、ご案内致します。」
ラビット執事の案内で中に入ると玄関先に豪華なシャンデリアが付き、進むと食堂や10個の部屋、豪華な風呂があった。床も絨毯張りだった。そしてリュウの寝室を見ると天幕付きの豪華なベッドが置かれ、絵や壺などの芸術品が飾られていた。
「どうですか?リュウ様のお好みに合わない場合は申し付けください。」
ラビット執事はリュウに寝室の内装について感想を訊く。
「寝るところがあればいいさ。あとは任せる。」
「ハッ。」
家を一通り見回ったメイファとアイリンはそれぞれ思惑が交差する。
「(リュウと結婚すればここに住めるニャ。玉の輿!!)」
「(リュウは将来有望。使用人付きの優良物件。放さない。)」
下心を持った二人は「リュウ・・・。」と声をかけようとしたら、カミュがバタバタやってきた。
「リュウ様。お客様です。」
「ん?わかった。」
リュウたちが玄関に行くとクレアとエンカがいた。
「リュウー。家もらったって聞いたから来たわよ~。」
「リュウ様!お邪魔します!!」
クレアとエンカが我が家如く入りこんで、キョロキョロ見回す。リュウがその様子に「?」と首を捻る。
「クレア、エンカ。何か用事でもあったんじゃないのか?」
クレアが「そうそう。」とポンと手を打つ。
「私たちをここに住まわせてちょうだーいね。」
その言葉にメイファとアイリンが反応した。
「ダメニャ!」
「出ていって。」
何故かこの一家の主のリュウを差し置いて、拒否するのだった。
「あら~。あなたたちには訊いてないわよ。」
クレアはメイファとアイリンの言葉を無視する。
「とりあえず、理由はあるのか?」
「聞いてよ~。金を稼いでも稼いでも、宿のスイートルーム代や飯代、ファッション代、貴金属類でぜーんぶ消えちゃうのよねぇ。」
よく見ると高価な指輪やネックレスを身につけていた。人間になった影響からか、新たな自分を見つけたようだ。ドラゴンのままではファッションも貴金属類も身に付けられなかっただろう。
「だからね~。金を浮かそうと思ってね。ここなら使用人がついて、料理も出してくれるんでしょぉ。宿代や飯代いらないし~。いいでしょぉ~。」
「リュウ様!お願いします!!」
クレアとエンカがリュウに抱きつく。誘惑でなし崩し的に許可を出そうとする作戦のようだ。リュウは同族でドラゴンの雌のフェロモンに誘惑を駆られる。
「わかったわかったから離れろ!!」
こうしてクレアたちの思惑通りに顔を紅くするリュウから許可が出た。
メイファとアイリンが対抗して「アタイも住みたい!」「私も住みたい!」とリュウに抱きつく。こちらは種族が根本的に違うため、誘惑は受けないが、許可を出さないと抱きついたままになる。
「わかったわかったから・・・。」
リュウはどうにでもなれと許可を出す。許可が出たことで喜ぶ二人だった。
「クレアといったわね。」
リーゼとクレアが対面する。心なしかお互いの視線がバチバチッと火花が散っている。
「何故だか知らないけれど、戦わなきゃいけない相手のような気がするわね。」
リーゼは無意識的に魔竜であるクレアを敵とみなしているようだ。
「ふふ、戦うというなら相手してあげるわぁ。」
リーゼとクレアがじりじりとお互いが近づき合う。最終的にはメンチを切り、なおかつ胸を押しつけ合う。
「胸小さいわねぇ。」
クレアが挑発する。
「脂肪だらけの胸になんの意味が。」
リーゼが応酬するとお互い「ふふふふ。」と不敵な笑みを浮かべていた。おまけにリーゼはさりげなく剣の柄をさするかのように抜刀の準備していた。
「やめろやめろ。」
リュウが喧嘩一直線の不穏な雰囲気を感じ取り、割って入る。だが、それはまずい判断であった。
「リュウに決めてもらいましょう。私の胸の方が好みよねぇ〜?」
「わ、私の方よね!?」
何故か二人の矛先がリュウに向けられ、勝負の決着がリュウに委ねられてしまった。
「(なんでそうなるっ!?)」
クレアが体をしならせ、色香で誘惑する。
「うっふん♪」
それを見たリーゼも負けじと懸命に体を張って誘惑する。
「う、う、うっふん・・。」
「相変わらず色仕掛け下手ニャ。」
「気持ち悪い。」
悲しいことに冒険者一筋を生きてきたリーゼには色気が感じられず、メイファやアイリンに気持ち悪がられた。
「さぁ、選んでちょうだい。」
クレアがずいっと胸を寄せてリュウを誘惑する。心なしか楽しんでいるような雰囲気を感じられる。まるでリーゼをからかっていると言わんばかりである。
「私にしなさい!」
リーゼは色仕掛けを諦めたのか脅迫まがいに剣の柄を握って抜刀の準備していた。
「(どう答えたらいいんだよ?!)」
リュウは二人から逃げるようにこの場を離れたのだった。
「(そういえば、クレアは家をもらったことを誰に聞いたんだろう?)」
リュウはクレアの交友範囲に首を傾げる。
◇◇ジランド王国城◇◇
「そうか。魔竜たちはリュウのところに。」
ランドルフ王がカインズとセバスチャンを交えて密談するかのようにヒソヒソ話していた。
「魔竜たちの名前はなんと言う?」
「クレアとエンカでございます。」
セバスチャンが答えた。
「何にせよ。セバスチャンのナイスフォローだ。」
セバスチャンが金の浪費に困っていたクレアたちにリュウの家はどうかと進言していたようである。
「クレアたちは今後も見張っていてくれ。」
「かしこまりました。」
「さて、一部の貴族の動向はどうか?」
ランドルフ王がカインズに振る。
「きな臭いね。あっちはやる気満々のようだぞ。」
「泳がせよう。この機に貴族たちの整理をしよう。」
ランドルフ王たちによる権謀術数の張り巡らされた戦いが水面化で始まっているようであった。
◇◇◇◇◇
数日もするとジランド王国はすっかり平穏を取り戻し、変わりない日常が戻った。
「リュウ様,お似合いです。」
カミュがリュウの容姿を褒める。
リュウは騎士男爵貴族になったことで騎士貴族学校に通うことが義務付けられていた。そのため騎士貴族学校の制服を着ていた。制服は上下黒で白ボーダーラインが付いており,有事の際に動けるように耐久性も施されていた。
「(学校なんて行きたくねぇぇぇぇーーーーー!!)」
リュウは目的の冒険者活動から逸脱しており,登校拒否を起こしていたのであった・・・。
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