第三十六話 ランドルフ王
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。
◇◇大広間・リーゼたちサイド◇◇
大広間にてリーゼたちが立食形式で食事をつつきながら、貴族たちと交流する。
「いやはや、魔竜は恐ろしいものですな。」
「最強の攻撃力を持つ巨大魔導砲が通用しなかったとなれば、もっと強力な魔導兵器開発が急務と言えますな。」
「全くだ。四大竜が存在しているからこそ我々は脅威に感じる。」
リーゼたちが魔竜との戦闘を貴族たちに繰り返し、話を聞かせて返ってきた言葉である。リーゼはその言葉に危機感を持っていた。
「どうした?」
ソルがリーゼの危機感のある表情に気づいた。
「何か傲慢な雰囲気を感じたのよね。魔竜を見ていない者だから言えるのかしら。このまま行くとジランド王国が危機に陥る・・・そんな感じよね。」
「魔導兵器の開発は平和利用のために民の安心にも繋がる。いいじゃないのか?」
「力を持ったら使わずにいられないのが人間よ?」
リーゼの言葉を深読みするソルはジランド王国が他国や四大竜に喧嘩を売ろうと思いついた。
「おいおい。考えすぎじゃないのか?」
リーゼがグラスを一飲みすると「そうかもしれないわね。」と溜め息吐く。
「何の話ニャ?」
メイファが料理どっさりの皿を抱えて、やってきた。
「行儀悪いわよ。」
「無礼講だからいいニャ。」
「この場での無礼講は身分の差や口調などは大目に見ますという意味だから、間違っても貴族に対して酒をぶっかけないでね。」
リーゼの注意を聞いていたポチが驚愕の表情する。
「そ、そうなのかワン。貴族って腹たつやつもいるから、この機会に酔っ払ったフリして酒をぶっかけようと思ってたワン・・・。」
「やるなよ!?僕はSランク冒険者になって貴族に返り咲きたいんだ!足を引っ張るなよ!!」
ソルがポチに改めて注意を促したところにアイリンが「返り咲きたい?」と訊いた。
「ソルは元々、騎士準男爵貴族だったのですよ。」
側にいたシンが答える。
「あぁ。僕は騎士準男爵貴族の末っ子だった。騎士男爵貴族以下は長男が家を引き継ぐ決まりでね。末っ子だった僕は平民か冒険者の選択肢を迫られて、カインズを見習い、冒険者となったのさ。」
「なるほど。」
ソルの説明にアイリンが相槌打つ。
リュウを除いてリーゼ、メイファ、アイリン、ソル、ポチ、シンが集まっているところに丸い物体の人間がやってきた。
「これはこれは私のギルドの精鋭たる顔ぶれ。」
リーゼたちが丸い物体の人間を見るなりにリーゼが前に出る。愛嬌を貼り付けた表情である。その背後にいるメイファたちが心なしか面倒そうな雰囲気を醸し出していた。
「ギルドマスター。お久しぶりですね。」
その相手は冒険ギルドのマスターのようである。
「いやはや、君たちが活躍してくれたお陰で私も鼻が高いよ。」
「覇竜様のお力添えがあってこそのことです。」
「ふん。魔物風情に様をつけるな。喋れるドラゴンだか知らんが、四大竜が頂点にのさばってもいいことはない。だが、素材としては天文学の値になるだろう。早く討伐するがいい。」
「・・・・。」
「時に光魔法を持つ者がいるではないか。聞くところによると君のチームの一員だそうじゃないか。」
ギルドマスターが二重も三重もあろうかという顎をさする。
「リュウのことですか?」
「あれは利用価値がある。」
「何をお考えか聞いても?」
「ジランド王国が落ち着いた頃に君たちにクエストを出しておく。心して準備するがいい。」
ギルドマスターは言いたいことを言って満足したのかこの場を離れた。見えないところでメイファが「べー」と舌を出していた。
◇◇ランドルフ王私室◇◇
リュウがランドルフ王の私室に入るとランドルフ王と側にカインズがいた。ランドルフ王が手を上げると仕官、近衛騎士が私室から出ていく。人払いのようだ。人の目がなくなると膝をついて頭を下げるランドルフ王。
「覇竜様、人間のおろかな争いに助力を感謝します。あなたがいなければディモール王国の思惑通りに魔竜によってジランド王国は滅ぼされたでしょう。」
「頭を上げよ。一国の王が頭を下げるなどあってはならないと聞いている。」
「・・・・・。」
それでもランドルフ王は頭を上げない。その相手がジランド王国に恩恵をもたらすと言われる覇竜だからこそなのだろう。
「おいおい。この場面をリーゼたちに見られたらまずいんだ。さっきも不敬だとか言われて怒られたんだ。」
リュウが焦るとカインズが笑い出す。
「ハハハハ!リーゼに尻を敷かれてんのか!!」
「うるさい!!」
やや恥ずかしげなリュウはランドルフ王に向けて手を差し出す。
「リュウと呼んでくれ。ランドルフよ。久しぶりだな。」
ランドルフ王が顔を上げるとリュウが覇竜かのように見え、その慈愛に胸を打たれた。
「ありがとうございます。」
ランドルフ王とカインズが席につき、リュウも席につく。そこから砕けた口調で世間話から始まる。
「カインズからリュウが人間になったと聞いたときは驚いた。」
ランドルフ王がまじまじとリュウを見る。
「来るべき時は来た。約束通りに出来る限り、協力と支援しよう。幸い、光魔法持ちを名目に支援しやすい。」
「あまり特別扱いしないでくれ。ドラゴンの俺が貴族を貰っても仕方がない。だいたい騎士貴族学校に行かなきゃならないってなんだよそりゃ?俺は冒険者をやりたいだけって言ったよな?昔に言ったよな?」
リュウがジト目にランドルフ王とカインズを交互に見やる。
「それは申し訳ない・・・・。」
「ハハハハ!社会勉強にいいじゃねぇか。」
ランドルフ王が汗を拭い、カインズが高らかに笑った。
「しかし、魔物が人間になりすます可能性を考慮しなければならないのかと思うと胃が痛くなる。その魔法はあまり広めないで欲しい。」
「俺の人化魔法はオリジナル故に質量保存法則を無視し、なおかつ外見を変える魔法。おいそれと真似できんさ。」
ランドルフ王の懸念にリュウが安心させる。だが、リュウの動向を知っているカインズが爆弾投下する。
「魔竜と炎竜が人間になって、ジランド王国城下町にいるぞ。」
それを聞いたランドルフ王が絶句する。
魔竜と小型炎竜がリュウの人化魔法により、クレア、エンカと名乗る女の人間となって、城下町を闊歩していたのだ。
「なんだと?聞いていないぞ!!」
「今、初めて言ったからな。」
カインズのとぼけた顔にランドルフ王が憤る。
「わざとだろ!?」
「ハハハハ!!」
その様子は昔ながらの付き合いからくる朗らかな雰囲気であった。
「魔竜たちは本当に大丈夫なんだな!?抑えられるよな!?」
「セバスチャンが見張っている。安心しろ。」
「そ、そうか。魔竜たちはカインズに任せる。」
魔竜の逆鱗に触れようならばジランド王国は簡単に終わってしまうことは想像に難くない。ランドルフ王が腹を抑えて「いたた・・・。胃薬を・・・。」と薬瓶に手を伸ばす。王としての立場は心労が多く、胃薬が欠かせないようだ。だが、民からの信頼は厚い王である。
「にしてどうだ?人間になって、このジランド王国を見てどう思った?」
「まだ日は浅いが、ジランド王国を縄張りにしたいと思えるくらいに居心地は良い。」
ランドルフ王がホッとした。
「しかし、それは城下町でのことだ。貴族が集まるここはダメだ。腹に一物抱えているものばかりだ。」
先ほど仕官や貴族たちに陰口を叩かれた出来事を振り返る。
「すまない。余の力が足らないばかりにまとめきれない部分がある。だが、褒賞を受け取ってもらったことで落ち着いた。受け取ってもらわねば、一国の王に恥をかかせ、貴族に示しがつかなくなる。あの場はそういうことだ。」
「貴族の事情は理解し難いものがある。」
人間の立場に色々な思惑があり、ややこしくなるんだろうと思うリュウだった。
「話はそれだけか?」
リュウは大広間で料理を食いそびれ、そわそわしていた。それを知ってか知らずかランドルフ王とカインズが目を合わせる。何かあるという顔だ。
「(これは面倒な話が来るパターンか?)」
ランドルフ王たちの反応に嫌な予感がするリュウであった。
「ここから本題だ。君は光魔法持ち故に利用したい輩がいることを忠告したい。」
ランドルフ王は難しい表情した。リュウは予想していたとばかりに構えていたから淡々な反応。
「光魔法は人間からしたら十年に1人と言われるらしいな。その光魔法を利用して、何がしたいのだ?」
リュウが疑問マークを浮かべながら訊いた。ランドルフ王が答える。
「昔、西方面にルクテシア王国というところがあったのだが、暴竜に滅ぼされた。それ以来、悪霊やゾンビが徘徊するようになった。それが行動範囲を徐々に広げ、今やジランド王国の西の関所で食い止めている状況なのだ。抜本的な解決が見込めない中、光魔法持ちであるリュウが現れた。」
ルクテシア王国といえば、400年前に存在していた国である。400年前の覇竜はまだ子供であり、弱かった時代の頃でもある。なぜ暴竜によってルクテシア王国が滅ぼされたのか理由は知らない。
次にカインズが亡国ルクテシア王国に狙いをつけている理由を説明する。
「一部の貴族たちはリュウを利用して浄化させて、鉱石などの環境資源を得ようって魂胆だ。西の方面は冒険者以外、誰も手を出してない宝の山がある。」
「つまり金儲けか?」
「端的に言えばそうなるな。」
「そうか。」
「この話を主導してるのは冒険ギルドのギルドマスターだ。気を付けろよ。」
リュウが溜め息をつく。
「俺は純粋に冒険がしたいだけなのに人間のしがらみに縛られるのは不本意だな・・・。」
「すまない。私もカインズも手を尽くして、リュウに手を煩わせることがないように努力しよう。」
ランドルフ王が頭を下げる。このまま話を切り上げた。リュウはリーゼたちのいる大広間に戻ると料理があらかた片付けられ、四つん這いでショックを受けたのであった。
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