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第百五十八話覇竜の回想「魔女アルテミシアの最期」

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

 ̄国民の広場 ̄


ジランドは成体覇竜を押し斬ろうとワルーイ王国城の屋根をぶち破り、姿が見えなくなる。


「ど、どうなったんだ!?」


ジランドと成体覇竜との戦闘の行方を見守っていた国民たちがざわざわする。


少しすると見晴らしの高台からジランドが現れ、ガッツポーズと勝利の宣言する。


「た、倒したのか!!」


「これで安心ね!!」


これにより不安に思っていた国民たちはワァァァァッ!!と歓喜に沸いた。


そんな中、切り株がピクリと動く。


「(気ヲ失ッテイタ・・・。)」


ラーセイル近衛総大将に斬られ、切り株となっていた人面樹が意識を取り戻した。


「(クッ、一度ナラズ二度マデ人間にヤラレルトハ屈辱!許スマジ!!)」


人面樹は恨めしげに歓喜に沸く国民たちを標的に自らの根を伸ばすのだった・・・。


 ̄ワルーイ王国城・大広間 ̄


「魔女アルテミシアァァァァァァァァァッ!!」


致命傷を負い、血まみれとなっているラーセイル近衛総大将が一本の剣で魔女アルテミシアを刺した。


「ぐっ・・・。」


魔女アルテミシアはうめき声を上げ、倒れた。その場面を見たジランドが焦りににじんだ表情で大剣を手に駆ける。


「ラーセイル!!」


ラーセイル近衛総大将はジランドに振り向き、クックッと笑う。


「ワルーイ王国は終焉を迎える。私は近衛総大将の最後の責任として、クーデターを起こした魔女アルテミシアの命を頂戴するっ!!」


致命傷を負い、血まみれのラーセイル近衛総大将とジランドがお互いの剣で打ち

合間見える。


「思い出す!ワルーイ王様の御前試合でお前に敗れたことを!!」


お互いの剣が応酬する。ラーセイル近衛総大将は力を振り絞っているようだ。


「そのときからお前が嫌いだった!!」


気迫とともにジランドを攻める。


「傍若無人な振る舞い!ワルーイ王様に対して貴族あるまじき言動!!何かもが嫌いだった!!」


「さらには国民たちのために奔走するジランドが理解できなかった!国民たちなぞ私たちのために尽くせばいいのだ!!」


ラーセイル近衛総大将の剣戟と罵詈雑言にジランドはただ黙って受けて止めていた。するとラーセイル近衛総大将は剣が止まり、ゴブッと血を吐く。もはや命の風前の灯火であった。


「クックッ・・・だがな。そんなお前とのやりとりは少々楽しかったかもしれんな。立場が違えば仲良くやれたかもしれんな・・・。」


ラーセイル近衛総大将がジランドを前に初めて本音を吐露した。ジランドは哀愁漂う表情しながら言葉を発する。


「オレはお前を戦友だと思っている。戦友なら立場なんて関係ないだろ。あるのは敵味方というシンプルなもんさ。面白いことに戦ったあとは仲良くなることもある。オレたちはそれでいいだろ?」


「・・・そうかもしれんな。だが、戦友に勝ち負けがあるなら・・・最後は勝ちたいものよっ!!」


ラーセイル近衛総大将が剣を構える。まさに命を懸ける一撃をぶつけるようだ。ジランドも呼応し、大剣を構える。


「うぉぉぉぉぉー!!」


「最強技・霹靂一閃!!」


ラーセイル近衛総大将とジランドが各々の剣を振るい、交差するようにすれ違った。


「・・・・・。」


ジランドは大剣を振るい斬った。


「・・・・・。」


ラーセイル近衛総大将はジランドを背に棒立ちになる。


「・・・最後に訊こう。お前は新たなる王国を興し、何がしたい?」


「今や魔物が跋扈している世界で種族差別なき安心笑顔溢れる王国を作りたい。種族の垣根を越えて力を合わせれば出来るはずだ。そう。例え、一国をたやすく滅ぼせる力を持つ暴竜や魔竜レベルに対抗出来る国だ。」


「夢物語だ。・・・だが、悪くないな。」


ラーセイル近衛総大将はふっと笑う。すると身体から斬撃が発生し、「がはっ!」と膝をつき、倒れた。そしてワルーイ王国の最後の将は逝ったのであった。


「アルテミシア!」


ジランドは魔女アルテミシアに近寄り、介抱する。


「ふふっ・・・。」


「致命傷の傷か!これでは回復魔法の中級じゃ無理か!!リスクありの上級や極大じゃねぇと・・・。」


「元々、私は死ぬ気だったから、これでいいさ。」


「・・・事を起こせば、ただじゃすまなかったはずだ。何故だ?!」


「こうでもしないとますます国民の生活は苦しくなるじゃないか?遅かれ早かれ何らかの形で暴動が起きていたさ。」


「だがな・・・。」


魔女アルテミシアはジランドの反論に耳を貸さないとばかりに口を塞ぐ。


「お前の夢は私の夢でもある。ここまで来たんだ。そのまま突っ走れ!!」


「・・・ちっ。お前は冷静沈着で愚痴言いながらもオレについてくれた。いい女だ。最後は背中を蹴っ飛ばしやがるがな。」


「はっはっはっ。」


思わずお互い笑い合う。その時にドドドドッ!と地響きが鳴る。


「なんだ?!」


ジランドが何事かとキョロキョロ見回す。


「大変です!!」


キウルたちが登場する。


「人面樹が生きてました!!国民たちを生命吸収により、巨大化してます!!」


国民の広場にて人面樹が多数の国民を生命吸収スキルにより体力を回復し、なおかつ巨大化しているようだ。


「なんだと!!」


「・・・ジランド。行け。まだやるべきことがあるようだな。」


魔女アルテミシアがジランドを戦いに向かわせるように促した。


「・・・お前の最期を見届けられなくてすまんな。」


「なに。お前に死に顔を見せたくないからいいさ。」


魔女アルテミシアが手をシッシッと追い払うポーズした。


「はいはい。オレたちに湿っぽいのは似合わんか。」


ジランドはキウルたちと共に人面樹が騒ぎを起こしている国民の広場へ向かう。そして残された成体覇竜と魔女アルテミシア。


『なんだ。お前も死ぬのか?』


一部始終見ていた成体覇竜が意外そうに訊いた。


『私は多数の国民を間接的に犠牲にした。どのみち死は避けられなかった。あとは地獄で贖罪に励むとしよう。』


『わからんな。人間の考えは感情が入り乱れ、難しい。』


『・・・話に付き合ってくれ。』


魔女アルテミシアは語る。


 ̄魔女アルテミシア・回想 ̄


魔女アルテミシアはジランドと同じ村に生まれた。たかだか村だ。同時期の子供は少なかった。


その中でジランドは力っぷしの強い子供で目立っていた。子供のアルテミシアは魔力がやたらに高く魔法使いの素養があった。


「水魔法(中級)・あくあしょっと。」


アルテミシアが水のつぶてを飛ばす。ジランドは木刀で弾く。


「火魔法(中級)・ふぁいあしょっと。」


火のつぶてを飛ばす。ジランドの木刀では燃えてしまうため、避け、接近する。


「うおりゃー!」


ジランドが躊躇いなく、木刀を振るおうとする。


「風魔法(下級)・つちぼこり!」


「ぐわっ!」


アルテミシアが土埃を発生させ、ジランドの目を潰した。


「えいっ!」


杖でジランドを殴った。


「私の勝ち。」


ジランドが悔しげに地団駄を踏む。


「なにおー!もう一回!!」


「残念。魔力切れた。また今度ね。」


アルテミシアが勝ち逃げするかのように笑いながら駆ける。


「逃げんなー!!」


子供のジランドは力を追い求め、子供のアルテミシアは魔法の追及心が高く、方向性が一致し、たびたび戦闘していた。


アルテミシアはさらなる強力な魔法を使いたいという欲が出て、こっそり村の外に出て、魔物で実験しようとした。だが、子供であり、その判断は間違いであった。


「強力な魔法でも当たらなければ意味がなかった・・・。魔力切れた。」


アルテミシアは複数の魔物に追われていた。やがて囲まれた。


「万事休す・・・。」


アルテミシアは強ばるかのように身体を縮める。


「アルテミシア!」


そこにジランドが現れ、木刀ではなく、真剣を振るった。裂傷を負いながらも複数の魔物を倒しきった。


「何やってんだよ!」


「ジランドこそ、ここで何を・・・?」


「・・・秘密特訓してた。親にちくるなよ。真剣持ち出してることを。」


するとアルテミシアがブッと吹き出し、ジランドが恥ずかしげに顔を背ける。この時、アルテミシアは助けてくれたジランドに惚れてしまうのだった。


その後、二人は成長し、15歳の大人になる。


「オレはワルーイ王国に騎士として働きに出る。」


ジランドは国民を守る騎士に憧れていた。それを聞いたアルテミシアはジランドの後ろをついていくと決めていた。


「私も行こう。村で魔法を伸ばすのに限界を感じていたところだ。」


「お、気心知る幼なじみがいると安心だ!」


ジランドが高らかに笑う。アルテミシアの恋心にまったく気付いていなかったのだ。


二人とも当時はワルーイ王国は大きく豊かな国だと認識があったが、実際にワルーイ王国に着いてみると貧富の差が激しく、スラム街がいくつも出来ていた。


「なんだこれは・・・。」


「話に聞いていたワルーイ王国と実態が違うな。」


ジランドとアルテミシアは着いて早々にワルーイ王国の幻想を打ち砕かれた。


「ここでは魔法を伸ばすのに期待できないな。帰るか?」


アルテミシアは諦めモードに入っていたが、何故かジランドは奮起する。


「いや!よく考えろ!逆にここから始まるんだ!!オレたちが王国を変えてやろうじゃないか!!」


「は?」


「うおおぉぉっ!燃えてきた!!」


ジランドはアルテミシアを巻き込んで、ワルーイ王国の建て直しに奔走する。アルテミシアはブツクサ言いながらもジランドに付き合う。


年月が流れ、ジランドはワルーイ王国騎士団長としてアルテミシアは魔法使いの最高位である魔女兼Sランク冒険者として、ワルーイ王国で顔が知られるようになった。


「アルテミシア。わりぃ。結婚してくれ。」


ジランドが騎士男爵貴族になると嫁が必須だと知り、魔女アルテミシアに結婚申し込みしていたのだ。


「もうちょっとムードを作り出せないのか?仮にも私は女だぞ。」


ジランドが困り顔で頭をかく。唐変木のジランドにそれを期待するのが無駄だと知っていた魔女アルテミシアは苦笑いする。


「やれやれ。仕方がないな。」


結婚後、国民のために行動するジランドに魔女アルテミシアは理解を示し、協力する。


二人はワルーイ王とラーセイル近衛総大将の無茶難題っぷりに苦しめられた。そして魔女アルテミシアは子供が出来ない身体になる。


「・・・帰ろう。オレの夢にお前が犠牲になることはなかった。すまなかった。」


ジランドたちは夢半ばに故郷に戻るのだが、魔女アルテミシアはワルーイ王国を恨んでいた。


「(私はジランドとの子供が欲しかった・・・。)」


さらに年月が流れると森で傷つき、倒れている銀色の小さなドラゴンに出会う。


「(・・・魔物は手なずけられないというが、実験してみよう。成長したドラゴンならば一国を滅ぼせる可能性がある。)」


魔女アルテミシアは小さな銀色のドラゴンを「ギンちゃん」と名付け、世話をした。


試行錯誤こそあったが、コミュニケーションが取れ、多少なりとも言うことを聞かせられるようになった。


大きくなったギンちゃんを見て、ワルーイ王国に一矢報いることが出来ると判断した魔女アルテミシアはワルーイ王国クーデターに向けて行動に移る。


そしてワルーイ王国クーデター直前のギンちゃんの態度から魔女アルテミシアは感づく。


「(ギンちゃんは寝首かく気満々のようだな。ジランドが倒れば、ギンちゃんは即座にワルーイ王国を滅ぼすだろうな。もし、ジランドがやられるようなことがあれば、後ろからギンちゃんを・・・。) 」


だが、そこで魔女アルテミシアがギンちゃんに感情移入していることに気付いた。


 ̄回想終了 ̄


『私は子供こそ出来なかったが、ギンちゃんを自らの子供のように見ていた。』


魔女アルテミシアが世話することで成体覇竜が小さなドラゴンから成長していく様子を間近に見たことから、母性本能が働き、自らの子供のように思ったようだ。


『ボクがお前の子供?何言ってる?また人間の訳分からない感情か?』


成体覇竜が首を捻るが、「そういえば」と続ける。


『・・・ギンちゃんと呼ばれるのは悪くはないと思っている。あれだけ嫌だったのにな。』


成体覇竜がクックッと自虐気味な笑みを浮かべる。


魔女アルテミシアも成体覇竜も致命傷を負い、死がまもなく訪れようとしていた。


『知っているか?母は強しという言葉を。』


『なんだそれは?』


『一般的に女の人間は男より弱い生き物。だが、ここぞというときは強さを発揮出来る。それが子供を守るときが多い。』


『・・・?』


『私は命と引き換えにお前を生かしてやる。』


成体覇竜に巨大な魔法陣が現れる。


『これは!?』


「回復魔法(極大)・パーフェクトヒール!!」


致命傷で死に行く成体覇竜を回復させる。


『覚えておけ。回復魔法は上級から寿命が削られ、極大となると命と引き換えになる。やたらに使うなよ。』


『な、何故だ!?』


『自分の子供を助けるのに理由はないさ。ギンちゃん・・・というには似合わないくらいに大きくなったな。新しく名付けよう。』


魔女アルテミシアはにっこり笑う。


『覇竜・・・。どうだ?かっこいいだろう・・・。』


そして魔女アルテミシアは命を引き換えに覇竜を助け、事切れるのであった・・・。

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