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第百五十七話覇竜の回想「VS成体覇竜②」

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

 ̄ワルーイ王国城・内部 ̄


血まみれで瀕死同然のラーセイル近衛総大将が壁づたいによろよろ歩く。


「はぁはぁ・・・。ジランドはあのドラゴンに勝つだろう・・・。」


ジランドの数々の戦いをラーセイル近衛総大将は見てきた。その直感から出た言葉だった。


「思えば権謀術数である貴族の世界にジランドは真っ向勝負し、民に慕われた。先ほどの戦いでもジランドの仲間はジランドを信じ、命を預けている。それはすなわち王たる資質があり、新たなる王国の幕開けと言ってもいいだろう・・・。」


魔女アルテミシアのクーデターによっていいようにやられたラーセイル近衛総大将は悔しげにダンッと壁を叩く。


「・・・ワルーイ王様を守れずにジランドとの勝負は負けた。」


ワルーイ王を守りとおせばラーセイル近衛総大将の勝ち。失敗したらジランドの勝ち。


クーデターを仕掛けられた際にラーセイル近衛総大将が自らに課した勝負であった。


「もはやワルーイ王国の終焉を迎える最期の将として、責任を取らねばなるまい・・・。」


ラーセイル近衛総大将はワルーイ王国城の中を壁づたいによろよろ歩くのであった。


 ̄ワルーイ王国城・上空 ̄


ワルーイ王国城より遥かな上空に成体覇竜が羽ばたきながら、地上にいるジランドたちを見下ろす。


「(アルテミシアには世話になったが、元よりボクをジランドに殺させようとしていた。返り討ちだ!!城にアルテミシアがいるはずだが、諸々破壊してくれよう!!)」


成体覇竜は口を開き、目一杯に力を込めるかのようにエネルギーを収束させる。ドラゴンブレスの準備をする。


それを見たジランドたちがドラゴンブレスを放たれる前に叩き潰すと決め、行動に移る。


「準備はいいか?」


ゼシリアがエルフ魔法により、身近にあった木を操り、ジランドとキウルを枝に絡み付かせる。


「あぁ!」


「ちょっと怖いですけど・・・。」


キウルがガクブルするが、ゼシリアはお構い無しに枝をぶんまわす。まずキウルが射出するかのように高く飛んだ。


「ひぃぃぃぃー!!」


キウルの叫びを他所にジランドも射出した。だが、それだけでは成体覇竜まで届かない。


「キウル!」


「はいぃぃー!!」


先に飛んだキウルがレシーブのフォームを取り、あとを飛んだジランドはそれを踏み台ごとく足をかける。


「行って下さい!!」


キウルが勢いよく腕を上げるとジランドは更なる高みに飛んだ。


キウルはそのまま落下し、ゼシリアの操る木に助けられる。


ジランドはある程度の高度に達するとスピードが下がる。このままではまだ成体覇竜には届かない。


その側にワルーイ王国城の壁面をピョイピョイと獣ごとくよじ登るシバケンがいた。


シバケンはジランドが飛んできたのに合わせ、回転するかのように飛び移る。ジランドの両足に合わせ、自らを逆さに両足で合わせるかのように蹴り飛ばす。


「行けワン!!」


「おう!」


ジランドはシバケンの助力により、さらに飛んだ。これで成体覇竜まで届くだろう。


シバケンは落下しながらも獣人族特有のフィジカルでくるくる回転しながら、地面に着地した。


ジランドはワルーイ王国城の見晴らしの高台を通過するように飛んだ際に、傍目でそこから繋がる大広間に入っていく魔女アルテミシアの後ろ姿が見えた。


「(アルテミシア!?いや、今はあのドラゴンを倒すのが先だ!!)」


ワルーイ王国城より高く飛ぶ成体覇竜が迫り来るジランドに驚く。


「(魔法使いでもなく羽もない人間がここまで来るのか!!)」


成体覇竜は迫り来るジランドを見ながら脳裏にアルテミシアとの会話が思い起こされる。


 ̄過去・アルテミシアとの会話 ̄


植物系魔物行進(スタンピード)と人面樹を倒したあと、ジランドの住む村に数日間滞在していたときのことである。


そのとき、まだ小さかった覇竜が人間の営みを観察していた。


『人間は何故、群れるのだ?』


小さき覇竜が魔女アルテミシアに訊いた。


『なんだ?藪から棒に?』


魔女アルテミシアが植物系魔物行進(スタンピード)の素材処理しながら、小さき覇竜に顔を向ける。


『人間は群れねば生きていけないのか?』


『・・・そうだな。魔物が跋扈する世界で衣食住を人間一人では絶対に出来ない。すぐ死ぬ生き物だ。だから力を合わせなければいけないのさ。』


『ジランドやアルテミシアは強い。それなのに何故、弱い人間を守る?』


『ジランドは騎士たるものは弱者を守る責務があるとよく言っているがな。私はジランドについていってるだけだ。それに勘違いするな。ジランドも私も弱い人間だ。』


『なに?』


『ジランドは国民を守りたいがために強くなれる。私もジランドがいるから強くなれる。ただそれだけだ。』


『・・・わからないな。』


『端的に言えば一人で生きても寂しいからさ。いくら強くなろうともその感情はついて回る。お前が強さを求めているなら、その先にある感情に気付くだろう。』


小さき覇竜は『ふぅん。』と相づちを打つ。


『・・・あぁ、ジランドには絶対に言うな。こっ恥ずかしい。』


魔女アルテミシアがオチつけるかのようにふっと笑うのだった。


 ̄会話終了 ̄


 ̄ワルーイ王国城・上空 ̄


成体覇竜の口に凄まじいほどのエネルギーが集まり、大きな光弾となっていた。


「間に合わねぇ!!」


ジランドが成体覇竜を叩き潰す前にドラゴンブレスが放たれようとしていた。


「(オレは負けねぇ!国民たちが見ている前では絶対に・・・)」


そこから離れた国民の広場で多数の国民たちがジランドと成体覇竜との上空での戦いを見上げていた。


ジランドは国民たちを守るためにドラゴンブレスに突っ込む気満々であった。


「私の出番だね!!」


ジランドの懐からビラが顔を出し、「妖精魔法・魔力吸収!!」と唱えた。


※妖精であるビラは魔力を元に生きている人間である。 子を成すためにも魔力が必須である。


ビラはキウルたち、国民たちから魔力を頂戴し、ジランドの大剣に魔力を込めた。すると大剣が黒くほとばしった。


「さぁ、行って!!」


「おう!」


ビラがバッと飛んで、ジランドから離れる。成体覇竜の口元の大きな光弾がジランドに目掛ける。


「最強技・ドラゴンブレス!!」


大きな光弾が破壊光線となってジランドを襲う。それに対してジランドは黒くほとばしる大剣を振るう。


大剣に凄まじいほどの魔力が込められ、破壊光線を真っ二つにかきわけ、そのまま成体覇竜に近づく。


「!?」


成体覇竜は目の前にジランドが現れたことに動揺した。その様子にニカッと笑うジランド。


「人間をなめんなよ!!」


ジランドが黒くほとばしる大剣を振るう。


「究極技・アルテマソード!!」


成体覇竜をぶっ叩く。


「ギャァァァァァッ!!」


ジランドは成体覇竜を押し斬ろうと、そのまま落下する。その落下先はワルーイ王国城のてっぺんにある屋根をぶち破り、ドッガァァーンと衝撃音と共に地面に落ちた。


「・・・ギンちゃんを倒したか。」


落ちた先は玉座のある大広間であった。そこに魔女アルテミシアが佇んでいた。


「アルテミシア!!」


ジランドが魔女アルテミシアに顔を向ける。


「お前が魔物たちを引き連れてきたせいで多数の死者を出したんだぞ!?」


「責任は取るさ。」


「・・・死ぬつもりか?!オレは認めんぞ!!」


魔女アルテミシアは意に介さずに見晴らしの高台に指差す。


「さっさと行け。国民たちに勝利を示してこい。それで晴れてお前は王と認めるだろう。」


「くっ・・・。お前の処遇はあとで決める!!だから自死だけはするな!!」


ジランドはそう言い残し、見晴らしの高台へ向かう。国民たちに勝利を宣言し、安心させるのが目的である。


その間、魔女アルテミシアはスタスタと成体覇竜に近寄る。成体覇竜は大ダメージを受けたようでぜぇぜぇと瀕死状態であった。


『ボクは強くなったと思ってた。だけど、またジランドに敗れた。あんなちっぽけな人間にやられるほど弱かったのか?』


『いや、違うさ。お前は強かった。ワルーイ王国全体を恐怖に陥れるくらいにな。』


『なら・・・何故だ?』


『背負ってるものとそうでないものの違いさ。ジランドは守るべきものがあったからだ。』


『以前にも言ってたな・・・やはりわからないぞ・・・。』


魔女アルテミシアはふっと笑う。


『なら、人間になればわかるんじゃないか?』


『・・・世迷い言を。ボクはもうすぐ死ぬ。』


成体覇竜は自らの死期を悟っていた。


そのときに見晴らしの高台からジランドが勝利の宣言をしたことから、国民たちがワァァァァーッと歓声が起こった。


『お前の思い通りだ。満足か?』


成体覇竜が魔女アルテミシアのクーデター成功の心境を訊いた。


『あぁ。』


ジランドが勝利の宣言を終え、見晴らしの高台からアルテミシアのいる大広間に顔を振り向いた。そのときに乱入者が現れる。


「魔女アルテミシアァァァァァァッ!!」


その乱入者は血まみれのラーセイル近衛総大将だった。憤怒の表情しながら、一本の剣で魔女アルテミシアを刺すのであった・・・。

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