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第百五十六話覇竜の回想「VS成体覇竜①」

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

ジランドたちがワルーイ王国城の手前に辿り着くとラーセイル近衛総大将が成体覇竜に敗れる姿を目にした。


『ジランド!来たな!!』


成体覇竜は噛んでいるラーセイル近衛総大将をぺっと吐き出す。


ラーセイル近衛総大将は全身鎧が砕け、血まみれに地面に倒れた。


「ラーセイル!」


ジランドが駆け寄る。ラーセイル近衛総大将の傷の具合を見て、回復魔法が間に合わないほどの致命傷と判断した。


「ジランドか・・・。」


ラーセイル近衛総大将が血を吐きながらも憎々しくジランドを見上げる。


「もはやワルーイ王国はもう終わりだ・・・。」


「・・・・。」


「国の舵取りを行っていた上級貴族も死に、ワルーイ王様はじきに国民の手によって処刑されるだろう。この私もじきに死ぬ。・・・満足か?」


ラーセイルはワルーイ王を守る近衛総大将として悔しげに歯を噛み締める。


「・・・オレは腐っても国民を守る騎士。こんなやり方を取るアルテミシアを止められなかった。それはすまなかった。」


ジランドがクーデターの騒ぎを起こしたことに本意ではないと伝えた。


「だがな・・・ラーセイル。お前が側近として、贅沢三昧に豪遊するワルーイ王を諌め、夢と希望を国民に与えるような政策を取っていれば、アルテミシアもこんな行動を起こさなかった。」


「・・・ふん。このまま行けば、お前が王につく。そして新たな国が出来るだろう。・・・だが、その前にあれを倒せるか?」


ジランドが成体覇竜をちらっと見る。前回の戦いから成長した成体覇竜。ジランドが前回に倒しておけば、こんなことにはならなかったと感じるくらいに強敵となっていた。


「倒すさ。国民たちが見ているからな。」


ラーセイル近衛総大将は「・・・そうか。」と黙って訪れる死まで観戦を決め込んだ。


ジランドとキウル、シバケン、ゼシリアが立ち向かい、ビラは物陰に隠れる。


「ギャオォォォッス!(待ってやったぞ。さぁリベンジだ!!)」


律儀に待っていた成体覇竜が吠えた。



ギンちゃん(成体覇竜)


成長段階にあるドラゴン。Aランク魔物とSランク魔物の中間に位置する実力。


HP7000/10000

MP350/350


攻撃力7000

守備力7000

魔力1000

敏捷性50


 ̄スキル ̄


ドラゴンクロー

ドラゴントゥース

ドラゴンテイル

ブレス

ドラゴンブレス


 ̄魔法 ̄

なし



ジランドたちと成体覇竜が戦闘を開始する。


「行くぜ!!」


前衛にジランドとシバケン。

後衛にキウルとゼシリア。


このフォーメーションで立ち回りを演じる。


まずジランドとシバケンが勇猛果敢に突っ込む。援護にキウルとゼシリアが弓を射つ。


だが、放たれた矢はドラゴンの強靭な鱗に阻まれ、ダメージはほとんど与えられない。


『ジランド以外は邪魔だ!!』


成体覇竜はシバケンを標的に「ドラゴンクロー!」を放つ。だが、空振りした。


「!?」


「影分身だワン!!」


シバケンは影分身スキルを使い、かわしていた。成体覇竜の両側にジランドとシバケンの接近を許した。


二人は同時に攻撃しようと試みるが、成体覇竜は翼を広げ、パタパタと風圧で吹き飛ばした。


吹き飛ばされたジランドとシバケンは体勢を立て直すが、その間に成体覇竜はキウルとゼシリアを標的に動いていた。


『矢がうっとおしい!!』


キウルとゼシリアが援護に弓による矢を射っていたが、カンに触ったようだ。


「うわぁ、来ます!!」


「ちっ!」


二人が後退する中、ゼシリアが地面に複数の種を振り撒き、水魔法をかける。そしてエルフ魔法を唱えると薔薇の植物が複数に急速に生えてきた。


「エルフ魔法(上級)・薔薇の植物!!」


成体覇竜の前に薔薇の植物が複数立ちはだかる。


『花か!それがなんだ!?』


「最強技・薔薇女王!!」


薔薇の茨の枝からトゲが弾のように飛び出す。そのトゲ弾は万本に近い発射であった。


『いててててて!!』


成体覇竜は人間に例えるなら輪ゴムパッチンを受け続けていた。ダメージは軽微だが、動けずに地味に効果があった。


「僕もやります!」


キウルもまた矢を複数持ち、弓を天に仰ぐかのように構える。


「最強技・重力法則に従う矢!!」


複数の矢が天に向かったかと思うとそのまま雨のように成体覇竜の頭上を襲った。


『・・・この野郎!!』


成体覇竜は二人の攻撃にダメージは軽微だが、怒りの頂点に達したようだ。大きく息を吸う。


『ブレス!!』


横一線の竜巻が薔薇の植物ごとキウルとゼシリアを吹き飛ばした。この攻撃により、キウルとゼシリアが倒れた。


「キウル!ゼシリア!!」


ジランドが二人に気をかける。二人が倒れたことでシバケンが逆上し、突っ込む。


「シバケン!待て!!」


ジランドのストップを聞き入れず、成体覇竜の顔に目掛けて、攻撃をしかける。


「最強技・・・。」


「ドラゴンクロー!!」


逆に攻撃を受け、「グワァン!」と飛ばされ、倒れてしまうシバケン。


『さて!邪魔者は倒した!』


成体覇竜はジランドと一騎討ちとばかりににやりと笑う。


「なんとなくわかってる!一対一でやりたいんだろう!?」


ジランドは成体覇竜がリベンジマッチすべく仲間を先に倒したことを理解した。


「ビラ!皆に回復魔法をかけてやれ!!」


「うん!!」


妖精のビラが飛び、キウルたちに回復魔法をかける。


そしてジランドは成体覇竜とやり合う。その様子をラーセイル近衛総大将が意識朦朧としながら眺める。


「(ジランド・・・。)」


ラーセイル近衛総大将が過去を振り返る。


 ̄ラーセイル近衛総大将・回想 ̄


若かりしジランドとラーセイルがお互いを認識したのは格闘大会決勝のことだった。ワルーイ王の目前で御前試合が行われていた。


ジランドVSラーセイル


当時、平民である騎士ジランドと騎士伯爵貴族のラーセイルが戦う。


「(村から働きに出て来て、魔物掃討で活躍し、国民に支持されている人物と聞いていたが・・・強い!!)」


結果はジランドが勝ち、ラーセイルを土につけた。


「くっ・・・。」


騎士伯爵貴族としてのメンツを潰されたラーセイルはジランドに対して、怨恨を抱いた。


「褒美を取らそうじゃも。何か願いはあるかじゃも。」


二人の戦いを観戦していたワルーイ王が満足気な表情でジランドに訊いた。


「じゃあ、騎士団長の座をくれ。」


「ならば騎士男爵貴族を叙爵してやるじゃも。心して働くじゃもぉ。」


ワルーイ王国騎士団の団長になるためには騎士男爵貴族以上の位が必要であった。


「サンキュー。」


「ワルーイ王様に無礼だ!!」


ラーセイルがジランドに突っかかる。


「おめぇ、めんどくせーやつだなぁ。」


「なんだと!」


ジランドは貴族に妻が必須だと知り、Sランク冒険者の魔女アルテミシアを嫁に迎えたが、両者の無作法な振る舞いに頭を痛めた。


それからというもの貴族の社交場などで顔を合わせるたびに喧嘩に発展することがしばしばあった。


年月が流れ、ジランドはワルーイ王国騎士団の団長に。ラーセイルはワルーイ王直属の近衛騎士団の団長に就任した。


「ジランド。ワルーイ王様や上級貴族に対しての言動は目に余るぞ!!お前は下級貴族の騎士男爵だ!!」


「はっきり言っておかねぇとわからねぇだろ。」


ジランドは貴族らしかぬ傍若無人な言動で貴族の世界で異端児となっていた。


「オブラートに包むなりに言い方ってものがある!!」


「贅沢三昧を減らせってオブラートを包むとどう言えばいいんだっつぅ?ありゃ、国民の税金だろ。国の財政がまずいことになってんだろ。馬鹿のオレでもわかる!!」


「税の使い道を再検討願いますと平身低頭にすればいいだけのことだ。国の財政のことはお前ごときに心配されるいわれはない!」


「頭を下げて解決出来るならもうとっくにやってる!!それに国民の声をオレが届けなきゃ誰が届けるんだ!!」


「お前はただ黙って騎士団長としての仕事を全うしろ!!」


「いやだね。国を良くするためならなんだってやるさ!」


ジランドを目障りに思う上級貴族がたびたび暗殺を差し向けたが、ことごとく失敗に終わった。そしてワルーイ王がジランドを煩わしく思い、ラーセイル近衛総大将に上手く排除を伝える。


「ジランド。国境にSランク魔物が出現したらしい。すぐ向かえ。」


「はいはいっと。」


ラーセイル近衛総大将はジランドといえどもSランク魔物相手では命を落とすだろうと見込んでいた。


だが、ジランドはSランク冒険者の魔女アルテミシアと組み、討伐に成功する。


「Sランク魔物の首だ。」


ワルーイ王の眼前にどかっと置くジランド。生々しさありまくりの首にワルーイ王が「ひぃっ」とたじろぐ。


「大変だったぞ!褒美くれなきゃ割に合わねぇ!!」


ジランドは半ば恫喝に声をあらげた。


「な、何が望みじゃも・・・?」


ワルーイ王が青ざめながら、褒美の内容を尋ねた。


「騎士伯爵の位をくれ。周りが色々うるさくてかなわん。」


騎士男爵から騎士子爵を飛ばし、騎士貴族の最高位である騎士伯爵の座を寄越せということだ。


「貴様!図々しいぞ!」


「それならくれてやるじゃも・・・。」


「ワルーイ王様!?」


ワルーイ王はすっかりジランドにビビってるようだ。


「(このままではジランドのいいようにされてしまう!!)」


ラーセイル近衛総大将はジランドの台頭でワルーイ王国の影響が大きくなることに危機感を覚えた。


ラーセイル近衛総大将は数々の魔物討伐の任務をジランドと魔女アルテミシアに与え、負担をかけさせた。


やがて魔女アルテミシアに子が宿せないということを知るとジランドは責任を痛感し、立場を捨て、ワルーイ王国を後に故郷に帰っていった。


ワルーイ王様を始め、上級貴族は大層喜んだ。喜んでいいはずのラーセイル近衛総大将はつまらなそうな表情だった。


「(・・・ジランドのおかげでワルーイ王国は強国に仕上がった。だが、張り合いと呼べる人物がいなくなったのはつまらぬな・・・。)」


ラーセイル近衛総大将にとってジランドの存在の影響が大きかったようだ。ジランドのいなくなったワルーイ王国は腐敗の一途を辿った。


それから十年後、ワルーイ王国に再びジランドは現れた。死刑の罪人として。


「(最期に会いに行こう。この私が引導を渡してやろう。)」


そう思っていたが、人面樹や獣系魔物行進(スタンピード)といった思いがけぬ騒ぎに遭遇した。やはりジランドは相変わらず張り合いがあると心の中で笑う。


「(ワルーイ王様を守り通すことに成功すれば私の勝ち。失敗すればジランドの勝ちということだな!)」


ラーセイル近衛総大将は勝負事と決め、駆けたのだった・・・。


 ̄回想終了 ̄


「ぜぇぜぇ・・・」


ジランドが成体覇竜との戦いにより、劣勢に追い込まれていた。


『くっくっ、これまでだな。冥土の土産に本気を見せてやろう。』


成体覇竜が口を開く。エネルギー収束していくのをジランドが感づく。


「やべぇ!!」


ジランドがバッと避けるように横に飛んだ。


「最強技・ドラゴンブレス!!」


強力なエネルギー弾がジランドをかすめ、そのまま民家が密集してる地域を吹き飛ばした。


「(・・・もはや魔竜や暴竜に肩を並べるレベルだぞ。しかもまだ成長段階でこれとは手に負えねぇ・・・。)」


『避けたか。ならば避けられなくするまでだ!』


成体覇竜が翼を広げる。そして真上に飛び立つ。ジランドがハッとする。


「ま、まさか、真上からドラゴンブレスを打ち込もうってハラか?!」


強力なエネルギー弾を真上から打ち込めば、ジランドたちおろかワルーイ王国城を消滅させることが出来るだろう。


ジランドの元に回復したキウルたちが集まる。


「ど、どうするんですかぁ?!」


キウルが打つ手なくおろおろする。


「ドラゴンブレスに対抗できる手段がない!!」


ゼシリアが焦る。


「ドラゴンブレスを放たれる前に叩き潰す!!」


ジランドがそう決め、「皆!オレを飛ばせ!!」と協力を求める。


そのやり取りを聞いたラーセイル近衛総大将が「・・・。」とこっそり陰ながら姿を消すのだった。

最後までお読みくださり、ありがとうございます!評価点orブックマークをお願いします!!

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