第百五十五話覇竜の回想「ワルーイ王国クーデター⑤」
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!
 ̄国民の広場 ̄
ジランドたちは魔物を掃討し、国民たちの救出を行う。そして元部下のゲイルとその仲間がワルーイ王国騎士団を掌握し、国民の広場を避難場所としてあて、守備についた。さらに通行路に魔物の進入を防ぐためにバリケードをしいた。
ジランドが死刑執行に使われた絞首台のある国民の広場に避難してきた国民たちがごった返していた。
「とりあえず一段落ついたか?」
ジランドがゲイルに状況確認する。
「えぇ。まだ街中に魔物たちが闊歩していますが、駆逐されるのは時間の問題と思われます。」
「そうか。あとはあれか・・・。」
ジランドがワルーイ王国城を見上げる。そこに成体覇竜の巨体が見えた。ラーセイル近衛総大将らしき人影も小さながらに見えた。見晴らしの高台にて戦闘しているようだが、ラーセイル近衛総大将が劣勢と見える。
「あれを取り除かない限り、国民たちは不安だろうな。」
国民たちはドラゴンが暴れているのが目に見えることから、恐怖に感じているようだ。
そこにキウルが魔道具のマイクを持ってくる。
「はい!」
ジランドにマイクを差し出す。
「・・・なんだこれは?」
ジランドが訝しげに受け取り、マイクを見る。
「演説をお願いします!!ジランドさんの言葉なら、国民たちは勇気が沸いてくると思います!!」
「・・・本気か?」
キウルの発言に戸惑うジランド。
「久々にジランド騎士団長の演説を聞きたいものですな。」
ゲイルも同調するかのようにウンウン頷く。
「元騎士団長だっつーの。」
ジランドが昔にワルーイ王国騎士団の騎士団長として、国民たちに対して演説を何度もやっていたのだ。
「仕方がねぇな・・・。」
ジランドはマイクを持ち、高台に乗る。
「あ、あー。」
ジランドはマイクの調子を確かめると同時に国民たちから注目を浴びる。
「ジランドだ。皆、何が何やらわからねぇ状況になってると思うが、オレがいる!わかるか?かつて騎士団長を勤め、ワルーイ王国騎士団で歴代最強のオレだ。」
ジランドが真後ろの遥かな先にワルーイ王国城にいる成体覇竜を親指で後ろ向きにクンと差す。
「あれを倒すから、皆はそこで見ていろ!!」
すると不安に思っていた国民たちに希望の光が差したかのように「オォォォーッ!!」と歓喜する。
「(アルテミシア・・・。これでいいんだろ!?)」
ジランドが成体覇竜を倒すことで英雄となり、王に邁進する道を魔女アルテミシアは望んでいる。
「オレは行くぜ!何があろうとも生き残れよ!!」
ジランドは演説を終わらせ、後はゲイルにすべてを任せる。そしてキウル、シバケン、ゼシリア、ビラを引き連れてワルーイ王国城に向かう。
 ̄ワルーイ王国城・見晴らしの高台 ̄
ラーセイル近衛総大将と成体覇竜が戦闘に入っていた。
「くっ!ここで戦うには狭いっ!!」
ラーセイル近衛総大将がワルーイ王を巻き込まないように戦うが、成体覇竜の全長10M級、翼を広げると全幅20Mの巨体さに戦えるスペースを大きく取られていた。(翼は折り畳んでいる)
「(ワルーイ王様をどうにか逃がさねば・・・。)」
ラーセイル近衛総大将が焦燥感を感じながら、逃がす手段を考える。そこに部下である近衛騎士の二人が登場する。
「ラーセイル近衛総大将!加勢します!!」
近衛騎士の二人が加勢しようとするが、ラーセイル近衛総大将が首を横に振る。
「いや、ワルーイ王様を秘密の通路を使って、お逃がしせよ!」
「ハッ。ワルーイ王様!こちらへ!!」
「ひ、ひぃぃぃじゃも!!」
ワルーイ王が命からがらに近衛騎士二人に連れられて逃げる。
「・・・逃げたか。」
魔女アルテミシアがその様子を見ても、慌てていなかった。クーデターで最大の目的であるワルーイ王の首をだ。
不審に思ったラーセイル近衛総大将が成体覇竜の攻撃を避けながら訊く。
「アルテミシア!貴様はワルーイ王様の命を狙いに来たのではなかったのか?!」
「私がやらずとも国民たちが手をくだしてくれるだろうからな。」
「なに!?どういう意味だ?!」
「ワルーイ王の私利私欲さに反感を買う者が多いということさ。私はその者たちを引き入れてる。クーデターに賛同する仲間をな。」
「・・・まさかっ!?」
「さっきワルーイ王を連れていった近衛騎士の二人も私の手の者だ。ワルーイ王は国民たちの手で処刑されるだろうな。」
「き、貴様ぁぁぁぁっ!」
ラーセイル近衛総大将が怒りにより、成体覇竜の攻撃を潜り抜け、魔女アルテミシアに突っ込もうとする。だが、それは大きな隙を見せることになった。
『隙ありぃ!!』
「ぐぅっ!」
成体覇竜が鉤爪を振るい、ラーセイル近衛総大将は瞬間的に両手の二本の剣で受け止めるも吹き飛ぶ。
「しまっ・・・。」
見晴らしの高台から落下する。空中で身動きが出来ずにとっさに木の枝を掴み、ぐるりと回転し、立て直し、地面に着地する。
「ドラゴンスタンプ!!」
成体覇竜がラーセイル近衛総大将の真上に自身の体重をかけた足蹴攻撃する。
「くっ!」
ラーセイル近衛総大将が姿勢を低く避ける。ドッシーンと着地する成体覇竜。
「邪魔するな!足場の広くなったここで私の力を見せてくれるわ!!」
ラーセイル近衛総大将が仕切り直しとばかりに二本の剣を構え、成体覇竜と相対する。
「ブレス!!」
成体覇竜が大きく息を吸って、横一線の竜巻を吐いた。
「二刀流・受け流し!!」
二本の剣の切っ先で竜巻の方向を変えさせて、受け流した。
「ドラゴンクロー!!」
「二刀流・つばめ返し!!」
ラーセイル近衛総大将が成体覇竜の攻撃をいなし、切り返し攻撃する。ドラゴンの鱗が非常に硬く、少々傷つけただけだった。
「(馬鹿なっ!Aランク魔物のワイバーンキングとは比較にならない硬さ!!まさかこいつ、Sランク魔物相当の実力が?!)」
『やるな。ジランドと並ぶほどの手練れということはこいつを倒せば、ジランドも倒せるということだな!』
成体覇竜はラーセイル近衛総大将を仮想ジランドと認識する。
「全力を出そう・・・。怒髪天!!」
※怒髪天は攻撃力を大幅上昇させるスキル。
ラーセイル近衛総大将の白髪モヒカン頭が紅くなる。その姿はまるで・・・。
『ぶっ、鶏みたいな頭だな。』
成体覇竜がギャッギャッと笑う。その様子にラーセイル近衛総大将が「#」と怒りから青筋が浮かび上がる。
「お前の言うことはわからん・・・が、絶対に馬鹿にしてるだろう!?」
ラーセイル近衛総大将が両手の二本の剣を構える。成体覇竜とは間合いがある。そしてかたや一本の剣を振り抜く。
「剣技・烈空斬!!」
一筋の斬撃が発生し、遠距離攻撃として成体覇竜を襲う。
『ジランドが使ってるのを見たな!』
成体覇竜が斬撃を振り払うべく「ドラゴンクロー」を繰り出そうと腕を上げる。その時に斬撃の影にラーセイル近衛総大将がいた。
「!?」
「最強技・烈空十文字斬撃!!」
一筋の斬撃にもう一本の剣を振り抜き、十字の形を作り出し、成体覇竜の懐(身体)を攻撃する。
「ギャァァァッ!!」
成体覇竜がダメージを負い、十字の部分が付いた。
「どうだ!!」
『ぐおぉぉぉ・・・。』
成体覇竜が痛がる素振りを見せるとラーセイル近衛総大将がさらなるダメージをと追撃に走る。だが、それは間違いだった。
成体覇竜が巨体さを生かし、のたちまわるかのように暴れた。その拍子に攻撃を受け、のけ反ってしまう。
「ぐっ・・・。」
『よくもやったなぁ!!』
成体覇竜が歯を立てる。
「ドラゴントゥース!!」
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
ラーセイル近衛総大将は噛まれ、全身鎧が砕け、血まみれになるのだった・・・。
 ̄ワルーイ王国城・秘密の通路 ̄
ワルーイ王は近衛騎士の二人と共に緊急時の避難のために王族が使われる秘密の地下通路を使い、逃走を図っていた。秘密の地下通路は入り組んでおり、経路が数種類あった。
・ワルーイ王国から離れた地点の脱出用の経路
・ワルーイ王国・正門までの経路
・国民の広場までの経路
等々・・・。
ワルーイ王はワルーイ王国を脱出するための経路を選んでいた。
「こちらです!」
「まだじゃもか・・・。」
近衛騎士二人に案内されるがままにワルーイ王は歩くが、でっぷり肥えた身体から悲鳴が上がる。
「出口はもうすぐでございます!」
「おぉ!」
ワルーイ王が出口らしき梯子を見るなりに喜ぶ。だが、ワルーイ王は地下通路の経路を熟知してなかったため、魔女アルテミシアの手先である近衛騎士二人の罠であることに気付いてない。
近衛騎士二人が先に梯子を登る。あとにワルーイ王が登る。
近衛騎士二人が出口の蓋を開けて、ワルーイ王を引っ張る。するとその場所は国民の広場であった。
獣系魔物行進から避難してきた国民たちが多数いた。
ワルーイ王は国から脱出するものと思い込んでいたためにその光景に戸惑う。
「こ、これはどういうことじゃも?!」
「さぁ、こちらをお登りください!」
近衛騎士二人がにっこりと悪魔の笑みを浮かべながら、ビシッと平手で方向を指し示す。絞首台まで続く階段であった。
そこでワルーイ王は近衛騎士二人に裏切られたと理解する。
「余を謀ったのかじゃも!?」
恐怖に後ずさるワルーイ王を無理矢理に絞首台まで連れていく近衛騎士二人。
高台の絞首台にゲイルとワルーイ王が立つ。国民たちが注目する。
ワルーイ王を見るなりに国民たちがブーイングの嵐。ゲイルが魔道具マイクを持つ。
「静粛に!ワルーイ王様はこの事態を引き起こした責任をお取りになられる!!」
「なんじゃもぉっ!?」
「国民たちの血税をしかるべきところに使わず、自らの豪遊に充てた! 特に防衛で必要なワルーイ王国騎士団の軍事費を削り、弱体化させた!!それは魔物行進から国民たちを守れないほどに!!」
「そして最大の過ちはワルーイ王様がジランドという功労者を追い出したことにある!!ジランド騎士団長がいなくなったワルーイ王国は腐敗してしまった!!」
「さらにとどめとばかりにジランド騎士団長を死刑に国民たちを絶望させようとしてきた!!」
「だが、ジランド騎士団長は仲間により、死刑を脱した。本来ならこんな国など見捨てようと考えるだろう!それでも見捨てずに身体を張って、我々のために戦っておられる!!まさに真の王は誰かもう明白だろう!!」
ゲイルがそう言いきった。
アルテミシアの自作自演の出来事だが、ワルーイ王にすべての罪をなすりつけ、処刑し、ジランドを王に据える企みのようだ。
ゲイルの言葉に共感した国民たちが声を上げる。
「ワルーイ王はいらん!!ジランドを王に!!」
「そうだそうだ!!」
「ワルーイ王は死刑だぁー!!」
ゲイルが満足げに頷く。ワルーイ王は脂汗を流しながら、青ざめる。
「待ってくれじゃも!そ、そうだ!!王位をジランドに譲るじゃも!!それが皆の願いじゃろ。円満解決じゃもぉ?」
「それで死んだ者は戻ってきますかね?」
獣系魔物行進により、守りきれずに多数の死者を出していたのだ。
「じ、じゃも・・・。」
「もう遅いのです。もはや誰もがあなたの死を望んでおります。」
ワルーイ王は近衛騎士二人により、絞首台のロープに首を突っ込まれる。
「ひぃぃぃぃー!!」
ワルーイ王は国民たちの眼前で絞首にて処刑された。こうしてアルテミシアのクーデターは成ったのであった。
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