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第百五十三話覇竜の回想⑲「ワルーイ王国クーデター③」

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

魔女アルテミシアが成体覇竜と共にワルーイ王国城へ襲撃する。


「ワルーイ王様が危ない!!」


その様子を見たラーセイル近衛総大将が慌て、対面していたジランドたちを背に駆け出した。ワルーイ王の元へ馳せ参じるようだ。


ジランドはキウルたちに問い詰める。


「クーデターにしては、この惨状はどういうことだ?!」


複数の狼と熊の魔物がワルーイ王国に入り込み、暴れている。


「アルテミシアさんがドラゴンを使って、獣系の魔物行進(スタンピード)をけしかけて引き連れてきたんです!」


キウルが返事した。


「何故だ?!」


魔女アルテミシアの行動が見えないジランド。元部下のゲイルが回答する。


「国民を1つにまとめ上げるには恐怖に陥れる必要がございます。そして恐怖から救う英雄たちを仕立て上げ、国民の心を掌握します。また英雄の中に異民族を加えれば、種族の垣根を越えた国が出来ましょう。全てはクーデター成功後の未来のため。」


「・・・自作自演に近いじゃねぇか!?」


「時としてはそういうこともありましょう。もはやワルーイ王国に未来はありませぬ。それに魔女アルテミシアは大罪人になる覚悟を決めておいでです。」


「・・・・。」


ジランドはキウル、シバケン、ゼシリア、ビラ、元部下のゲイルを見回す。皆はジランドを英雄として王に据え上げる腹積もりのようだ。


「・・・ここまで来たらオレも覚悟を決めなきゃいけねぇのか!!」


ジランドは魔女アルテミシアの手の平に踊らされたような感覚を持つ。


「キウル!手錠と足の鉄球を外してくれ!鍵は処刑人が持ってる!!」


「はい!」


キウルが倒れている処刑人から鍵を取り出し、手錠と鉄球をガチャガチャ外す。これでジランドは身軽になった。


「オレの大剣と鎧はあるか?」


「私が持ってるよー。」


ビラが収納魔法の魔法陣を出す。


「私じゃ、取り出せないから、手突っ込んで。」


「あぁ!」


ジランドは魔法陣に手を突っ込み、大剣と全身鎧を取り出し、装備した。


「おぉ、騎士団長たるお懐かしき姿!!」


「昔の話だ!」


「いえ!自分にとっては永遠の騎士団長です!!


ゲイルは甲冑を被っているが、涙ぐんでるようだ。


「それでどうする?」


ゼシリアがこの後の行動を訊く。


「まずワルーイ王国に入り込まれた熊と狼の魔物を片付ける!!」


ジランドがそう言うなりに「ゲイル!!」と振り向く。


「ハッ!」


「死んだモブがここにいるということはワルーイ王国騎士団は戻ってきているのか?」


「そのようです。」


ジランドの住む村を管理下に置いてたワルーイ王国騎士団が成体覇竜に恐れをなし、逃げ出し、戻ってきていたのだ。


「お前には仲間がいるな?ワルーイ王国騎士団を掌握しろ!!入り込まれた魔物退治と国民の救出だ!!」


「お任せ下さい!」


ゲイルは任務を請け負い、駆け出す。


「さぁ、指示をくれワン!!協力するワン!!」


シバケンがフンスッと気合いを入れる。


「オレたちは獣の魔物行進(スタンピード)のボスを倒す!!アルテミシアのことは後回しだ!!」


ジランドたちは獣の魔物行進(スタンピード)のボスを探すべく、城門へ向かうのであった。


その頃、ワルーイ王国城にいるワルーイ王は何していたのかと言うと・・・。


 ̄ワルーイ王国城・大広間 ̄


社交パーティーによく使われる大広間に公爵や侯爵、伯爵級といった上級貴族が大勢いた。その傍らに豪華な食事と飲み物が置かれていた。


「目の上にたんこぶだったジランドが死刑になって清々しましたな。」


「まったくですな。国民を味方につけて、あれこれうるさかったものですからねぇ。」


「ジランドは平民上がりの貴族だったせいか、由緒ある我々の貴族になめた態度だったものよ。」


ジランドに対しての罵詈雑言。そして話題が魔女アルテミシアに移る。


「ジランドの妻で魔女と呼ばれたアルテミシアもあれはあれで困った女性だった。」


「貴族たる淑女ではなかった。テーブルマナーから社交ダンスまでひどかった。」


「Sランク冒険者までなったはいいが、数々の戦いの影響で子供が出来なくなった。ジランドはそのような女性を妻に迎えるのか理解できなかったよ、ははは。」


悪意ある会話が続き、そして仕官が声を上げる。


「静粛に!ワルーイ王様、御来臨である!!」


ワルーイ王の登場を予告すると上級貴族たちの雑談を止め、横一列に並ぶ。


でっぷり肥えたワルーイ王がニヒル顔しながら、登場し、ドカッと玉座に座る。上級貴族たちがビシッと頭を下げ、敬礼した。


ワルーイ王は気持ち良さそうにうむうむと唸る。上級貴族たちを下に見る光景が好きのようだ。


「皆、よく集まったじゃも!!頭を上げるがいいじゃも~。」


声からしても機嫌が良さそうであった。


「この度は憎きジランドが死刑になったことを祝杯に上げようじゃないかじゃも~。」


「ははぁ!!」


「アルテミシアの方もおいおい死刑にかけてやるじゃ。」


「発言をお許しください!」


「許すじゃ~。何じゃ。」


「ドラゴンを従えてると世迷い言なる噂をお聞きになりましたが・・・。」


「事実だそうじゃも。じゃが、サイズは小さいと聞いておるじゃ。全戦力を投入すれば捕縛可能と聞いてるじゃも。それは余のペットにするじゃも~。」


※ワルーイ王には約5M級のドラゴンの報告が上がっていたのだが、さらに巨大化していることはまだ知らないのであった。


上級貴族たちがざわざわ騒ぐ。仕官が「静粛に!!」と静めさせた。


「ともあれ宴を用意した。一緒に騒ごうではないかじゃも~。」


ワルーイ王と上級貴族たちがワインが入ったグラスを手にし、掲げる。ワルーイ王自らが音頭を取る。


「ワルーイ王国の未来に輝かなる繁栄を祝うじゃも~。」


その場にいた全員がグラスを高々に上げようとした。同時にドガァァ!!と祝砲とも言えない陳腐な音と共に壁をぶち破って、巨大な物体が現れる。


「な、なんじゃも!?」


その場にいた全員がその物体に注目する。銀色の輝かなるドラゴン。


「「「ドラゴンーーーーー!?」」」


それは成体覇竜であった。


「お前がそう言うとギャグにしか聞こえん。」


その側に魔女アルテミシアが溜め息まじりに言った。


魔女アルテミシアと成体覇竜の登場に理解が追い付かないのか、その場にいた全員が硬直する。


「ちょうど手間が省ける。ワルーイ王及び上級貴族たちが雁首揃えてここにいるのだからな。」


「ア、アルテミシアじゃもかっ?!まさかモブは失敗したじゃもかっ!」


ワルーイ王が青ざめる。


魔女アルテミシアはその場を見回す。豪華な食事と飲み物があることから、祝宴を開こうとしたと判断した。


「ふむ。祝いの場を邪魔してしまったか。それは申し訳ないことした。」


魔女アルテミシアは手近にグラスを取る。


「ようこそお集まり頂きありがとうございます。ワルーイ王国の没落を祝って乾杯!!」


魔女アルテミシアは意気揚々にグラスを上げた。しかし、その場にいた全員が反応しない。


「なんだ。付き合い悪いな。知らぬ間柄ではないだろう?」


やれやれとワイン入りグラスを口にする。そこでやっと上級貴族たちが怒りの声を発する。


「ふ、ふざけるな!」


「このような事を起こして、無事に帰れると思いかっ!?」


「私たちが斬って捨ててくれるっ!!」


腕に覚えのある騎士の伯爵貴族たちが前に出る。ワルーイ王に良いところを見せようというのだろう。


『さぁ、ギンちゃん。やれ!』


魔女アルテミシアが格好良く指差した。しかし、反応がない。


「・・・?」


振り向くと成体覇竜は豪華な食事に目を奪われ、むしゃぶっていた。


大鍋のミストロフーネなどスープをビールごとく一気に飲み、並べていたデカい鳥の丸焼きである七面鳥のようなものをパクリと口にする。


フルーツを潤沢にちりばめられ、高くそびえる10段ケーキやシュークリームの集まり固まったクロカンブッシュを一口でパクリ。


『美味いなぁ~。』


心なしか成体覇竜は目的を忘れてるようである。


『・・・ギンちゃん。恥をかかせるな。』


魔女アルテミシアが格好良く指差すポーズに恥を覚え、ペチンと成体覇竜の尻尾を叩く。


『あ、話は終わった?』


『あぁ。そいつらを片付けろ。』


成体覇竜が上級貴族たちの前に立ちはだかる。


「ギャオォォォッ!(さぁ、やるか!!)」


「うっ・・・。」


腕に覚えのある騎士伯爵貴族たちがただの叫びに気圧され、ビビる。


「や、やれ!やるじゃもー!!」


ワルーイ王の号令に破れ被れに突っ込む。


「ドラゴンクロー!!」


成体覇竜の攻撃にあっという間に騎士伯爵貴族たちはバタバタ倒れた。そして次々とボリボリ成体覇竜に食われていく。


その様子に恐怖を感じ、逃げ出す文官系の公爵などの上級貴族たちを魔女アルテミシアが魔法で屠る。


虐殺同然の光景に玉座に座っていたワルーイ王が腰砕けながら逃げ出そうとする。


「ひ、ひぃぃぃー!!であえーであえー!!」


ワルーイ王の前に急遽集まった騎士たち。どうやらラーセイル近衛総大将の部下である七人の近衛騎士のようだ。


「我らは王直属の近衛騎士!!ワルーイ王国最強の戦力!!」


成体覇竜に立ちはだかる。


「ワルーイ王様、お下がりください!蛮賊なぞ蹴散らしてみせましょう!!」


「ふはは、やれ、やるじゃもぉー!!」


七人の近衛騎士と成体覇竜が戦闘に入る。成体覇竜が爪を伸ばし、大きく腕を振るう。


「ドラゴンクロー!!」


重楯(タンク)!!」


壁役と思われる近衛騎士が大きな楯を身構えて受け止めようとする。


「ぐはぁっ!!」


一撃で倒れたが、一時的に成体覇竜の隙を作った。攻撃役の近衛騎士が三人突っ込む。


「剣技・五月雨斬り!!」


「槍技・串刺し!!」


「大斧技・斬鉄斧!!」


成体覇竜は体全体を勢いよく回し、尻尾を振るう。


「ドラゴンテイル!!」


攻撃役の近衛騎士三人が一斉に吹き飛ばされ、倒れた。だが、本命がいた。後衛の近衛魔法使い三人が力を合わせるかのように魔法を唱える。


成体覇竜に水と空気が割合で2対1で入った球体が包まれたかと思いきや、何やら気体がうっすらと見える。


「・・・?」


「合体爆裂魔法・水素爆発!!」


ボーンッと成体覇竜が爆発に包み込まれる。


「ギャァァァッ!!」


白煙に紛れて成体覇竜の姿が見えなくなる。


「風魔法と水魔法と火魔法を合わさった最強の合体魔法を受けて生きてる魔物はいないっ!!」


三人の近衛魔法使いが勝ち誇る。


「ギンちゃんをそこらへんの魔物と一緒にしないでもらおう。」


魔女アルテミシアがそう言うと同時に白煙から成体覇竜の目が光った。


「ギャオオッ(いてぇじゃねぇか!!)」


「ば、馬鹿な・・・。」


成体覇竜が近衛魔法使い三人を蹴散らした。これで近衛騎士七人を倒し、ボリボリ食い始める。


魔女アルテミシアは腰が砕けているワルーイ王に近づく。


「ひ・・・。」


「さて、ワルーイ王よ。年貢の納め時が来た。」


魔女アルテミシアが冷酷な表情で杖を構えるのだった・・・。

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