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第百四十六話覇竜の回想⑫ギンちゃん(覇竜)の成長

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

 ̄南の山奥の寂れたコテージの外 ̄


「ギンちゃんの魔力の巡りを直したら、急速に成長しているな・・・。」


魔女アルテミシアが腕を組み、大きな物体に目を向ける。そこは幼成体の小さな覇竜ではなかった。尻尾含めて全長5Mの小型ドラゴンになっていた。


『いててて・・・。』


小型覇竜は成長痛かのように身体の節々が痛むようだ。


『約百年の成長が一気に来てるんだろう。まだ成長するはず。』


小型覇竜は成長によって、内からあふれる力を感じ、興奮する。


『ちょっと強いやつとやって来る。』


小型覇竜が力試しにと出掛けようとする。


『構わんが、今は人間を襲うのはやめてくれ。』


『ちっ、ジランドとか言う男とやり合おうと思ったのに・・・。』


『いずれやらせるさ。』


『・・・』


小型覇竜は魔女アルテミシアの企みに何か気付いてるような表情する。


『食糧として魔物を狩ってくれれば、調理してやろう。』


『今は言うことを聞いてやろう。』


小型覇竜はルンルン♪と翼を広げ、飛び立つ。


「まだまだ子供だな・・・。」


現金な小型覇竜にふっと笑う魔女アルテミシアであった。



 ̄場面転換・エルフの里 ̄


ジランドたちがひときわ太い大樹の扉を開くと怪我人多数のエルフ族と妖精族が避難していた。


「ビラ!何故、人族を連れてきた!?友好関係にある他のエルフの里に助けを求めたのではなかったのか!?」


エルフ族の女の一人が代表として前に出た。


「しょーがないじゃん。他のエルフの里は遠いし。」


ビラが文句を言うエルフ族女代表と話する。


「よりによって人族や獣人族・・・争い事を好む蛮族の助けなどいらぬっ!!」


「この人たちは信用できるよ!」


少々の言い合いが始まる。ジランドがビラの応援をすべく、キウルとシバケンに小突く。キウルとシバケンがジランドの思考を理解し、お互いの肩を組む。


「僕たちは仲良しですよ。」


「そうだワン。」


それを見たキウルの部下も獣人族グループも同じようにアピールすべく肩を組む。


「仲良し~(何故、俺たちが獣人族と肩を組まねばいかんのだ・・・。)」


「そうだガォ~(ワルーイ王国から来た人間は信用できねぇ・・・。)」


それぞれの思惑が交差し、ひきつった笑みを浮かべるのだった。


表面上ではあるが、人族と獣人族との仲良さが伝わったのか、エルフ族と妖精族にざわめきが起きる。


「・・・。」


エルフ族の女代表が疑心暗鬼になる。


「それにこの人は植物系の魔物行進(スタンピード)を全滅させて村を守りきったよ。」


ビラがジランドの肩にちょこんと乗る。


「なんと・・・我々の植物を操る独自のエルフ魔法を使わずにか?」


「そーそー。」


「そこまでの実力者なら助けを・・・いや、人族だし・・・。」


エルフ族の女代表が救援を求めたいが、種族のことでブレーキをかけてるようだ。そこにジランドが口を出す。


「種族のいがみ合いは横に置いて、怪我人の治療を優先すべきだと思わないか?」


「む・・・それもそうだな・・・。」


「オレはジランド。」


「私はゼシリア。」


ゼシリアは長耳の金髪ロングでまつげが長く、見目麗しい容姿であり、キウルが見とれる。


「キウル。鼻の下が伸びてるぞ。」


ジランドが指摘する。


「はっ、違いますよ!!」


キウルが顔を真っ赤にする。そこにビラが衝撃事実を告げる。


「ゼシリアは90歳だけど?」


「きゅ・・・90歳・・・?」


キウルがしわくちゃのババアを連想し、ショックを受ける。


「ビラ!年齢をバラすな!」


ゼシリアが怒る。


「確かエルフ族は長寿だったな。見た目と実際の年齢は違うってことか。」


ジランドがキウルに励ますようにポンッと肩に手を置く。


「えぇい!失礼な奴らだ!!これだから人族は嫌いなんだ!!」


ゼシリアがこめかみをひきつらせた。このやり取りでこの場が和んだかのような雰囲気を醸し出した。


キウルの部隊とシバケンの獣人族グループが怪我人の手当てを行ってる間、ジランドとゼシリアが今後の行動の確認を始める。ビラとキウルとシバケンも加わる。


「ひとまずオレの村に来てくれ。そこなら安全だ。」


「だが、私たちは獣系の魔物行進(スタンピード)との戦いで匂いをマーキングされているだろう。この里を出れば追いかけてくる可能性がある。」


「ビラの透明魔法(インビジブル)はどうだ?」


ビラが首を横に振る。


「少人数ならともかくこんな大勢にかける魔力はないよ。」


「ふむ・・・。」


ジランドがどうしたものかと唸る。獣人族のシバケンが提案する。


「獣人族の数人に遠吠えによる高周波の声が出せるワン。それで獣系の魔物に誤認させることは可能だワン。バレるまでの時間稼ぎになるワン。」


「お、それでいくか。怪我人で歩けない者は?」


ジランドがゼシリアに振る。


「土魔法の使えるエルフ族の数人が歩けない怪我人たちをゴーレムで運ぼう。」


ゼシリアに続いてキウルが発言する。


「小官の部隊は周囲の護衛に徹しますね。」


「よし!準備が出来次第、迷いの樹海を抜けるぞ!!」


ジランドたちは行動指針をまとめ、エルフの里を出た。


 ̄迷いの樹海 ̄


「ワォォォーン(こっちにはいないぞー。)」


獣人族の遠吠えでどこかにいるであろう獣系の魔物行進(スタンピード)を誤認させる。


怪我人のエルフ族と妖精族の周囲にキウルの部隊と獣人族グループが囲む。


そしてジランドがビラの誘導により、一番前に歩く。


獣人族の遠吠えの効果から、獣系の魔物に出会わず、迷いの樹海を抜ける手前まで来た。


「あともうすぐだ・・・ん!?」


ドドドドッと地響きが鳴る。多数の足音だ。


「バレたワン!」


後方で熊と狼の魔物が数十体追いかけてきた。


「どうしますか!?」


キウルがジランドに訊く。


「こんな樹海で守りながら戦うのは不利だ!ここを抜けるのが先だ!」


ジランドたちが迷いの森を抜けようと駆け出す。だが、それよりもあっちの方が速かった。


「ちっ!先に行け!」


ジランドが残り、熊と狼の魔物たちを食い止めようと大剣を振りかぶる瞬間、どことなく風が吹く。


 ̄場面転換 ̄


ジランドたちのいる迷いの森の上空付近に小型覇竜が飛んでいた。


『熊と狼の魔物発見!ただ数が多いな・・・。』


小型覇竜は自らの力を試さんとばかりにブレス系で最強の「ドラゴンブレス」を使おうとする。


小型覇竜が口にエネルギー収束を試みる。だが、上手く行かなかった。


『まだ力が足りないのか。仕方がないな。』


小型覇竜は代わりに大きく息を吸い込んだ。肺活量が大幅に上がっているようだ。


「ブレス!!」


先日はつむじ風程度の威力が今は強力な竜巻状の風となり、熊と狼の魔物たちを襲う。


 ̄場面転換 ̄


ジランドが大剣を振りかぶる瞬間、竜巻状の風が周囲の木々をなぎ払い、同時に数十体の熊と狼の魔物たちが駆逐された。


「こ、これは!?」


ジランドたちが驚きのあまりに上空を見やると銀色の小型覇竜が飛んでいた。


「今のはあのドラゴンが?攻撃を見るにBランク魔物以上と同等の力があるのでは?!私たちを標的にされたらまずいぞ!!」


セシリアが焦る。


「(あの銀色の体表は・・・。)」


ジランドがハッと気付く。


「(アルテミシアのところのドラゴン!?短期間で成長してやがる!!)」


ジランドは小型覇竜の成長に脅威を感じる。


小型覇竜によって駆逐された魔物たちの中に一体が起き上がった。熊の魔物だ。


「シャァァァァッ!!」


Bランク魔物

千手観音熊


腕を自在に何本も生やすことが出来る熊。


その千手観音熊が上空にいる小型覇竜を威嚇する。


『上等だ!!』


小型覇竜が受けて立つと言わんばかりに低空飛行し、突進する。


千手観音熊は腕を生やし、パワー増強し、小型覇竜の低空飛行の突進を受け止める。周囲に衝突音が響き渡る。


「今のうちに逃げましょう!!」


キウルが皆に呼び掛ける。


「・・・・。」


ジランドが小型覇竜を目の敵にする。その様子にキウルが声をかける。


「ジランドさん、どうしましたか!?」


「オレはあのドラゴンに用がある。お前たちは村に先に行ってろ。」


「・・・わかりました!」


キウルたちが殿(しんがり)を務め、怪我人のエルフ族と妖精族を守りながら逃げる。


小型覇竜は千手観音熊との激しい戦いの末、見事に打ち倒した。


その様子を見たジランドは小型覇竜を世界最強の魔竜や暴竜と肩を並べるポテンシャルがあると感じた。


「やはり手の負える今のうちに倒さなくちゃならねぇ・・・。」


ジランドが小型覇竜に向けて敵意を見せ、大剣を構えるのだった・・・。

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