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第百四十三話覇竜の回想⑧ワルーイ王国

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

植物系の魔物行進(スタンピード)を倒したジランドたちは村人総出で片付けを行っていた。


木の魔物のトレントは防壁の修復素材に。


茸の魔物のキノコッスは食用素材に。


様々な毒を持つ魔物のモルボルは毒に対する抗体素材に。


その他の魔物も使える素材を抜き出していた。


だが、魔物行進(スタンピード)の残骸が多く時間がかかっていた。


村人たちがせっせと作業する。


「ジランドさんと魔女アルテミシアはすごいもんだな。」


「二人ともこの村の出身だが、小さい頃から目立つ存在だったしな。」


「あの二人がいれば村は安泰ってもんだな。一時期はワルーイ王国で働いていたが、幻滅して帰ってきたようだしな。」


「ワルーイ王国か。税も農作物もたくさん取って行きやがる。」


ジランドのいる村はワルーイ王国の領土の一部である。


「これで多くの素材が手に入った。多くのまとまった金や食糧交換が出来るだろう。今年は楽に過ごせそうだ。」


そんな会話していると物陰がチラッと動く。


「・・・ん?何か動いたような?」


村人が物陰のほうを見やるが、そこは切り株だった。


「気のせいか。」


村人たちは改めて作業を続ける。切り株が村人の隙をつき、こそこそ動く。


「(死んダフリシテ逃走ダ・・・。)」


なんと人面樹は生きていた。木は千年以上生きることがある。そのAランク魔物の人面樹となれば、ドラゴンをしのぐ生命力があるようだ。


「(覚えテロ・・・!!)」


切り株の人面樹は恨めしげに逃走していったのだった。


 ̄ジランドのいる村 ̄


「いたたた・・・。」


ジランドは魔物行進(スタンピード)との交戦により、身体を痛めたようだ。老人ごとくよろよろしていた。


「大丈夫か?」


魔女アルテミシアがいたずらっぽくポンっと軽く叩く。ジランドは反射的に飛び上がる。


「いたっ!やめろ!!そもそも大半のダメージはお前が原因だ!!」


「はっはっはっ。」


「まったく・・・。ところでドラゴンは大人しくしているのか?」


「あっちで寝ているよ。」


小さき覇竜が欠伸をかきながら寝ている姿があった。


「本当に大人しくしているんだな・・・。」


「今はな。」


ジランドが腕を組み、真面目な表情する。


「お前は何を考えているんだ?本気でドラゴンを従わせようっていうのか?」


「・・・確かに利用すべく目的はある。」


魔女アルテミシアは小さき覇竜を使って何かを企てているようだ。


「言うなればお前を英雄に仕立て上げるための手段だな。」


ジランドはその言葉にハッと気付く。


「・・・まさかワルーイ王国にクーデターでも起こそうって言うんじゃねえだろうな?!」


アルテミシアは黙ったまま答えない。するとジランドが憤る。


「馬鹿いえ!俺は腐っても騎士の誇りは捨てちゃいねぇ!国民を守るために存在する!!」


「だが、ワルーイ王国の圧政には辟易しているだろう?現にワルーイ王国の騎士団長をやめたじゃないか?」


「だとしてもお前がやろうとしているのは確実に何も関係ない国民に危害を加えようって言うんだろ!!」


「犠牲なくして国は変えられん。」


ジランドと魔女アルテミシアが言い争いになる。ワルーイ国の圧政に関連し、小さき覇竜を利用するようだ。


そこに村人がやってくる。


「ジランドさん!ちょっと困ったことになりまして・・・。来ていただけますか?」


「・・・あぁ、わかった。」


ジランドは魔女アルテミシアに向き直る。


「いいか!クーデターを起こして、ワルーイ王国の王を取ったとしても国民がついてこなきゃ意味がねぇんだ!!無駄に血を流すだけだ!!馬鹿なことは考えるな!!」


ジランドが魔女アルテミシアに釘を差し、場を離れる。


「・・・甘いな。」


「(魔物行進(スタンピード)を倒した村をワルーイ王国は脅威に感じ、あらゆる手を使ってくるだろう。)」


魔女アルテミシアは村の先行く未来をもの憂いに感じていた。


ジランドが村の開閉式門扉に到着すると追い返したはずの避難民が多数いた。


「こ、これはどうしたんだ?!」


ジランドが戸惑う。村人が耳打ちする。


「どうやらワルーイ王国が避難民の受け入れを拒否されたようで。」


魔物行進(スタンピード)によって滅ぼされた避難民が行き場を無くし、再び訪れたようだ。


「遠巻きながら魔物行進(スタンピード)を全滅させる様子を見ていた。この村なら安心して暮らせると思った・・・。お願いだ!!」


避難民が懇願する。


「いや、しかし・・・。」


避難民のくたびれた表情にジランドは動揺する。助けたいのはやまやまだが、脳裏に村に住む人々が浮かび、目の前にいる避難民が自分たちの生活を脅かす可能性がある。


そこに老人の村長がやってくる。


「ジランド。儂らのことを考えてるなら、有り難いがのぅ。お前さんの本心が聞きたい。」


「村長のじいさん。」


「お前さんやアルテミシアがいなければ、この村なぞ滅ぼされていたじゃろう。」


「・・・。」


「だからええんじゃ。お前は騎士じゃろう?困ってる人を助けるのが騎士の務めではなかったかのぅ?」


「ちっ、わかったよ!!」


ジランドが避難民に向ける。


「面倒見てやるが、文句言わせんぞ!」


声高に叫ぶと避難民の歓声が上がる。


「住民登録するための帳簿作成するから並べ。それから避難民のまとめるリーダーを決めろ。」


ジランドが避難民に手順を言い渡し、あとの処理を村人たちに任せる。


「ほっほっ、次の村長は君に安心して任せることが出来る。」


「村長なんてガラじゃねぇよ。長生きしろよ。じいさん。」


「この村で長生きしただけで村長になってしまっただけじゃ。」


老人の村長はほっほっと笑って去っていった。


「やれやれ。避難民の区画整理に村の拡張も必要か。やることは山ほどあるな。」


ジランドは避難民受け入れの手配に奔走するのだった・・・。


 ̄ワルーイ王国 ̄


ワルーイ王国の城下町はスラムがいくつかあり、窃盗、売春、薬物、暴力など犯罪オンパレードなことが当たり前であった。


かつてジランドは騎士に憧れ、ワルーイ王国の騎士団に入るも、理想と現実のギャップに苦しむ。だが、自らの騎士たる精神を貫き、いくつかのスラムを改善していった。


ジランドは様々な功績を上げ、魔女アルテミシアは冒険者として実績を重ねる。時としては二人で組み、ワルーイ王国の防衛に当たることもあった。


年月が流れるとジランドは騎士貴族の男爵家の叙爵と同時にワルーイ王国騎士団長に就任した。


魔女アルテミシアはAランク冒険者になっていた。


その頃、城下町は活性化し、国民に慕われていた。やがてジランドを王に!と声がちらほら出始めた。


王国をまとめるワルーイ王は自らの立場を脅かすのでは?と考え、ジランドと魔女アルテミシアに度重なる無茶振りの仕事を与えた。


だが、ことごとくクリアされ、二人の立場は上がり、ジランドは騎士貴族の伯爵に。魔女アルテミシアはSランク冒険者になった。


ワルーイ王は最終的に魔竜、暴竜討伐と難題を課し、ジランドたちはようやく匙を投げ、立場を放り出して、ワルーイ国を後にしたのだ。


するとジランドたちがいなくなり、城下町は一気に治安が悪くなり、また逆戻りしたのだった。


 ̄謁見の間 ̄


玉座にでっぷり肥えたワルーイ王が座っていた。貴金属のアクセサリーをあちこち身に付け、まさに悪政王と言える存在。


その前に畏まって座る金属鎧を着た好青年が発言する。


「て、定例報告します。西の方面でいくつかの村を滅ぼした魔物行進(スタンピード)の件ですが、全滅したと一報が入りました。」


「それはそれは重畳、重畳じゃろ。悩まされた問題が解決できたじゃろ。避難民がうるさかったからのぅ。にして、どう全滅させたというのであろ?」


「小官にはわかりかねますが、行商人の話によれば一介の村が魔物行進(スタンピード)全滅させたようです。」


ワルーイ王がピクリとする。


「一介の村・・・どこのじゃろ?」


好青年がごくりっ・・・と喉を鳴らす。


「恐れながら・・・ジランドのところでございます。」


「ジ、ジランドぉぉぉー!?」


ワルーイ王が青ざめ、悪魔を見るがごとく叫んだ。


「ジランドぉぉぉ!!追い出したはずなのに何故出てくるぅぅぅ!?」


暴れるワルーイ王。


「落ち着きなさい。」


王直属の近衛騎士総大将のラーセイルが諌める。


ラーセイルは白髪にモミアゲがつき、立派な家紋入りの金属鎧を着込み、王直属の近衛騎士だけあってジランドと並ぶほどの手練れ。ワルーイ王に代わって政策を取り仕切る。


動揺するワルーイ王の代わりにラーセイルが問答する。


「ジランドがいたとしても・・・一介の村が魔物行進(スタンピード)に対抗出来るわけがないだろう?」


「は・・・。にわかに信じられませんが、ドラゴンを使ったとの情報が。」


「ドラゴンンンンー!?ジランドは国家転覆を企てておるなぁぁぁー?!」


またもワルーイ王が暴れる。


「・・・調査しなさい。結果次第では国家転覆の疑いをかけねばなりませぬな。」


「ハッ・・・。」


ラーセイルが好青年に命じる。


「調査の必要ないじゃろ!あのジランドだ!?追い出したことを根に持ってるじゃろ!!」


ラーセイルがワルーイ王にキッと睨み付けると「じ、じゃも・・・。」と黙り込む。


「小官はこれにて失礼します。」


好青年が謁見の間を出ると激しく息を吐いた。


「(ふぅ・・・。緊張したぁぁぁ。ワルーイ王にとってジランドは地雷だからなぁ。ジランドを殺せとか無茶振りされるかと思った・・・。)」


好青年は騎士の詰所に戻るとぐーたらしている部下たちが目に入る。


「お帰りっす。これから酒場いきませんかね。」


「立ち回りでもいいから仕事しろ。」


「面倒事は嫌っす~。」


「ちっ・・・。」


好青年は騎士団長のネームプレートがついてる部屋に入って、頭を抱える。


「(なんで20歳の僕が騎士団長をやらなきゃいけないんだ!?なめられるし、おかしいだろ!!)」


不幸な顔をする好青年はキウル。弱冠20歳で腐敗した騎士団の騎士団長を務めている。騎士貴族男爵の苦労人。


「(あー!ジランドさんがいた頃は本当に安心安全に暮らせて楽しかったなぁ・・・。)」


キウルは四つん這いに涙を流す。


「(ジランドさん!調査の名目で会いに行きますからぁぁぁぁぁー!!)」


キウルは直ちに調査隊を編成し、赴くのだった・・・。

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