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第百八話 セイクリッド王国滅亡

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

◇◇セイクリッド王国から数キロ地点◇◇


 サムライとセバスチャンが身を潜み、セイクリッド王国を偵察する。


 セイクリッド王国は創造神フォルトゥナが降り立った地に作られ、創造神フォルトゥナを信仰し、多くの人が集まる。ジランド王国に引けを取らず、栄えて活気があった。


 だが、現在のセイクリッド王国は城下町のあちこちに火の手が上がり、セイクリッド王国城は無惨に崩れていた。まさに滅亡したと言っていい惨状であった。


「くっ・・・我が王国が・・・。」


 その惨状を目にしたサムライが四つん這いに悔しがった。セイクリッド王国に時折、魔物の姿がちらほら見えた。どれも人間が融合していた。そして多数の人間の死体が転がっているのが確認できた。


「魔物の玉をばらまいたようですね。」


 セバスチャンが片目の望遠鏡を覗き込む。心なしか焦りが見られる。


「Aランク以上の魔物が多く見られます。これはまずいですね・・・。」


 セイクリッド王国は犯罪を犯す者に対して奴隷制度を採用していた。奴隷は劣悪な環境に身を置かれ、心に闇を増大させる奴隷が多くいた。それが魔物の玉で魔物になるのにうってつけだということだ。闇が深ければ深いほど強い魔物に変身出来る。


「多くのセイクリッド国民が死んだ。・・・これが神王ヴァシュロン様の仕業だと信じたくありませぬ!!」


 サムライが涙を流す。


「・・・様子を見る限り、邪悪竜ヤマタノオロチはまだ降臨されてませんね。サムライ。取り急ぎ、報告に戻りなさい。私はここで動向を見張ります。」


「・・・了解した。空間魔法(上級)・瞬間移動!!」


 セバスチャンがこの場に残り、サムライはジランド王国に戻っていった。


◇◇ジランド王国・城下町◇◇


 世界規模の格闘大会は中止となり、城下町は訪れるであろう戦争に向けて慌ただしく奔走する多数のジランド国民たち。


「商売上がったりよぉ~。途中までは他国の観光客メインで金稼げてたのにぃ。」


 クレアとエンカが周囲の慌てふためく中、並び歩く。クレアたちは所有してる一帯の娼館を閉店させ、帰途についていた。


「また戦争が始まるかもしれない噂があちこちありますねー。相手はセイクリッド王国。それも強い魔物が何十体もいるらしいという話。」


「まったく娼館の維持費で金が飛ぶんだから迷惑な話ね・・・。」


 経営者として板がついてきたクレアが不機嫌そうな表情する。


「どうします?私たちも戦いに出ます?」


「・・・ジランド王国に危機が及べば出ることもやぶさかではないわぁ。」


 クレアが言葉に含みを持たせ、リュウ邸宅に帰った。


◇◇ジランド王国・孤児院◇◇


 ドラゴンの湯の店主・ガイアスが客足がばったりと途絶え、その違和感に首を傾げながら、早めの閉店の準備に勤しむ。のれんを取り下げようと外に出るとリリスが駆けつける。


「大変です!また戦争が起こるかもしれないらしいんです!!」


「・・・なに?」


「ジランド王国は二回の戦争で疲弊しているので最悪の結末を迎える可能性が・・・。」


「(人間はやたらに争いを好むな・・・。)」


 ガイアスが思案してるとリリスが先行きに対して不安げな表情する。


「・・・。」


 無言になるガイアスにスイリューが尻尾で頭をはたく。そしてドラゴン語でギャァギャァめわく。


『気の利いたことを言いなよ。』


『む・・・。』


 我が子にせっつかれてガイアスがリリスに振り向く。


リリス、安心しろ。オレが守ってやる。」


「え・・・。」


 ガイアスにある意味、意味深な言葉にリリスが顔を赤らめる。すると孤児院の子供達がピューピューといたずらっぽく口笛を吹いた。


「こらー!!」


 リリスが拳を高々に上げる。


「やべ!逃げろー!!」


 リリスが子供達を追いかける。その微笑ましい光景にふっとするガイアス。



◇◇リュウ邸宅◇◇


 リュウ邸宅には妖精たちが飛び回っていた。妖精の里から移住した多くの妖精たちが住んでいたのだ。


「賑やかです。」


 鳥人族のメイドのカミュがせっせと家事に勤しんでいた。


 氷の妖精女王シヴァはイフリートとシルフ、ラムウといった妖精族代表格で会議していた。


「戦争だってよ!燃えるじゃねぇか?!」


 火の妖精イフリートがやってやると燃え盛る勢いであった。


「強力な魔物がこちらに来れば、どのみち戦わざるを得ない可能性がある。」


 風の妖精シルフが意見する。


「儂は億劫じゃよ。隠れるのがいいじゃろうて。」


 雷の妖精爺ラムウが面倒そうに腰をトントン叩く。


「・・・。」


 妖精族を取りまとめる氷の妖精女王シヴァは頭を痛めていた。


「私たち妖精族は非力な種族。それゆえにジランド王国に保護を求めました。だけど、戦争となれば、保護もそれどころではなくなります。個人個人が守る力が必要になります。」


 火の妖精イフリートがワクワクしながら、次の言葉を待つ。


「・・・私たちはその時が来るまで、ここでじっとしていることです。いいですね。特にイフリート。出しゃばらないように。妖精女王の私の言葉は絶対です。」


「えぇ!?」


「氷漬けにしますか?」


「わかったわかった!じっとしているよ!!」


 妖精女王シヴァは疑いの目で火の妖精イフリートを見る。


「それにここは安心安全です。最強のお方が三人もいるのですから。」


「え?どういう意味だ?」


「知らなくていいこともあります。私とて知りたくありませんでした。」


 妖精女王シヴァが冷や汗をかく。


「あら?呼んだかしら?」


 ちょうど帰宅したクレアとエンカが登場する。その背後にガイアスとスイリューがいた。


「ビクッ、クレア様!」


 イフリートに対して強気に出ていた妖精女王シヴァがクレアたちの登場に畏れおおのく表情を見せた。


「んふふ〜、ちっちゃくて可愛いわねぇ。」


 エンカが涎垂らして、「食べたいです!」と不穏な言葉を言い放った。


「食べないでください・・・。」


「ちょっとだけでいいから?味わうだけでいいから!舐めるだけでも・・・。」


 エンカは獲物を見るかのようにドラゴンとしての本性が垣間見えていた。


「だめよぉ〜。」


 クレアに止められ、エンカは渋々引き下がった。ただエンカの目を見るからに諦めていないような気がする。


「お邪魔したわねぇ〜。」


 二人が去ると続いてガイアスとスイリューがちらっと見やる。


「何か困ったら言え。守ってやらんこともない。」


「は、はい。ありがとうございます。」


 妖精女王シヴァはヘコヘコと頭を下げる。


 ガイアスとスイリューも去った。


「はあぁぁぁ〜。」


 妖精女王シヴァが安堵から思いきり息を吐いた。


「ど、どうしたんだ?!」


 火の妖精イフリートがシヴァの尋常じゃない様子に思わず心配した。


「(ランドルフ王様、重大なことをさらっと言わないでください。)」


 妖精族をまとめる妖精女王の立場として、ランドルフ王様の謁見し、重大なことを知らされた。


「(リュウ様が覇竜様、クレア様が魔竜様、ガイアス様が暴竜様などと・・・文字通り、竜の家ではありませんかぁぁぁぁ!!)」


 妖精女王シヴァはイフリート、シルフ、ラムウにこのことを言えずに頭を抱えたのであった。


「(リーゼさん、ここを紹介したのはこのことを知っていたからなのかしら?)」


 そんなことを思いながら、戦争が起こるかもしれない時が来るのを待つのであった。



◇◇ジランド王国・騎士作戦室◇◇


 ランドルフ王、神王代理ミカエルを始め、腕に覚えのある猛者が集っていた。その中にリュウたちも混じっていた。


「拙者の報告は以上になります。」


 サムライがセイクリッド王国の惨状を報告し、神王代理ミカエルとシャルロッテ姫が青ざめる。


「神王代理ミカエル、心中察する。だが、緊急事態だ。情報交換しよう。」


 ランドルフ王が神王代理ミカエルを労り、邪悪竜ヤマタノオロチについて訊いた。


 まず神竜は創造神フォルトゥナ様の御遣いのドラゴン。心穏やかで戦うことを好まない。光魔法とセイクリッド王国の代々伝わる王族の秘術で降臨される。


 それに対する邪悪竜ヤマタノオロチは破壊と殺戮を尽くすドラゴン。闇魔法とセイクリッド王国の王族の秘術、そして死者の多数の血により降臨される。


 神竜、または邪悪竜ヤマタノオロチが顕現されたら、一方は出てこれなくなる。表裏一体のドラゴンのようだ。


「邪悪竜ヤマタノオロチが顕現されたら、世界は滅ぶという認識で良いか?」


 ランドルフ王が確認すると神王代理ミカエルが「・・・はい。」と頷いた。


「だが、まだ邪悪竜ヤマタノオロチは顕現されていない。その前に叩きたいところだが・・・。」


 ランドルフ王がラインゴッド騎士団長にチラッと見る。


「無茶言わないでください。戦争続きで人手が足らないんですよ。Aランク以上の魔物が何十体もセイクリッド王国にのさばっているというじゃないですか。攻めるのは無謀です。それに我が国は迎え撃つにしても戦えるかどうかといった状況なんです。」


 ラインゴッド騎士団長がセイクリッド王国に向けて、戦力を出すことに否定的だった。


「こっちには光魔法持ちのリュウがいる。邪悪竜ヤマタノオロチより先に神竜を降臨させればいいじゃねぇの?」


 カインズが疑問をぶつけた。


「セイクリッド王国の大聖堂の召喚の間でないと降臨出来ないんです。」


 神王代理ミカエルが首を横に振った。シャルロッテ姫が「あ、あの!」と振り絞るかのような声を出した。


「お父様が・・・神王ヴァシュロン様がそんなことをするはずがありません。それに闇魔法の使い手はセイクリッド王国にいなかったはずなんです。」


 シャルロッテ姫に対してカインズが答える。


「おそらく闇魔法の使い手であるダークが絡んでるはずだ。推測だが、何かの手段で神王ヴァシュロン様を操り、魔物化の玉をばらまいたとみる。」


「そ、そんな・・・。」


 シャルロッテ姫は心優しき父を思い起こし、涙する。


「・・・私は色々とジランド王国を疑い、探りを入れていたことは詫びます。」


 神王代理ミカエルがランドルフ王に頭を下げる。


「その上で厚かましいお願いですが、神王ヴァシュロン様・・・我が父を止めてください。新型魔導兵器はないにしても国を滅ぼすことが出来る魔導兵器を所有するジランド王国なら出来るはず・・・。」


 ジランド王国の隠されし兵器を持つと勘違いしている神王代理ミカエルに「む、むぅ・・・。」とランドルフ王が難しい表情する。セイクリッド王国に対して誤認させた有りもしない新型魔導兵器にその発端となったリュウが「(・・・すまん。)」と心の中で詫びた。


 皆が何か手がないかあーだこーだ議論し始める。


「(話を聞く限り、邪悪竜ヤマタノオロチを顕現させると面倒そうだな。)」


 話のやり取りを聞いたリュウがうーむと思案してるとリーゼが手を上げる。


「少数精鋭で神王ヴァシュロン様を止め、邪悪竜ヤマタノオロチを降臨させない。これが一番ではないかしら?」


「リーゼお嬢、それは無茶ですぞ!?」


 ラインゴッド騎士団長が焦る。だが、カインズは「・・・出来るのか?」と問う。


「私たちなら出来ます!」


 リーゼが瞬時に返事するとメイファもアイリンもまたついていくと言わんばかりに頷いた。ついでにソル、ポチ、シンもついていく気満々の表情していた。リュウはリーゼの答えに決意したかのような表情した。


 そこにセバスチャンが「空間魔法(上級)・瞬間移動」で現れた。


「申し上げます!セイクリッド王国に動きがありました!Aランク以上の魔物たちがこぞって動き出しました!!」


「・・・方向は?」


 ランドルフ王が嫌な予感がするといった表情しながら、セバスチャンに訊いた。セバスチャンが汗をハンカチで拭う。


「恐れながら・・・ジランド王国方面でございます。」


「!?」


 ランドルフ王が皆に振り向く。


「もう時間はない!各々に出来る限りのことをやってくれ!!」


 その瞬間、その場にいた全員がきたるべき戦いに備え、動いたのであった・・・。


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