第百二話 妖精の里③
人物、状況情報など色々欠けていると思いますが、よろしくお願いします。
◇妖精の里・奥地◇
「なるほど。妖精の秘技・精霊転化か。」
妖精の里の奥地にて、リュウと妖精女王ビラが湖の水面に映るリーゼたちとそれぞれの妖精たちと戦闘の様子を見ていた。
「えっへん。強いでしょ!びっくりしたでしょ!!」
小人サイズの妖精女王ビラが胸を張る。
「確かに新しい妖精族だ。だが、妖精の秘技はお前が開発したのか?」
「うっ・・・。」
妖精女王ビラがごにょごにょする。
「創造神フォルトゥナ様だよ。」
「創造神フォルトゥナ・・・。」
妖精女王ビラはリュウに対して背を向ける。
「昔から妖精族は弱かったからね。そりゃ、身を隠さないと生きていけないほどにね。そしたら、夢で創造神フォルトゥナ様が現れてね。」
『妖精族を創ったはいいが、調整を間違えたようだ。これを授ける。』
「それが妖精の秘技だったんだ。でもね。これを広めたら、力を得たと勘違いする妖精が多く現れてね・・・。宥めるのも一苦労だったんだよ。ほら、イフリート見たでしょ。」
火の妖精イフリートは確かに若く、血気盛んで力を試さずにはいられない性質を持っていた。
「私の想いを理解してくれるシヴァっちが一番強くて助かったけどさぁ。下手したら、他種族に攻撃を仕掛けていたかもしれなかったね。」
「難儀なことだな。」
思いがけず妖精女王ビラの愚痴を聞くリュウであった。
「結局のところ、私たちは創造神フォルトゥナ様の駒・・・おもちゃにすぎない存在かもしれない。」
妖精女王ビラは創造神フォルトゥナに会ったことで、そのような考えに至ったのか。リュウは「相変わらず、人間の考えることはわからん。」と相槌に答えるしかなかった。
妖精女王ビラは再びリュウに向き直る。
「リーゼたちは君の仲間だよね?」
「あぁ、一緒に戦ってきた仲だ。かなり世話になっている。」
「そう。それは本当に仲間と言える存在?本当に本当に?」
小人サイズの妖精女王ビラがリュウの周りを羽ばたき回る。
「ジランドならこう言うでしょ。山奥に引っ込め!人間の世界なぞ魑魅魍魎で幻想だ!とか。」
「・・・・。」
妖精女王ビラの言葉は核心を射たため、黙っていた。それに以前にも幻のジランドと戦った際にも言われたからだ。※第四十三話参照
「・・・じゃ、私が引導を渡してあげるよ。」
妖精女王ビラは間合いを取り、覚悟めいた表情する。
「妖精の秘技・精霊転化!!」
小人サイズから人サイズに大きくなる妖精女王ビラ。
「何を・・・?」
確か妖精女王ビラは寿命間近のはず。妖精の秘技を使うのは体に相当な負担になる。そんなことをしたら・・・。
「昔を覚えているかな。ジランドは人種差別のない平和な王国の夢を目指していた。私もそれに協力した。若気の至りだった部分もあるけれど、晩年のジランドは君との戦いで最後まで自分の信念を貫こうとした。当時の私たちも君もジランドの最期を看取った。」
「あぁ、やつの最期ははっきり覚えているさ。」
「あれから四百年経った。北に神竜、東に魔竜、西に暴竜、南に君・・・覇竜が睨み合っていたことで均衡が取れたのか、紛争のみで平和が保たれていた。だが、君が動いたことで均衡が崩れ、戦争が勃発し、続いている。」
「・・・・。」
「わかる?君がきっかけなんだよ。だから私は思い出したんだよ。昔に『アルテミシア』が余計なことをしなければ、君を倒してたはずなんだよ!!」
「!?」
妖精女王ビラがキッと明確な敵意を見せた。
「私たち妖精族も人間の枠に入るんだよ。妖精族もまた人間の本性が出てしまう。だから、死ぬ前にお前の首を取る!!それが過去の激動の時代を生きた私の最後の責任!!」
妖精女王ビラが首を上げるとそこに太陽が森林の奥地にとこどころ照り輝く。
「最強妖精魔法・ネットファイアウォール!!」
太陽の照り輝く光が収束し、レーザーとなって、リュウを目掛けて落とした。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あまりの不意打ち攻撃にリュウは受けるしかなかった。
妖精女王ビラはふっと微かに笑う。
「・・・?」
その攻撃に威力はないように感じられた。
「なんだ?攻撃ではないな?」
手の込んだ攻撃の割にはなんともなかったのだった。
リュウは体を確かめながら、「何をした?」と訊いた。
妖精女王ビラは力を使ったせいか、体から光粒子が出始めていた。
「創造神フォルトゥナ様に一矢報いたいと思ってね。設定だとかバグだとかクソッタレだよ。」
「???」
「要するに私たちをなんだと思っていやがるんだって話。」
「さっきから何を言って・・・?」
「創造神フォルトゥナ様に会えばわかるよ。きっと君なら戦うだろうね。」
妖精女王ビラは予言めいた言葉を残す。妖精女王ビラの体の面積がどんどん減り、光粒子となって消えていく。
「私の人生は弱くて、戦いばかりだったなぁ。」
「・・・魔物であり、弱肉強食に明け暮れたドラゴンの俺が言うのもなんだが、ジランドたちとの戦いは俺の中に生き続ける。お前も・・・強かった。」
妖精女王ビラが目を見開く。
「そう。そうか。私は認められたかったのかもしれないね。最強と名だたる君から・・・。」
妖精女王ビラは笑って、消えていったのであった。
「・・・・。」
リュウはお互いの過去を知る最後の人物が逝ったことに悲しげだった。
時間を置いて、リーゼたちと妖精たちが登場する。
「・・・妖精女王ビラ様は?」
リーゼがキョロキョロしながら訊く。
「光となって消えていった。」
「そう。」
リーゼが氷の妖精シヴァに振り向く。
「・・・これからどうするの?」
「妖精女王ビラ様は透明化魔法に長けておられました。だけれども、私たちにそのような魔法は持っていません。よって、ジランド王国に身を寄せることといたします。そして、居住と保護を求めたいと思います。」
妖精族は妖精女王ビラの魔法によって、身を隠しながら暮らしてきたが、それが出来なくなり、外敵に襲われる危険性から、ジランド王国に移住を求めているようだ。
「えぇ、わかったわ!ただ新しく妖精女王となるシヴァにはランドルフ王様の面会が必要になるけれど、居住に関しては心強いところがあるから、心配はいらないわ!!」
リーゼ、メイファ、アイリン、ソル、ポチ、シンが一斉にリュウを見やる。
「え、俺の家のことか?妖精族の小人サイズなら問題はないが。」
「やったー!ここの生活なんて飽き飽きしてたんだよ!!ジランド王国に強い奴いるんだろ!!」
火の妖精イフリートが一番喜んでいた。
「イフリート。騒ぎを起こしたら許しませんよ?」
氷の妖精シヴァが冷たい視線でイフリートを刺す。
「わかってるよわかってるよ!!」
「そういえば、格闘大会ありますよね。エントリーなさってはどうですか?」
シンが思い出したかのように話を振ると火の妖精イフリートと風の妖精シルフがシンの顔面に飛びつく。
「本当か!?やるやる!!」
「ボクも。」
「がぼがぼがぼ!わかりました!!案内しますから、離れてください!!」
「ラムウ殿は?」
ソルがイタズラっぽく振ると雷の妖精ラムウは首を横に振る。
「遠慮するわい。儂は年じゃよ。大人しく観戦でもしとる。」
「それは残念。」
ソルがくっくっとうすら笑いする。
「リーゼさん。信じていますからね。」
「えぇ、任せて!!」
氷の妖精シヴァは妖精女王となるからには皆を纏めなければいけないが、移住先のジランド王国にて妖精族の新たな生活に期待と不安を覚えているが、リュウの家にてさらなる衝撃が待ち受けていることは知る由もなかったのであった・・・。
こうして、リュウたちは妖精族を引き連れて、ジランド王国に戻る。一方、セイクリッド王国では・・・。
◇◇セイクリッド王国◇◇
「武士道チームの皆さん、ジランド王国まで護衛をよろしくお願いします。」
シャルロッテ姫が武士道チームに声をかけていた。その中にニンジャの姿があった。
「(どうにか入り込めたな。)」
「(タイミングが良すぎないでござらんか?)」
ニンジャがもう一人の自分と会話し、回想に入る。
◇◇回想◇◇
「街中にオークキングが出現したぞぉぉぉ!!逃げろぉぉぉぉ!!」
セイクリッド王国の街中に突如、オークキングが出現したことで大騒ぎになっていた。
ニンジャがそれを聞き、現場に急行することとなるが、逃げ惑う人混みでその歩みを遅くしていた。
「む。人混みが・・・ならば、壁走り!!」
ニンジャが忍者かのように住宅の壁を走って、現場に到着する。そこには確かにオークキングがいたが、人間と融合したかのような不気味な姿となっていた。
「腹減ったァァァァ!!喰わせろぉぉぉぉ!!」
そう言い、暴れていた。
「なんて不気味な姿でござる。」
脳裏にもう一人の自分が囁く。
「(これは・・・まさか?)」
「(何か知っているのか?)」
「(・・・アドバイスするなら、人間と魔物を同時に倒せ。)」
「(む?人間は助けられないのか?)」
「(あれは魔物とみなせ。それにあの人間は元は奴隷だ。罪人なら、仕方がない。)」
「(・・・心得たでござる。)」
ニンジャがくないを持ち、オークキングとの戦闘に入る。
オークキングはAランク魔物で豚が人型になった巨漢の姿でパワー系に特化している。年中、空腹のため、なんでも喰うのだ。
「まず、周囲にいる人間を逃すため、時間稼ぎするでござる!!」
ニンジャが印を結ぶ。次に地面に当てる。
「創造神の御加護・土遁堅牢の術!!」
オークキングの四方に土壁が出現する。
「皆の者たち!今のうちに逃げるでござる!!」
周囲にいるセイクリッド国民たちを避難させる。
ドガっ!!
けたたましい音と同時に土壁はあっけなく破られた。
「お前か!?」
融合体人間とオークキングは標的をニンジャに定めた。
「来るか!」
ニンジャは再び、印を結ぶ。次に忍者装束によって隠している口元を開く。
「創造神の御加護・火遁の術!!」
燃え盛る火を吐いた。だが、オークキングは怯むことなかった。
「チャージアサルト!!」
オークキングが肩を怒らせ、突撃してきた。ニンジャは火遁の術の出した直後ですぐ動けなかった。その様子にニンジャの脳裏にいるもう一人の自分が「(まずい!!)」と助け船を出す。
「瞬歩!!」
ニンジャの独特の歩法で複数の残像を出し、ギリギリかわした。
「(すまないでござる!!)」
「(交代しようか?)」
「(いや、やらせてほしいでござる。)」
「(・・・お前は若く、実力は発展上にある。本来なら、Cランク冒険者の実力のところを無理矢理にBランク冒険者にあげている。無理だと判断したら、交代だ。死なれては困る。)」
「(創造神フォルトゥナ様の御加護を賜ったからには目的がある。それは重々理解しているでござる。)」
ニンジャが再び、オークキングと向かい合う。ニンジャは身軽さを武器に俊敏に移動する。
「くない投擲×2!!」
オークキングと融合体の人間の頭に目掛けて投げつけた。オークキングの頭は硬く、弾かれたが、融合体の人間には刺さる。「ぎゃぁ!!」と悲鳴を上げ、一発で死ぬ。だが、オークキングが瞬時に手近にあった食べ物を食って、すぐ生き返るかのように回復した。
「なんと!?」
ニンジャが初めて見る現象に驚いた。オークキングは食うことで回復する特殊型の自己再生スキルを持っていたのだ。
「剛腕・金剛パンチ!!」
「独楽廻り!!」
ニンジャは一撃でやられるようなパンチをギリギリ独楽のように回ってかわし、懐に入る。またもや印を結ぶ。その次にオークキングの腹に当てる。
「創造神の御加護・内なる衝撃波!!」
「ギャァァァァァッ!!」
オークキングの中から衝撃波を浴びせる。それは非力なニンジャにとって有効な攻撃であった。ダメージを受け、よろけるオークキングに好機を見い出す。
「最強技を用い、畳み掛ける!!」
ニンジャが印を結ぼうとするとオークキングはその手を掴んで制止した。
「しまった!」
「さっきから印を結んでりゃ、スキルの発動タイミングがわかる!!」
融合体の人間がオークキングにそう指示したようだ。オークキングは悪魔的な笑みを浮かべ、ニンジャを振り回し、地面をドガッドガッと数回当てる。
「ガハッ・・・。」
「(意識を保て!!)」
オークキングが最後にニンジャを上に放り上げる。アーンと食う準備していた。
「(交代だ!!)」
ニンジャのもう一人の自分が表に出てきた。
「催涙弾!!」
ニンジャが咄嗟に催涙弾をオークキングに投げつけた。
「ギャァァァ!!」
オークキングは催涙弾に怯み、ニンジャは上手く回避し、間合いを取る。
「透明化!!」
ニンジャが透明になる。このまま戦闘に入るかと思われたが、その場から離れ、身を隠す方を選んだ。
「(何故、逃げる!!)」
「(お前を死なせないためだ。それにダメージを受けている状態では私もオークキングを倒すのは無理だ。)」
何やら脳裏のもう一人の自分は冷静に状況判断するタイプのようだ。
「(しかし、オークキングを倒さねば、被害が・・・?)」
その時、オークキングの前に立ちはだかる一人。黒袴に青羽織を着込み、まるで新撰組のような出で立ちの侍であった。
「ニンジャという者はなかなかやる。」
まるで戦闘の全てを見ていたかのような発言であった。
「お前はAランク冒険者のサムライ!!巷ではSランク冒険者に近い男!!」
「いかにも。」
「やれぇぇぇぇ!!」
融合体人間がオークキングに檄を飛ばす。
「もう終わっている。」
「あ?あぇぇぇぇぇ!!」
オークキングが動いた瞬間、融合体人間と一緒に真っ二つに斬り分かれていた。
「拙者の太刀筋が見えなかったようだな。」
サムライは刀を腰に納める。
「あらあら〜。」
そこに空から天使族の女性が飛んできた。
「おいおい。俺の分も残せよ。つまんねーだろうが。」
ライオンが人型になった獣人族が遅れて登場した。
「さて、ニンジャ、そこにいるだろう。」
ニンジャはサムライの言葉に出てきた。
「ニンジャのことは耳にしている。創造神フォルトゥナ様の御加護を受け、千のスキルを操ると言われる。実際に戦闘も見せてもらった。技の多彩さ、身のこなし、そして状況判断もいい。普通ならそこで無理して、倒れるのがオチだからな。拙者は君が欲しくなった。」
サムライはニンジャをベタ褒めしていた。
「おいおい。こいつを武士道チームに入れるのか?小せぇ上に弱っちそうだなぁ。」
「怪我してますねぇ〜。回復魔法かけてあげますよぉ〜。」
天使族の女性によって回復魔法をかけられる。
「感謝するでござる。」
「いえいえ〜。」
「さぁ返事は?」
サムライが返事を急かす。
「願ってもないことでござる。」
「即決。ますます素晴らしい。」
「(某にはブレインがいるでござるからな。)」
◇◇回想終了◇◇
「セイクリッド王国の力を誇示するためには格闘大会で優勝し、ジランド王国を牽制する必要があります。ジランド王国の噂に真偽がどうあれとも、見えない脅威に対して、力を示すのが一番。なので武士道チームには重要な使命だと捉えてください。」
お偉方の言葉を受け、サムライが代表に応える。
「拙者たちにお任せください。」
シャルロッテ姫を含め、セイクリッド王国の使節団がジランド王国に向けて出発し、舞台はジランド王国の格闘大会に移るのであった・・・。
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