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第九話 人間社会で初のお泊まり

拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!

ー冒険ギルド受付所ー


「はい。冒険者カードでーす。身分証にもなります。Dランク冒険者おめでとうございます!」


冒険ギルドの受付でアンリ受付嬢から冒険者カードを受け取るリュウ。


「おめでとうニャ!」


リュウが振り返るとメイファに抱きつかれる。


「メイファ、ずるい。」


羨ましそうな目で見るアイリン。リュウのファイアブレスでメイファとアイリンはダメージを負っていたが、アイリンの回復魔法で回復していた。


リュウの顔がメイファの鉄の胸当てに当たって、少し痛く苦しそうだった。


「メイファ、離れなさいよ。」


苦笑いしてるリーゼ。


「嫌ニャ。こんな強い男、獣人族として放っておかないニャ!!私と結婚するのニャ!!」


「む。それはダメ。」


アイリンがリュウに抱きついているメイファを引っ張る。


「そういえば獣人族の女性は強い男性を見つけるのが習わしという話を聞いたわね・・・。」


獣人族は強さこそ誉れという特有の文化があり、結婚に対する価値観がそこからきているようだ。


「ニャニャニャー!アタイと結婚するのニャー!」


求婚してくるメイファにリュウは「興味ない(ドラゴンだし)」と一蹴した。


「ガーンガーンニャ・・・」


メイファは大袈裟にショックを受けていた。ようやくメイファから離れるリュウ。リーゼがコホンと咳払いし、話を切り出す。


「あなた、これから冒険者として生活するわけだけど、そのことでお話がしたい。」


「?」


「単刀直入に言うと私の瞬光の戦乙女チームに入ってもらえないかしら?」


リーゼの発言に「ニャ!?」「!?」とメイファとアイリンがビックリした。


「瞬光の戦乙女は速さに特化したチーム。だけど、防御の面で魔物を引き付ける人がおらず、脆さがある。そこはたまにセバスチャンに加わってもらってたけど、年齢が年齢だし。それに・・・」


リーゼが周りを見やる。何やら先程、リュウとリーゼたちとの戦闘を観戦していたと思われる冒険者たちが様子を伺っていた。


「な、なんだ?」


リュウが周囲の冒険者たちの多数の視線に戸惑う。


「あなたが新入り冒険者だから荷物持ちさせようと目論んでいるわ。」


「荷物持ち・・・。」


「(最強と謳われたこの覇竜を荷物持ちにさせるとは良い度胸だ・・・)」


リュウがそんなことを思っていたら、リーゼが「冗談よ。」とふっと笑う。


「リュウが私たちを倒したことでチームに加えようと狙っているわ。自慢じゃないけれど、私たちはこのギルドで実力のあるチーム。リュウに倒されて、私たちのプライドがズタズタよ。」


様子を伺っている冒険者たちはリュウを即戦力になるとみなして、チームに引き入れようとしているらしい。


「実力があってセバスチャンと同じ収納魔法持ちだと引く手数多になるのは確実。早い者勝ちで声をかけさせてもらっているわ。正直に言ってあなたが欲しいわ。なんなら、冒険家業に慣れるまでの間でも構わないわ。」


すると周囲にいた冒険者たちが「負けた相手に頭を下げるなんてプライドはないのかー!!」とブーイングが飛ぶ。


「五月蝿いわ!!」


リーゼがキッと睨みつけると冒険者たちはすぐ静かになった。そしてリーゼはダメ押しとばかりにリュウの手を取って拝むように握る。


「お・ね・が・い❤️」


リーゼが甘い声色を出し、甘える仕草する。リーゼなりの誘惑であるようだが、かなり無理しているかのような表情であった。その様子にアイリンが無表情で「気持ち悪い。」と呟いた。


「リーゼ、落とすなら胸仕かけが一番ニャ。」


メイファがケラケラ笑う。どうやらリーゼなりの色気を出しているようだが、残念ながら相手が悪い。リュウの中身はドラゴンだから色仕掛けは通用しないのだ。だが、リュウはリーゼの熱弁に思うところがある。


「(リーゼには色々助けられている。その恩を返さずにいつ返すのだ?)」


リュウがリーゼの熱弁に応えるように返事する。


「冒険者として、わからないことだらけだから、是非とも教えて欲しい。」


リュウは瞬光の戦乙女チームに入ることに同意した。


「やったニャ!収納魔法持ちなんて少ないニャ!!」


リュウの加入に喜ぶメイファ。


「リーゼ・・・気持ち悪かったけど、よくやった。」


アイリンはリーゼの頑張りに親指立ててた。


リーゼがすぐさまキリッと佇まいを正し、周りを見回す。


「リュウは私たちのチームに入ることが決まったわよ!散りなさい!!」


リュウをチームに引き入れようと目論んでいた冒険者たちは悔しそうに散っていった。リーゼが改めて、リュウに向き直る。


「明日からよろしくね。ところで宿はどうするかしら?」


時間的にもう夕方になりつつある。


「ん〜。野宿でもいいんだけど、ジランド王国ではまずいか?」


リュウはドラゴンの感覚で尋ねた。道端で適当に寝るつもりのようだ。リーゼは冷静に対応する。


「リュウの住んでいたところがどんなのかわからないけれど、ジランド王国がいくら安全でもトラブルに巻き込まれないとは限らないわ。宿を取ることをオススメするわ。」


「そうか。」


リュウは次の日に冒険ギルドにてリーゼたちと合流する約束を取り付け、リーゼたちと別れる。



___ジランド王国城下町・南街通り___


ジランド王国城下町の正門付近に宿がいくつか立ち並んでいるとリーゼたちから話を聞き、キョロキョロ見回す。ジランド王国に入った時は様々な店が開いており、活況の様相を見せていたが、日が暮れてきたこともあり、飲食店以外は閉店が目立った。


「オススメの宿を聞いておけば良かったか。」


確かに歩けばいくつかの宿は見つけたが、どれが良いのかさっぱりわからないのであった。


「真っ白で目立っている宿でいいか・・・。」


リュウは宿なんてどれも同じだろうと思い、適当に入る。だが、そこは小金持ちや商人、セレブ御用達の高級宿であった。白タイルで欧風のリゾートホテルを思わせるようなそんな外観の宿で一般人なら一目で高級宿だと敬遠するほどである。


ーホテルコンシェルジュ視点ー


「(私はホテルコンシェルジュ。この高級宿の責任者。最も大事なのは宿泊者に満足していただくこと。セレブ御用達がゆえに無理難題を言われることもあります。基本的にはノーとは言いません。そう。目の前に貧乏そうなお客様がいたとしても。)」


ホテルコンシェルジュの目の前に貧乏そうなお客様を指すリュウがいた。ホテルコンシェルジュや周囲のスタッフは心底でリュウを見下しているようである。


「泊まりたいんだが?」


「(・・・聞き間違いでしょうか。いや、聞き間違いではありませんね。目が本気のようです。)」


ホテルコンシェルジュは気を取り直して、接客する。


「ご予約はありますか?」


「いや。」


「(そうでしょうね。予約者は基本的にリピーターが多いですからね。それだけセレブに人気があると自負しています。みすぼらしいあなたにはわからないことでしょう。)」


ホテルコンシェルジュが心の中でふんと見下す。だが、リュウの手前、接客スマイルを崩さない。


「当日の宿泊を希望ですか?」


「そうだ。泊まれるか?」


「(世間知らずも極まれりとはこのことですか。いいでしょう。現実を突きつけてやります。)」


「三種類の部屋がございまして、


スイートルーム 1泊1人金貨30枚

デラックスルーム1泊1人金貨20枚

スーペリアルーム1泊1人金貨10枚


となっております。」


ホテルコンシェルジュがリュウに対して、値段を提示した。※現実に言えば一泊10万円から30万円とイメージして欲しい。


「(みすぼらしいあなたには到底支払えないでしょう。)」


これで諦めてお引き取り願おうと狙っているようだ。


「よくわからん。とりあえず払えばいいのか。」


リュウが金の入った袋をドンッと置いた。その瞬間、ホテルコンシェルジュは目の色を変えた。


「少々、確認してもよろしいでしょうか?」


「構わん。」


ホテルコンシェルジュが袋から金貨だらけの大金を確認し、心の中で動揺する。


「(みすぼらしいあなたからこんな大金を・・・。いえ!上客!!)」


ホテルコンシェルジュは態度を改め、にっこりと接客する。


「スイートルームでよろしいでしょうか?」


「いいぞ。」


ホテルコンシェルジュに促されるまま宿泊手続きする。


ーリュウ視点ー


「(宿って高いんだな。冒険ギルドで生活費確保のために魔物換金を追加でやっておいたが、すぐ消えるな。明日から稼げばいいんだろうし。)」


金銭感覚をイマイチ掴めないリュウは高い安いを把握できないまま宿泊する。するとマッサージやら美容エステやら高級風呂で身体を流してもらうやらセレブ至れつくせりのことを受けた。そして極め付けが豪華な食事にリュウは舌鼓を打つのである。だが、リュウは知らなかった。


セレブ高級宿には追加料金が当たり前だったことに。



____次の日・牢屋____


ジランド王国城下町正門の騎士団駐在所の牢屋にてリュウは鉄格子越しにリーゼと面会する。


「・・・あなた、宿に泊まったのではなくて?」


リーゼがこめかみに「#」と怒りマークを作っていた。メイファとアイリンが後ろでやや苦笑いする。


「ニンゲン、シンジラレナイ・・・・。」


リュウはセレブ高級宿にて身ぐるみ剥がされて、無一文なしとなり、支払いがままならなく逮捕されていたのだった。同時に人間の狡猾さを味わい、凹んでいるのであった。


「どうやらあなたに一から教育が必要ね!!」


リーゼの大声が騎士団駐在所全体に響き渡るのであった・・・・。

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