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 幼稚園部から大学までそろっていて、僕に問題が起きない限り、大学まで線路が敷かれている。全然、実感はないけど、みんなからしたら、すごいのだろう。特に授業が変わっているわけでも、難しいわけでもなかった。転入が決まった時のお母さんは本当に嬉しそうだった。そうだ、お母さんもお父さんもそれを嬉しがった。今でも自慢することはなく、休むことなく通う僕を見守っている。

「おはよう、蒼太くん」

「あ、おはよう、玲くん」

 同じ時期に同じクラスに転入した、石田 玲。きちんと制服を着ている。玲くんは僕と違って、学校のすぐそばにある寮から通ってくる。徒歩五分くらい。中学生や高校生に混じって門のとこで僕と合流する。混じって歩いているように見えて先輩たちは、実は玲くんを見守っていて、僕と合流するのを見届けてから、それぞれの校舎に向かうことに最近、気がついた。

「すごいお話があります」

 玲くんは、だいたい、ていねい語で喋る。人形みたいなキレイな顔がニコニコしていた。

「すごい?」

「はい。寮に幽霊が出るお話、覚えていますか?」

 確か、貴絵ちゃんという名前の幽霊。

「うん。昔、寮にいた人の彼女で、自殺してからずっといるやつ」

「はい。僕は、ずっと貴絵ちゃんは生きてると思っていたやつです」

 本当にびっくりした話なんだけど、玲くんは幽霊が見える。僕が指摘するまで、死んだ人だとも思っていなくて、普通に話しかけていた。誰もいない、何もないところに向かって。そのうちの一つで、貴絵ちゃんは寮のあらゆる場所に突然、いるらしい。何もしない、ただいるだけ。

「貴絵ちゃんがどうかしたの?」

「貴絵ちゃんのお話ではありません。幽霊がいるお話を覚えていましたか?」

「うん」

「図書館棟にもいるんだそうです」

 いきなり、空間に向かって話し出す玲くんを僕は何度も見ているし、そこは誰もいないよと教えるのもいつものことだ。

「貴絵ちゃんから聞いたの?」

「いえ、高校のタカシナさんからです」

 高校三年生の高科先輩は寮長だ。寮長はこの玲くんの行動にへきえきしている。

「貴絵ちゃんと話していたら、図書館棟のお話をしてくれました。この学校、昔、お城だったの、覚えていますか?」

うなずく。去年、社会の時間にこの町の歴史を調べたからだ。



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