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stage11 少年の心の叫び

「よし、これで縮小リダクションは終わりだ。感覚痛の心配は無いだろうが、出来れば暫くは感覚拡張を使わないように」


「……」


 フレアの声が聞こえていないのかエイヤは俯いたまま顔を上げない。

 僅かに赤みを帯びたエイヤの耳。

 アイリスの光る粒子(フィール)を覗いて赤くなっているのだろうか。


「エイヤ、聞いてるのか?」


 フレアの声を無視してエイヤが声を荒げた。


「お前はめやがったな!! どうでもいい光る粒子(フィール)入れてただろ!? 意味わかんねぇものばっかじゃねぇか!!!」


「ふふ、仔牛くんがお姉さんの秘密を知ろうなんて百年早いのよ」


 悪戯を成功さて上機嫌なアイリスは、それにしても、と言葉を続ける。


「まさか本当に同調シンクロするなんてね。さすがのお姉さんもそれにはちょっと……」


 両肩を抱いて震えながらエイヤと距離を取るアイリス。

 牛の仮面がまるでケダモノを見るような視線でエイヤを見ているような気がした。

 そして、そんなアイリスにエイヤはというと。


「……」


 何も言えずにただ、牛の仮面の軽蔑な眼差しを受け入れていた。

 何も言えない、言えるはずがない。

 同調シンクロしたのは事実なのだから。

 そして同調シンクロしたという事は、見たかったという事実を認めたことになり、更に自分がアイリスに興味があった事を示す。



 光る粒子(フィール)はアイリスの言ったように記憶と感情でできている。

 そしてどの記憶と感情を光る粒子(フィール)に変えるかは、拡張クライメントに慣れた人間には造作も無い事だった。

 アイリスならどうでもいい記憶と感情を光る粒子(フィール)に変えることなんていとも簡単にやってのける。

 エイヤは欲望に走ってそんな単純なことを見落とした自分が、ただただ恥ずかしかった。

 しかしそんなエイヤに助け舟を出したのはフレアだった。

 ただし泥船だったが。


「アイリス、あんまりエイヤを虐めてやるな。年頃の男の子なんだから異性に興味を持つのは仕方ない。目の前に好きな女の子の下着が落ちていれば迷わず拾うのが普通だろう」


「おいちょっと待て! その例えはおかしすぎるだろ!! まず好きじゃないし、仮に落ちてても拾わねぇよ!!!」


同調シンクロしたのに?」


 アイリスの疑うような声。


「うっ……」


 エイヤはそれを言われるとただ黙るしかない。

 このままじゃマズい。

 そう思ったエイヤは無理矢理話題を変えることにした。


「そ、そう言えばさっき話があるって言ってたのは何だったんだ?」


「ん? ああ、そうだったな。実は君に報告があってだな」


 どうやら話題を変えることに成功したらしい。


「アイリスと同じ学園への転入手続きが済んだ」


「え?」


 話題は変わったが、内容の中身にさっきとは別の意味で嫌な予感がするエイヤ。


「だいぶ前に君が言っていただろ? もっと今ある“牧場社会”について学びたいと」


「ああ、言ったけど」


 昔フレアにそんな事を言っていた自分を思い出す。


「喜べ、これからは拡張クライメントと牧場社会についてしっかり学ぶことが出来るぞ」


「は?」


 素っ頓狂な声を出すエイヤ。

 フレアは何を言ってるのだろうか?

 アイリスと同じ学園になるのは別にいい。

 多少からかわれるだろうが。

 ただ、さっきフレア自身が言っていたじゃないか。

 アイリスとパラディンの少女が同じ学園だと。

 2人ともわかってないのか?

 それとも自分がおかしいのか?

 ばれたらどうするんだよ!?

 牧場荒らしがのこのこパラディンのいる学園に通うなんて、どうぞ捕まえてくださいって言ってるようなもんじゃねぇか!?



 そんなエイヤの心の叫びを無視して、2人は何故か祝福ムードだった。



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