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意外な答え

シ―ナ女王の部屋の前で立ち止まる私。心臓が高鳴る中、深呼吸をして、ドアを叩いた。

「はい」

中からシ―ナ女王が返事をする。

私は恐る恐る部屋に入る。

「江海、どうしたの?」

「えっと…実は…」

声が震えてる。

ちゃんとホントのこと言えるかな?

「何?」

「あの…ケイから聞いたんですけど、シ―ナ女王が永久に人間になる本を持ってるって…」

「もしかして、人間になりたいの?」

「は、はい…」

「そうじゃないかと思った」

「えっ…?」

笑みを浮かべるシ―ナ女王。

「さっき部屋の家具の位置を変えるために来たって言ってたでしょ? すぐに永久に人間になる本を探しに来たんじゃないかって思ったわ」

「……」

バレてたんだ…。

「一週間くらいならいいわよ」

「ホントですか?!」

「えぇ、ホントよ」

「ヤッタ!」

思わず、私ってば大声を出してしまう。

「だけど、一つ条件があるの」

「条件…?」

条件ってなんだろ…?

「一週間後、人魚に戻る日、何があっても私のほうから消えるようになります」

「前とは違うんだ…」

「そうね」

前は自分から言わなきゃ消えることは出来なかった。だけど、今回は違うんだね。

「明日の午前十時に私の部屋に来ること。守ること」

厳しい表情をするシ―ナ女王。

「わかりました」


健吾君に会える。七ヶ月振りに会える。今、どうしてるんだろ? 元気にしてるかな? 彼女、作ってるかな?

ふと、嫌な不安が頭によぎる。

ヤ、ヤダ。私、こんなこと考えてる場合じゃないのに…。健吾君に彼女。絶対にそんなことない。ないもん!!




「良かったじゃない!」

早速、ケイに報告したんだ。ケイってば自分のことのように大喜びしてる。

「健吾君に会わなきゃ」

「頑張らなくちゃね」

「うん。私、後悔しないようにするよ」

「そうこなくちゃ!」

ガッツポーズをするケイ。

「ねぇねぇ、二人でどっか行こうか?」

「え?」

「だって、一週間も会えないんだよ?」

「OK!」


私、誰かのために必死になること初めてだと思う。人を好きになって必死になることは初めて。好きな人のそばにいたい気持ち。愛しく思う気持ち。ライバルがいてす好きでいる気持ち。わかった気がするよ。

私、この七ヶ月間、健吾君のことで色々悩んだ。「健吾君のこと好きでいるのはやめよう」って、何度も思った。やっぱり好きでいて良かったと思ってるよ。





翌日の午前十時にシ―ナ女王の部屋に来た私。シ―ナ女王の注意を少し受けた。

「いいわね? 江海」

「はい」

「じゃあ、目をつぶって…」

私は静かに目を閉じた。

一週間、人魚の世界なんだ。二度目の人魚の世界。前よりもすごく短い。それでもいいの。健吾君に自分の気持ちを伝えるのには十分な期間。失恋しても悔いは残らない。絶対に…。

私、自分の気持ちにピリオドを打たなきゃいけない。もしかしたら、今回で人間の世界に行くのは最後かもしれないから。だから、後悔だけはしたくない。



それから、何分くらい経ったんだろう。私、やっと立ち上がったの。

あの日、健吾君と出会った浜辺にいた私。

なんだか、懐かしいね。何も変わってない。そういえば、健吾君の家、すぐにあったよね。とりあえず、健吾君の家に行ってみなくちゃ。

自分の記憶を辿って、健吾君の家に向かって歩いていく。

ドキドキするなぁ。久しぶりだもんな。健吾君、どう思うかな? ビックリするかな? 早く健吾君に会いたいよ。

自分の歩き方がスキップに変わっていく。

サッカー頑張ってるかな? その前に足はどうなったんだろ? 健吾君、骨折してたんだよね。だから、大丈夫かな? 気になっちゃうな。


あっ、健吾君の家あった!!

うわぁ…。私、ホントに健吾君の家に来たんだね。

私は健吾君の家の玄関の前で立って感動していた。

と、その時だった。家から誰かが出てきた。

「水野、気を付けろよ」

男性が相手を気にかける。

あの声は健吾君の声だ。すぐにわかったよ。

「うん、わかった。ありがとうね」

相手の女の子の声。

ズキンと胸が痛む。

渚でも夏子でも田崎さんでもない、私の知らない女の子。そして、健吾君とその女の子が私に気が付いた。

「え、江海ちゃん?!」

ビックリした健吾君の声。

ちょっとバツが悪そうな表情をしてる健吾君。

一緒に女の子が不安そうな表情で、健吾君の服の袖を引っ張る。

「健吾君、この女の子誰?」

「う、うん…ちょっと知り合いの女の子」

「へぇ…そうなんだ」

ホッとした声を出す。

このコ…健吾君のこと…好きなんだ…。

表情と声でわかった。

そして、私は走って来た道を戻った。

「江海ちゃん!!」健吾君の声が響く。


あのコ、私より可愛かった。健吾君と似合ってた。きっと、健吾君、あのコのこと好きだと思う。例え、今は両想いじゃなくても、二人は仲がいいんだ。健吾君は私のことなんか忘れたんだね。

久しぶりに会った健吾君。嬉しかった。だけど、久しぶりに会った健吾君はほんの少し変わってた。あのコに対する話し方と私に対する話し方。服装や髪型…なんか変わってた…。

これはあのコのためなのかな? いつか二人のお付き合いがスタートするのかな?

私はあの浜辺に戻ってきて、階段に座り、一人で泣いてたんだ―――。


江海、臆病だね。自分の気持ち伝えるって決めたのに…。それなのに、走って浜辺まで戻ってきて、ダメじゃない。この気持ちにピリオドを打つって決めたんでしょ? 早く健吾君の元へ戻らなきゃ。

ドキドキ…ドキドキ…。

私の鼓動が早く健吾君の元へ戻れって催促してる。自分でも早く戻らなきゃって思ってる。でも、この顔じゃ戻れないよ。

明日になれば、私の気持ちにも落ち着きが戻る。明日には健吾君に自分の気持ちを伝えに行く。それまでは泣かない。失恋したら今みたいにたくさん泣くと思う。

私、頑張るよ。


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