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忘れられない気持ち

人間の世界から帰ってきて七ヶ月が経とうとしている。この七ヶ月間、毎日が目まぐるしく変化して、色んな事が変わった。そして、私も変わった。

みんなから「女の子らしくなった」とか「恋してるの?」って言われるようになった。

そのとおり…のハズなんだけど…私の好きな人は人間。そう、人間の世界に行った時からずっと好きでいる。当然、叶うはずもない恋なんだよね。


私、江海。明るくて好奇心旺盛な女の子。人間にいた時は、山岡江海という名前だった。

私の片想いの相手、貝本健吾君。性格も良くて、優しくてサッカー好きの爽やか少年。人間の世界ではすごく人気があってモテてたんだ。私、健吾君の家にお世話になってたんだけど、たたの居候人って感じだった。それでも楽しかったよ。




「江海、ため息ついてどうしたの?」

友達のケイが私の顔をのぞきこむ。

「ううん、何でもないよぉ」

無理に作った笑顔をケイに向ける。

「もしかして、健吾ってコのこと考えてたでしょ?」

ケイってばスルドイ。私の考えてたこと、すぐわかるんだもん。

「私の予想、当たってた」

ニヤッと笑ってみせるケイ。

「うん…まぁ…」

「も―、諦めなさいよ。どうせ、一生、会えないんだから…」

ケイが呆れ返りながら言う。

「そんな簡単に忘れられるわけないじゃない。そりゃあ、このまま一生会えないけどさ…」

「じゃあ、なんで自分の気持ちを伝えなかったのよ?」

「伝えたというより学校で私の気持ちがバレちゃったから、健吾君は私の気持ち知ってるよ」

「で、どうなったのよ?」

「健吾君も私のこと好きみたいなんだ。私のこと、迎えに来るって言われた」

「そんなこと言われたら諦められるわけないけど、やっぱりフラれとけば良かったんじゃないの?」

何気なく言ったケイ。

確かに私もそう思う。フラれてとけば良かった。別れる前にちゃんと答えを聞いておけば良かったかな。

…後悔…。今から後悔しても遅いよね。ホントに遅い。





数日後、ため息ばっかりの毎日が続いた。

時々、ケイが心配してくれる。

「ねぇ、江海、いいこと教えてあげる」

岩の上で休憩中にケイが言ってきた。

「いいことって…?」

「それは、ね…」

意味ありげな表情をすると、私の耳にそっと耳打ちした。

――え? そんなものがあるの…? そう思っちゃった。

「ホントにそんなのあるの?」

私の目は疑いの眼差しをしてる。

「私の話、信じてないでしょ―?」

「だって―、そんな話、誰も信じないよ」

「あるの見たんだもん。江海、行ってみなよ」

ケイが催促する。

「う、うん…」

「ほら、早く!」

ケイが私の背中を押す。

「確認してくるから、ケイはここで待っててよ」

「OK!」

ケイはウインクをする。



私はシ―ナ女王の部屋へと向かった。今ならシ―ナ女王はいない。

「永久に人間になる本が、シ―ナ女王の部屋にある」

さっきケイがそう教えてくれたから、シ―ナ女王の部屋に来たんだけど…。

キョロキョロと部屋の中を見る。

う〜ん…どこにあるんだろう? ケイの言ってたこと、ホンとかなぁ…? でも、見たって言ってたからあるんだよね。その本を読んで、ホントに永久に人間になれるのかな?

と、思ったその時、

「何をしているのですか?!」

シ―ナ女王が部屋に戻ってきた。

「何をしているの?!」

「いえ、別に…」

永久に人間なる本を探しに来た、なんて言えっこない。なんて言い訳しよう。

「部屋の家具の位置を変えようと思って、シ―ナ女王の部屋を見てて…それで…」

とっさに思い付いたウソを口にした。

「それは友達のケイに部屋を見せてもらえば済むことじゃない」

言い返されてしまった私は、何も言うことが出来ない。

うっ、そりゃあ、そうだけど…。

「ですよね〜。さよなら〜〜」

急いでシ―ナ女王の部屋を出た。



「どうだった? 江海」

「探してたら途中でシ―ナ女王が来ちゃって…」

「ったく、トロいんだから…」

ケイが呆れた声を出す。

「ちゃんと次探しに行くもん」

こんなことでは諦めちゃいけない。まだ始まったばかりだもん。

私、自分の気持ちにピリオドなんて打てない。こんなことならちゃんと自分の気持ち伝えときゃ良かった。学校でバレたからって油断するんじゃなかった。別れる時にでも、自分の気持ちを伝えておくべきだったんだ。

会いたいよ、すごく。七ヶ月間、何度も諦めようとした。忘れようとした。だけど、健吾君のこと諦められないし、忘れられない。七ヶ月間、一度も忘れたことなかった。そして、あの言葉も…。みんなと別れ際に私が健吾君に最後に向けた言葉。


…健吾君、今度、生まれ変わった時は、ちゃんと人間の女性として生まれてくるね。その時は好きになってね。それと、一緒になろうね…。


生まれ変わる日まで遠い。まだまだ先ってカンジだよ。

そして、もう一度、私はシ―ナ女王の部屋に向かうことにした。自分の気持ちと永久に人間の女性にしてもらえるかを伝えに行くことにした。

グジグジしててもダメだもん。悩んでても仕方ないもん。ダメでもやるだけのことはやりたい。自分の気持ちにウソはつけない。今は頑張ることだけに集中したい――。


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