変貌
オニク………タベタイ
幽霊
死者の魂がこの世に顕現した物。
中でも特に悪感情などが集まったものを怨霊と呼ぶ……
うん、どうすればいいんだ。
どうも幽霊となった国崎慎吾です。
どうやら死刑になった後、俺は埋葬されたようです。
と言っても比較的高齢で俺を生んだ両親はもう死んでいるし、恐らくは国の共同墓地か何かだろう。
少なくともこんな場所に見覚えはないし。
そう考えながら周りを見渡すとかなりの数の墓石が並んでいる。
かなり都心部から離れているのかビルなどは見えないし、少し進めば鬱蒼と生い茂る木々があるだけである。
「一体どこが出口なんだ?」
そんなことをぼやきつつも俺は出口へと向かう。
もちろんフワフワと浮いて移動する。
足を動かさずに高さも自由に変えられるのは意外に便利かもしれない。
それにここから出ようとするのは俺が幽霊になった云々は置いておいて、ここにいるのは恐らく得策ではないだろうという予想からである。
大抵こういう話だと幽霊は碌な目に合わないと相場が決まっているのだ。
しかしそれにしても時々薄い膜のようなものに触れる感触があるのはどういうことだろうか。
触れた瞬間に破れるので動くのには大して気にはならないのだが。
獄中で着なれた囚人服とはいえあまりベタつかれては困る。
服の心配をしていると桶が積まれた場所へと出た。
恐らく出口はここらへんにあるのは間違いないだろう。
しかし見渡してもそんなものは見えない。
「なんで出口がないんだ?」
そんな疑問を持ちながらも俺は現状の自身の顔を確認すべく積まれた桶の横の水汲み場へと体を乗り出し
「うおっ!?」
思わず飛びのいてしまった。
しかししっかりと見てしまった。
俺は顔をしきりに触りつつ再び体を乗り出す。
そこに写っていたのは。
浅黒い肌に紅く変色した瞳、耳元から目元に走るヒビのような白い線が入った俺の顔である。
試しに口を開いてみると心なしかされての歯が尖っているように見える。
からはもしかしなくてもあれである。
「俺ってば、もしかしなくても悪霊?」
どうやら楽には成仏できなさそうです。