第九十三話 アイツが望むもの
目玉が見ている場所はアクが勇者(仮)を消し炭にした場所だ。その事とアクが見た試練の内容を思い出してみる。確かあいつは「お前でこの世界を私の物に出来る」そう言っていた筈だ...うん、説明終わり。
そーするに目玉をあの場所に近付けたらヤバイってこと。
アクはそう考え魔力で剣を作り出し突き立てようとした。それに対しセリも何となくだが危険だと感じ懐から出した杖で突き刺そうとした。
キンッ!金属と金属がぶつかり合う甲高い音が聞こえた。まぁセリの使う武器の素材が金属製だったのは意外だがそれは置いといて...結果的に言うと攻撃は失敗した。相手が逃げたと言うよりもここに現れたように目玉を出した空間を閉じ、勇者のいる場所に空間を作った。
『逆戻し』
瞬間勇者がいた場所に魔力の波が現れ跡形も無く消し飛ばした町並みを修復するかのように広がった。
そうすると必然的かどうかわ知らんが消し飛ばした筈の勇者が空中に現れた。
「...はっ、僕は何でここに?」
戸惑いを隠せない勇者を尻目に勇者の真後ろに目玉が現れた。それと同時に目玉が縦に真っ二つに割れ被さるように勇者を食った。
目玉に薄い線が縦にピーと伸びておりそこから食べたのだと推測されます。眼鏡クイッ。
「いてっ」
セリに頭を叩かれてしまった。心読めんのかよ...
数百m程離れているはずなのにこいつはヤバイオーラをビンビン感じる。
目玉はそれに応えるように姿を変えていった。
虹色の光沢を帯びた竜が突如現れた空間から出て目玉を覆うように包んでいく。
グチャグチャ、そう遠くからでも聞こえてきそうな位に虹色の竜と目玉は融合していく。
そして徐々に人の姿になっていく。
球体状になった塊から所々に虹色のウトコが生えた腕が生え、スラリと伸びた足が下から生え、そして徐々に球体は小さくなっていく。最終的に球体が集まり今にも折れてしまいそうな胴体が、腰まで伸びた銀色に輝く髪と、少し幼さが残った少女の顔が出てきた。
『クックック...やっと、やっとこの時が来た。何百年、何千年もの長い時をかけ幻想竜を殺し完璧な肉体を手に入れた...』
この距離でも届く...こいつ直接脳内に!?...イテッ。
多分念話とかそんな類だろう。だって口元動いてないから喋ってるとは思えないし...てかこの距離で見れる龍人の視力も半端じゃないけどそれついてこれるセリの技術の高さにも驚きだ。
俺がフンフンとセリに感心しているとセリが肘でつつき前を見ろ、と言った。
え?なになに?
俺が見るのと同時に幻想神(仮)は空中で地面のほうに手を当てナニかを打ち込んだ。そして...
大地を揺るがす大きな地震が起きた。
...あれ?幻想竜の事誰も突っ込んでなくね?




