第八十四話 過去3クリセリア
勇者召喚の儀式から早...何年か忘れてしまったが、召喚された歩夢と一緒に魔王を討伐したところまで来た。
(今度は言ってみせる...)
正直試験だとか試練だとかは王の娘であるクリセリアに既に無かった。
今度こそは王に呼ばれたとしても絶対に行かないで、もしそれが嫌なら私と一緒に逃げよ?ただこの事を言えばいいだけ、そう思っていた。
朝体のだるさを感じたるが歩夢の為!そう思って勢い良くベットから飛び出した。
急いで何時も食事が置かれてるテーブルに向かう。今の時間は見てないのでさっぱりだが恐らく歩夢がちょうど私に手紙を書いているところだろう。だったら勢い良くその手紙を横から奪い取って破り捨ててやろう。男と接したのが両親以外で歩夢しか接した事ないからなのか独占欲が凄いと思う。でも何故あの時動けなかったのだろう?口に出すのは恥ずかしいがあの時の私は歩夢しか見ていなかったような気がするのに...知らず知らずに気持ちが爆発し、起きたら鉛のように体が重かった。
でも今なら言える、体も動かせる。そう思っていたのだが...
「あれ、変わってる...?」
その場所には歩夢の姿は無かった。テーブルの上には『愛してる』と書かれた紙と、歩夢が魔王を封印し時に持っていた剣の鞘だけが乗っていた。
え、なんで?
鞘のみの意味は知っている。戦場に行く男が女にこれを見て俺を思い出せ、という意味で置くものだ。
だが違う。
それに手紙の内容も違う。
ホントは『俺を真っ先に見つけて話しかけてくれ』そう言う内容だったが何故か違っている。
どういう事?なんで記憶が違う?それとも今見ているものが違う?
でもあの歩夢は歩夢だった。何時もニコニコしてて、でもピンチの時はどこにいても助けてくれる。時には厳しい言葉を言われる時もあったけどその内容が毎回私が危険な事をしようとしていた時だ。でも毎回最後に優しい顔をしてゆっくり頭を撫でるそんな歩夢が好きだった。
どんな時も、危険な時も私に「好き」その2文字を言わないで危険な戦いをし、ほんとに私の事が好きなのかな?そう疑問に思う事が多々あった。だけど日々過ごすたびのあ、私のことを大切に思ってる?そう思わせる事が沢山あった。
そんな歩夢が直接では無いけど、手紙でそんな事を言う人では無いって事を知っている為疑問に思った。
何度も考えた。もしかしたら偽者かもしれない、もしかしたら誰かが見せた幻影かもしれない、もしかしたらもしかしたら...
結局結論が出ないまま数分が経った。
「とにかく急がないと!」
時間切れだと思うが玄関を思いっ切り開け、外に出ようと顔を出した瞬間的。
「何が...おきてるの?」
外の風景はガラッと変わり、所々何かに抉られた様な跡や何か大きい物に踏み潰された家などがあった。
炎、氷が組み合わさって出来た柱や、それを砕いたと思われる巨大な棒が落ちていた。
「...歩夢!?」
何がなんだかさっぱり理解できなかったが頭上で繰り広げられる戦いが目に入りどうでも良くなった。
空中で戦闘を繰り広げているのが歩夢と、翼を畳み、落下するように歩夢の攻撃を器用に避ける...アクの姿があった。




