第八十三話 過去2
「始めまして。神です」
「はぇ?」
目が覚めるとそこは白い空間があった。体を見てみようと顔を動かすが見えない。いや、動かせないと言うべきか。
ただ見えるのは真正面にいる顔にベールがあり男か女か判断出来ない人物がいた。そんでもって開幕早々「神です」って自分から言っちゃったし...え?変人?
「変人ではないですよ?...貴方は不慮の事故...ん?事故?」
じっとこちらを見つめ(ているような)そう言った。
と言うか事故?ってハテナをつけるんじゃない、俺が恥ずかしくなるから。
「まぁ良いでしょう。いきなりですが貴方は異世界に行ってもらいます。拒否権は無いです。質問は無いですね?はい、わかりました。ではその世界で勇者になってもらいます。魔王を倒しすと私にまた会える機会がありますが正直無理だと思うので行ってらっしゃい」
そう言って俺に有無を言わせずに突如現れた光の柱に吸い込まれ体が薄くなってきた。
「ちょ、は?な、何でだよ!説明ぐらいしろよっ!」
柱が現れると何故か俺の体が見えるようになり、これなら!と思い体を動かしてみるが全く効果が無い、恐らくこの柱のせいだと思う。
ジタバタしている俺を見て自称神は馬鹿にするように笑い「あ、もし失敗してしまうと勿体無いので貴方のコピーを取らせてもらいますね?これなら私自ら貴方と会話出来たり下界に行けたりするので」と言い、言い終わる前に俺の体は完全に透明になった。
「これで...やっと...」
顔を隠していたベールと取り、今下界に送った少年の顔に喜びが隠せないのか、口元を緩ませだらしない表情を見せた。
「六条 歩夢。お前でこの世界を私の物に出来る...!!!」
「へぇ~俺って六条 歩夢って名前なんだ」
こっそり姿を消していたアクが出てきた。
「お、お前はなんだ!?いつからそこにいた!?」
いきなり現れたアクに驚き、驚きつつもこれまた何処からとも無く取り出した杖をこちらに向けそう言った。
「いつからって...そっちが呼び出したんじゃない?」
「まさかお前...」
「そう。六条 歩夢。世界を云々言ってるとこガッツリ見てたし言い訳出来無いよね?」
六条 歩夢ことアクは、自分の部屋で起きた時に何故か意識だけはあるものの体が動かせない、と言うことに気付いた。もしかしてこれって強制イベント?と思い認識阻害をこっそり自分に掛けておいた。まぁ案の定自称神と名乗る人?が現れた。あった時に鑑定をしてみたが、レベルは物凄く低かった為、出会った時には意外と呆気無く体も自由に動かせるようになった。その為謎の柱が出てきた瞬間にそこに〝俺〟と言う存在を置き、俺が行ったのだと錯覚させたのだ。ご都合主義乙って言いたいとこですけど。
まぁそれでこっそり話を聞いてみると俺の本名や、相手の夢?等を大きく叫んでいるところを見ていた。
「まぁなんで記憶が戻っているのかはさておき、先にぶっ倒しておかないとな...」
そう言い俺が指をぽきぽき鳴らしながら近づいて行く。
「い、いや、まて話をしよう!それからこれからどうしようか考えッ!?」
言い終わる前に鳩尾に渾身の右ストレート。ついでに肩も抑えて膝で腹を攻撃。おうおうセイウチっぽいオットセイのような声を上げながら腹を抑えてうずくまる。
「長年の恨みここで晴らしてもらうよ?」
そう言って俺の顔をした奴の髪を握り持ち上げる。口を開き『龍種のブレス』を放とうとした瞬間。
『そこまで!!!』
無駄に低く男らしい声が響き渡った。




