第八十話 ショートカット
猛スピードのまま急上昇し、魔力を込めとある言葉を言った。
『龍種のブレス』
はっきり言ってこれは魔法ではなく自分の種族である龍人の固有スキルだ。本来は口から出すのだが何となくだが体のどこからでも出るような気がしたのだ。
アクが炎に包まれた相手に手を向ける。相手の周囲の草木はその炎が燃え広がるのではなくどんどん朽ちていっているように見える。正直触ったらアウトだと思う。
相手はアクがどんな技を出すのかは知らないが本能的にこれはダメだ、そう思ったらしく止めようとこっちに向かって走る。
(相変わらず遅いな...)
今度は結構距離もとっているので回避する心配が無い。ゆっくりと深呼吸し、魔力を開放した。
直後、アクの手のひらから霧のようなものが出てきた。
一瞬驚き、これじゃあ倒せなくね!?そう思い大きく翼を広げ一気に距離をとった。
その際翼が生んだ風で霧が前に飛んでいった。
これを見た火だる...まぁ巨体ゾンビは戸惑いがあったものの、自分はこんなものに怯えていたのか!!と自分に激怒し霧を手のひらで掻き消すように振り回した。
...ジュウゥゥゥゥ
巨大ゾンビが霧に触れた瞬間溶けるようにして腕が消えた。
もう死んでいるから痛覚が無いのか、それをいい事に霧の中に溶けこむように入っていき、消えていった。
「...はぁ?」
空中でくるくると回るセリを見つけた。
「終わったよ」
突然のアクの声でびっくりしたのか少し体制を崩し逆さまになろうとしてたが、ギリギリのところで立て直した。
「う、うん。...なんか少し手間取ってるように見えたけど大丈夫だったんだ」
危うく落ちそうになっていた奴が何を言う...まぁ正直少し手強かったけどね。前半だけは。
小さい声で呟いたつもりだったのだがセリには聞こえていたらしく「落ちてないからセーフ。ん?前半だけってと言う事?」少し首を傾けながら言う。
「あのね、最初の時は炎系ダメージが入んなくて驚いたし何よりふっ飛ばされてたもんね...んでこうなったら新技使ってみよう!って感じにおもちゃって出した技がアレ系で瞬殺だったって訳」
それを聞き何か察したような顔をした。え?何その顔?
「はぁ...ま、遠くから見えてたからなんとなくわかってたんだけどね...またかぁ」
「いや、またかぁ...ってダンジョン内では殆どセリ関係だよね?こっち関係無くない?」
アクの言い訳を華麗に回避し、んじゃ進もーう!と勝手に言い出し龍化でよろしく!と言った。スルーすんのは何となく分かるんだけど龍化って...あれやった後って疲れるんだよ?
そんな心の叫びはセリには通用せず、早くしてと言わんばかりに肩をバシバシ叩いてくる。クソぅ...
仕方がないので少しだけ力を抜いたデコピンをおでこに当てた。
うぐっ、と言っておでこを抑えるセリを横目に龍化をし、地面ごとセリを持ち上げた。
『今回は前回の反省を活かしてさっき使った技を組み合わせて見ようと思います』
「嫌な予感しかしないけど...」
頭の上でそう呟くセリ。流石に手に乗せた状態でやるのは危ないので前回と同様頭の上に避難させた。
『うだうだ言っててのしょうが無いしやってみるよ〜!』
体と同様大きくなった翼で空中にいき、口を大きく開けた。
『龍種のブレス』『龍の咆哮』
ブレスで生み出された霧を咆哮の威力で吹き飛ばす。その影響で真下にあった筈の地面が跡形も無くなり大きな空洞になっていた。




