第六十一話 動き出した時計の針
セリが大声で驚いたがまた何時ものセリに戻った。流石に俺でも驚いたわ...
「ふーん、この姿も龍人化のせいなの?」
「いや、今の姿が本物なの。多分だけど、龍人になったからとかは関係無いと思う...」
そう呟き、髪飾りを付け500程レベルを封印しセリと同じ姿に戻った。
セリはうーん、と唸りながら手を顎に置き少しの間考え「なら何でその姿を隠してまでこの学園に通うの?」と質問をした。
「実はね、とある女性から魔王に会いに行けって言われたんだけどさ、魔王の居場所がわからないでいたら勇者と一緒に行けばわかるじゃん!っと思い身長を縮ませ入学した、っていう事なんですよ...」
「そう...ねぇとある女性って誰か言える?」
「え?何で...?」
正直場所が違うと思う。普通「縮ませただとぉ!?貴様何奴!」と突っ込んでくれそうだったんだが流石にそれは無理か...と言うか時代劇っぽいしな。
「いや、私が知ってる人物かと思って...」
「そんな事は無いと思うけどな...だって私と同じ顔だったし。それ以外これと言った特徴は無いし...」
ごめん、ありがとう。と呟いた。え?どうなってるの?
「じゃあ私の秘密も話さないとね」
そう言いセリは手頃な石に座り、昔話を始めた。
「...と言う訳だったんだよね。で、今に至る」
そう一気に言い終えセリはアイテムボックスから水を取り出し口に含んだ。
んで、アクはどうしてるかと言うと...
(え?どうして?全く聞いた事無い話なのに...何で涙が出てるの?俺もしかして悲しくて泣いたのか...?いや、ちがう。多分俺嬉しいんだろう...でも何故なんだ?理由が全くわからないんだが...)
と頭を抱えながら悩んでいた。それを見たセリは直ぐアクに近づき「どうしたの!?」と強く肩を揺すり、アクに聞いた。だがアクは小さい言葉で何か言っているものの何を言っているのかまではわからなかった。
何時までこの様にしていたか...セリはアクを包み込むように抱きながら静かに寝ていた。一方アクの方は身体的な異常も無く変わらぬ様子だったが、目だけは何か決意をしたような目だった。
(ここまで考えたが何も出なかった。それは勿論俺が誰なのか、どんな存在だったのかが分かっていない事になる。だがしかし幾つか疑問に思った事はある。1つ目は最初この世界に来た時に見たあの手紙だ。まぁこれは予想なのだが最後に神より、っと書かれていた。2つ目は幻想神だ。確かこいつは知識を与えた存在だと言っていた。幻想龍は力、恐らく物理攻撃系だ。では知識の幻想神は?と聞かれれば魔法、という事になる。最後に俺のユニークスキル創造だ。これは自分の考えたものに魔力を通すと魔法が作れる、となっていた。元に俺はこの力を使い幾つか魔法を作ってみたが実際のところ他の人も使える魔法だけ、と言うのが分かる)
(結論から言うと俺は幻想神から目を付けられていると言う事になると思う。理由は上で述べた通りだ。これなら俺の記憶が無くとも説明がつく。創造と言う俺とのパスで繋がっている状態なら制限無しで俺を弄くれる筈だ。だがそれなら死なせた方が楽なのに何故やらない?と言う事になる)
まぁ纏めると、俺は何らかの理由によって幻想神から記憶を奪われ、それとも弄くられて記憶が無くなった。セリの話で泣いてしまったのはまだ無くなっていない記憶があった為と推測される。ここで俺とセリは過去に何らかの接点があった筈だ。恐らくセリが言ったとある女性とは幻想神のことで間違いないと思う。
まぁ記憶は後々解決するとして問題は幻想神と繋がっている『創造』をどうにかするしか無いんだろうな...
次回層のボスが待つ階段前で解決する方法を模索しながら、気付かぬうちに夜が更けた。
アク「「( ̄ヘ ̄」




