第127話 セリの本気
セリが作った槍が幻想神に突き刺さる。
「グハッ!」
刺さった槍を力ずくで抜こうとする幻想神の腕を思いっきり右手に持った杖で殴る。ホームラン。
流石に取れはしなかったが骨は折れた。次はどこを狙おうか?
「舐めるなよ...クソがぁ!!!」
セリの反応を見て怒ったのか刺さった槍をそのままにして喰らい付こうとする。一瞬でセリの視界から消え、刹那。後ろに現れ首を刈っきろうと牙を見せるが...
「...バーカ」
嘲笑うように呟き、指をパチンッと鳴らす。指を鳴らす音と同時にセリの後ろで構えていた幻想神の腹に刺さっていた七色の槍が爆発した。
肌を焼かれ、所々黒くなった肌を見せる幻想神に追い打ちをかけるようにセリが放った魔法が当たる。
時に凍らし時に切り刻む。
アクが戦っていた時の傷に上書きするようにつけられていく後を見たセリはニヤッと笑う。
「アクの時のように攻撃しようとしたら爆破されて瀕死。しかも追い打ちをかけるように私の魔法の嵐。耐えられるものなら耐えてみれば?無理だと思うけど」
肩にかかった髪を掬いながら言うセリを見た幻想神はやっと下に見られてることを知り、怒り狂った様に回復途中のアクに向け急降下していった。
背を向けて降下する幻想神を見ながら呟く。
「世界と私の名の下に。『反射』」
セリの言葉と幻想神の攻撃が当たるのは同時。致命傷...とまではいかないものの治療中のアクに攻撃を与えられた。そう思い込んでいた幻想神は自分の腹に槍で受けた以外の穴がある事に気づいた。
(まさか!?)
ダンッ。
地を蹴って逃げるようにアクから逃げた幻想神は空に浮かんでいる奴を睨み付ける。
「あれ?流石に攻撃はしないと思ったんだけどな...私の勘違いか、幻想神の馬鹿っぷりがそうさせたのかは言わずもがな?」
何も持っていない左手で口を隠し驚きを隠せない...笑いが隠せないセリ。
油断さえしなかったら楽に殺れたと思うんだけどな...アクってそんな奴だっけ?
流石に弱すぎると感じたセリはそんな事を思い始める。まぁ強くなり過ぎた説は無きにしもあらずだけど。
「カウンター...ふむ。もういいか」
自分の体を見つめそう言った幻想神は自分の体を抱きしめるように腕を巻き、顔を沈めた。
「また姿変わるの!?流石に多過ぎじゃない!?」
一応大声でツッコんでみるが別にボケでも無いと思い、拳程ある火球を数百個程飛ばしてみた。ヒット。だけど効果は無いみたい。一応皮膚が焼けてるのは見えたけどこの状態を変えられる訳では無さそう。
「でも一応ッ!!」
自分が放てる最大の魔法を打ち込んでからアクを回収。そして脱走してからの様子見。巨大化はしないと思うけど先制攻撃受けたら嫌だしね。
杖を通じてセリの魔力を外に出す。セリが出した魔力は全身を包み込むように渦巻き、そこを中心に激しい風が吹いた。
(もうそろそろかな?)
そう思い杖をうずくまってる幻想神の方に向け...放った。
「...地獄の焔」
セリの魔力と羞恥心を削って生み出した魔法。
セリの背後に何十倍もの大きさの門が現れゆっくりと扉が開く。人がやっと通れる位まで開くと龍の吐息みたいに吹き出した紅い炎が溢れる。
空気を焦がしながら紅い炎が出終わると次は吸い込むように風が発生し、幻想神を引っ張りこむように扉の中に引きこむ。瞬間勢い良く扉は締まり、何処からか出て来た鎖によって固く閉ざされる。
...うん、早く逃げよ。
地面に落ちた淡い光に包まれたアクに優しく触れ、宙に浮かせる。
それを確認したセリはゆっくりと、だが早く空を飛ぶ。救急車ならぬ救急飛行ですな。これじゃあ飛びながら助けてるみたいだから却下かな。
閉じ込めてる間にさっさと離れましょ。
「これで死んでくれれば一番いいんだけどね」
チラッと自分が生み出した門を見て呟いたが、直ぐに正面を見て離れていった。
説明しよう!
地獄の焔とは地獄っぽい所に繋ぎ、そこから溢れ出す熱気によって相手を殺す技である(第一段階)
もし倒せなかった場合は対象を吸引して地獄っぽい所に閉じ込める(倒せた場合でも証拠隠滅になるから便利♡)内部の熱気、そこに住む未知の生命体、圧倒的我ら人類の敵諸々詰め込んだ空間に引きずり込まれた相手は無条件に殺られます。倒せなかったら人間辞めてるんで直ぐ扉破壊されて終わりまする。
です!