第125話 選手交代
顔が無い女がネチャっと音が聞こえるように口を広げ、唾液を垂らしながらアクを見る。
「女...よりもこっちか」
そう言うもののセリの方を一切見ずに呟く。ほんとにこいつ何なんだ?一応幻想神って事は分かるんだが見た目もだが性格が全然違うような気がするんだが...。
アクが考えて言えていると正面の女が嫌らしくニタァと笑った。
「考える余裕...お遊びは終わり」
最後まで聞き終わる前に背中に嫌な汗をかき本能的にしゃがんだ。その瞬間正面にいた女が一瞬でアクの後ろに移動した。
「...無理ゲーだろ」
額に浮かんだ汗を左手で拭いながら呟き、振り向きざまに出現させた剣で斬る。
キンッ
アクの剣と女の歯が交差するが危険だと判断したアクが女を蹴り、一時離脱。アクがいた場所に女が出した痰が飛んだ。絶対アレ当たったら溶けるやつだって...。
ちょっと気を取り直して...って休む暇も無く女が襲って来る。マジかよ。
「...!」
「チッ!」
次は口だけではなく手も足も使ってきた。それを避け、時には受け止め、隙が出来たら欠かさず攻撃。みるみる倒せないと思ってた相手の体に傷が増えていく。だがそれと同時にアクにも隠し切れないほどの疲労が溜まったていた。攻撃されないように避けていたが流石に完璧には避けきれずに攻撃を受けてしまう。まぁ効かないんだけどね?
口にさえ気をつければ結構行けるのです。
肩で息をしている女に畳み掛けるように左手を引き絞り...攻撃した。
その直後攻撃を受ける瞬間女が口を開き、少し黄色がかった痰がアクにかかった。
シューと音を立てながらアクの体を溶かしていく。
既にセリに作ってもらった服はビリビリに破れ、魔術で着ているように錯覚させているだけだ。
(クッソ...溶けていってる...のか?)
シューと何かが溶けているような音はするものの特にこれと言った痛みは無い。ただ、体に赤い線が見えているだけだ...え?
アクの体は魔術によって包まれ、自分が「絶対に効かない」と思っていれば思った通り何も効かないのだ。だけど何故か自分の体に傷みたいなのが出来ている。それに...
「...カハッ」
あー、どうやら通るみたいですね。と言うかこれ、絶対過去に受けた傷だよね...だから実際、半身削られたようになくなってるし勿論右腕からも血が...まぁソッチの方が無くなってるんでよくわからないんです。
(恥ずかしいぁ...カッコつけて言ったのにもう死にかけだってね...てかこれ俺じゃなかったら即死もんよ?)
感覚がなくなってきた。頭がチカチカする。流石に浮いてられないか...。
ゆっくりと地面に向かって落ちる。チカチカする視界の中で見えたものは顔無しの女が口を大きく広げアクを食べようとしているところだ。
(せめて遠くにでも逃げてればいいな...)
意識が無くなる瞬間本来聞こえる筈のない...いや、ずっと待っていたのかもしてない____の声が聞こえた。
「世界の名の下に癒やしを」
シャリン。
鈴の音か、それともただの空耳か。今のアクにはどうだってよかった。
彼女が持つ、杖が一瞬光その光がアクを包む。すると徐々に傷が塞がっていった。
薄っすらと目を開けるアクに近づき彼女が耳も元で呟いた。
「後は私に任せて」
「...逃げてろって意味だったんだけどな...ごめんな」
気にしないで。口には出さなかったものの背中にあるマントを手で...あ、触れないのね。まぁ頼り甲斐あるその背中で物語っていた。
一瞬で顔を変え、女に向くと大声で...。
「この世界の名にかけて貴方を滅ぼす。クリセリアの名にかけて!!」
杖を強く振り、七色の槍を生み出し姿形も生まれ変わった幻想神に突撃していった。
不定期になりそうです...まぁ一番の山なんでスンマセン(´。・д人)
あと数日の不投稿スンマセンでしたぁ!この話考えてました(; ・`ω・´)