第106話 漆黒の龍でぇす!
とにかく探さないと始まらない訳で...あれ?始まってすらいなかったんだっけ?まぁこの世界はテストプレイって言うイメージかな。試練失敗したらどうなるか知らんけど。
と言う訳で俺は今まで背中の後ろにチョン、と乗っているだけだった翼を広げ(収納することは出来なかったけど小さくすることは出来た)空を飛ぶ準備をした。セリの作った服のフィット感が半端じゃなくて安心感が物凄いッス。
セリは相変わらずの空飛ぶ魔法。通称セリぃフライ。ワザと伸ばしてるのがポイントだ。...俺が勝手に名付けただけだけどね。
〝魔神龍〟となった俺が前までのノーマルな翼と違い漆黒のオーラを纏った翼に進化したのだ!...まぁ飛ぶ時に視界が塞がるから出してないけどね。
んで各々の方法で空に飛び立った訳なんだけどさ...俺思うに空飛ぶよりバイクとか乗り物を使ったほうが早いんじゃないか?って思うんだ。この世界の技術力では使用出来ませーん。ん?馬車?アイツは論外だ。
とまぁそんな感じで飛び立った訳なんだがいざ探すぞ!って思い意気揚揚と前に向かって飛んだんだけど目の前に大きい人がいるのが見えてねぇ...一瞬で見つけてしまったわ。早いに越した事は無いけどさ、なんか状況的にさぁ?
と、そんなふうに考えていたらセリに突かれてしまった。集中しまーす。
えーと、見た目は完全武装の巨人ですね。しかも丁寧に近付いたらダメですよ的な真っ赤なオーラ...って、あれ完全に魔法じゃね?
フルフェイスにすっげぇ重たような鎧、左手にはその圧倒的な身長を上回る大きさの縦と龍を象った槍ですね。完全に幻想龍要素がそこしか無いのですがそれは。
唖然としている俺達を知ってか幼女巨人は地響きと思わせるような声を上げ叫んだ。
『ウゴオオオオオオオオオオ...!!!』
「うるせ!」
「ッ!?」
俺は翼で全身を包み完全防御(?)セリは普通に手で耳を抑えた。それが普通ですよね。
その後幼女巨人は右手に持った槍を大きく振りかぶり...投げた。
ビュオン!っと空気を切るような...いや、押し潰すような音を立てながら俺達に向かって飛んでくる。
「え、ちょ、どうすんの!?」
取り敢えず驚く俺。ほんとにどっすんの?逃げようにも横向き台風的な感じで空気の壁が出来て逃げようにも逃げれない状況なんですね、これ。
内心何故か落ち着いてるアクはさておき...何故か常識人のセリも落ち着いていた。どして!?
「だってアクが龍化で止めればいいでしょ?止められるかは知らないけど信用してるよ?」
「あー、その手ね」
確か龍化って...無くね?『人化』しかないよね?俺の記憶が正しければだけど...うん。マジで無いね。何これ?『開放!』とか言えばなるのか《『人化』の効果が無くなり元の姿になります》...な?
槍が起こす風に負けないぐらいの強い魔力の風がアクの周りに集まっていく。流石にここまで辿り着くのの時間がかかった為もう目の前に...って当たったわ。
アクの周りに起こる魔力の風と幼女巨人が放った巨大な槍が激しい攻防を繰り広げる。
その接戦が数秒繰り広げられ決着がつこうとしていた。
アクを守るように魔力の風が起こっていたのがどんどんと勢いを失くしていった。幼女巨人が放った槍が風の壁を貫こうとした瞬間!
魔力の竜巻の中から真っ黒な腕が出て来て槍を掴んだ。
大きさは槍とは比べ物にならないぐらい小さいがそれを放った幼女巨人と比べるとさほど差は無いように感じた。
そこから徐々にもう片方の腕、足、翼、尻尾等が出てきて最後に顔が出て来た。どれも腕と同じように真っ黒でよく見えないがそのシルエットから考えるに龍化したアクと捉えるのが普通だろう。ただ前と違う点はその天にまで届こうと伸びた4対の翼だ。
完全に魔力の風から出て来た漆黒の龍は手で押さえ込んでいる槍を思いっきり両手で掴み...2つに折った。その瞬間漆黒の龍は見せつけるかのように天を仰ぎ大きく口を開き、耳には聞こえないが大きな咆哮を放ったのだろう。