私の事、好き?
グレイスが男の友達を食事に誘うのは、別に珍しい事では無い。幼少期から何度もやってきた事だ。
だが、その度にドキドキしていた訳では無い。何故、ルークを誘う時だけドキドキしたのだろう。
そういえば、ルークと話していると楽しいのに、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。何故なんだ。何か悪い事でもしてしまったのか。何故、何故、何故――
「大丈夫?具合悪いの?」
悩み事をしているのが、顔に現れていたのだろう。食べる手を止め、ルークが心配してこちらを見てくる。
「ああ、ごめん。何でも無いよ!」
心配されただけで、また胸が苦しくなってくる。
「一応回復魔法かけとくね」
回復魔法をかけられて、いくらか気分が良くなる。どこが悪い訳でもないので、実際は何も起こっていないのだろうが、不思議と安心感があった。
落ち着いた所で辺りを見回すと、男女二人でいるのはルークとグレイスだけだった。
ふざけ半分で言ってみる。
「なんか私達、付き合ってるみたいじゃない?」
「え!? そ、そんな風に見える……?」
ルークはあからさまに恥ずかしがっていた。可愛い。そんな反応をされたら、からかいたくなってしまう。
心臓が激しく動くのを感じながら、グレイスはあることを聞いた。
「――ルークは、私の事、好き?」
「え、そ、それは……まあ……す……」
「お邪魔するわよ」
その答えは、長い黒髪の少女の声によってかき消された。
「ルーク、ジュースいる?」
ルークはまだ赤い顔をクレアの方に向け、答える。
「いらない。どうせまた変な薬入ってんでしょ」
クレアは一拍置いたあと、悔しそうに言った。
「……チッ、バレたか」
「マジで入ってんのかよ!」
「ちなみに、前回より量多めにしてあるわ。ジュースに溶けても大丈夫なはず」
「何が大丈夫なんだよ!」
「あなたのちっぽけなキノコを奮い立たせるのには十分だと言うことよ」
「今食事中だぞおい!」
「まあまあ、二人とも。ご飯食べちゃお? ね?」
グレイスが止めに入ると、二人はようやく静かに食べ始めた。
ふと、ルークに「好き」と言われた事を思いだし、またドキドキが収まらなくなる。苦しいのに、嫌ではない。
こんな状態になる気持ちを、グレイスは聞いたことがあった。
本や劇によく出てきて、とても美しく、時に残酷な感情。
その感情を持つと出る症状と、今の自分の状態を重ね合わせて、初めてグレイスは気づいた。
自分がルークに、恋をしているんだという事を。
その感情を誤魔化そうとも、否定しようとも思わない。
肯定した上で、やるべき事は二つ。
ルークに《友達として》好き、ではなく《女の子として》好き、と言って貰う事。
もう一つは――
邪魔になるものを、なるべくどかしておく事。
「グレイスちゃん、アピールするのは合法だけど、人のアピールを妨害するのはルール違反よ?」
「っ……」
このやり取りを見ても、ルークは「何かあったの?」とでも言いそうな顔をしている。
これは、落とすのに時間がかかりそうだ。