筋トレ競争
ここ、サリヴァン戦闘学園のような戦闘専門の高校に入った生徒は、基本的に将来はこの国の兵士になる。
兵士と言っても、他国を攻める訳ではない。それは国際法で禁じられている。
兵士の仕事は主に二つ。
様々な人から依頼を受け、その依頼を達成する事と、いざというときに国を守ることだ。
その兵士は三つに分類される。
魔術師、剣士、そしてその両方をやる総合戦士。
ルーク達は既に何を目指すかが決まっていて、目指す物ごとに、魔術学科、剣術学科、総合学科と別れている。
寮は違う学科でも同じだが、授業は別々に行う。
そして入学式の直後、ルークが選んだ総合学科の授業は最も早く始まった。
ルークが集合場所の闘技場に着いたと同時にチャイムが鳴る。ギリギリセーフ。急いでクレアの部屋から逃げ出しておいて正解だった。
「皆さん、初めまして。あなた達の授業を担当する、ミラ・シャノンよ。よろしく」
年齢は恐らく20代前後。かなり若く見える。
「今日は入学初日だし、筋トレ競争でもしましょうか。名簿番号順に十人ずつ別れて、まず、腹筋と腕立て40回ずつ。その後闘技場一周。それを、一人一回、合計十回やってみて」
皆は動き出し、あっという間に三チームに別れた。
第一走者が位置に着く。
「よーい、初め!」
そして、先生の合図に合わせて走り出した。
恐らく皆魔法で筋肉を強化しているのだろう。腹筋と腕立て40回ずつを30秒ぼどでクリアしていた。
そんな中、ルークのチームはダントツのビリだった。そしてその後も順調にビリをキープ。最終走者のルークにバトンが渡った時には、もう一位のチームはゴールの手前40m付近まで来ていて、二位のチームですらあと80m程度という有り様だった。
まあ、ビリでも仕方ないか。そう思った時だった。
「言うの忘れてたけど、1位のチーム以外の人は、放課後に闘技場の掃除お願いね」
何ですと!?
闘技場掃除は、この学園の学園三大苦行に数えられる程つらい。
闘技場が半端ではなく広い上に、それに伴って観客席の数も半端ではないからだ。
全部掃除するとなると、三時間はかかるだろう。絶対にやりたくない。
何としても一位を取る!
ルークは順番が回ってくると同時に全力で腕立てと腹筋を始め、1秒とかからずにそれを終えた後、走り出した。
「……速い!」
見ている者は、速すぎてそれしか言うことができなかった。速すぎてどういう状況なのか、全く見えないのだ。
そう言っている間にも、ルークは1人追い抜かし、二位に躍り出る。
「いける!もうちょいだ!」
「頑張って!」
ルークは仲間の声援を聞きながら、一位の背を追いかけ、並んだ、その時。
ルークの横から足が出てきた。
全速力で走っていたので、回避できずに躓いてしまう。
その隙に、足をかけた本人は知らん顔で走って行った。