危ないパートナー
グレイスとルークが寮に着くと、部屋の場所が張り出されていた。
どうやらルークは、107号室らしい。107号室のロッカーを専用のパスワードで開けると、中に鍵が入っていた。
そこでグレイスと別れ、107号室に向かう。
鍵を開け、部屋に入ると、机の上になにやらメモがあった。
『あなたのパートナーは108号室の方です。挨拶を済ませておいて下さい。』
寮での行動は、パートナーと一緒にしなくてはならない。荷物を置き、知り合いだと良いな、という期待を持ちながら108号室のドアをノックする。
「はい。今行きます」
ルークはこの声を、前にも一度聞いたがあるような気がした。
数週間前、闘技場で聞いたような……
ガチャリという音をたて、扉が開く。
中から出てきたのは、黒髪ロングの美少女だった。
その少女は一瞬驚いた顔をした後、質問をしてきた。
「もしかしてあなた、私のパートナーだったりする?」
何だか答えにくいが、隠す必要も無い。
「うん、そうだけど……」
その答えを聞くと、少女はドアを閉じた。
「……俺、なんか気にさわる事した?」
五分後、彼女がもう一度扉を開けた。
裸の上にワイシャツ一枚という格好で。
彼女の豊かなボディラインが強調される。
「ちょっと!? なにしてんの!?」
「普段着よ」
「いや絶対嘘だろ!捕まるぞ!?」
「まあ良いから。中に入って」
「嫌だよ!」
「あら、そんな事言って良いのかしら?」
「それってどういう……」
「私が今悲鳴をあげたら、どうなると思う?」
「すいません入ります」
恐喝に近い手口で部屋に入れられ、扉を閉められる。
「あの、帰っちゃ駄目?」
「先せ……」
「申し訳ありません許して下さい」
これでは逃げられそうもない。
「まあ、悪いことはしないわ。せっかくパートナーになったんだから、自己紹介くらいしましょう」
自己紹介くらいなら良いだろう。ルークは彼女を見ないようにしながら、自己紹介を始めた。
「ルーク・カルヴィン。よろしく」
「自己紹介は相手を見ながらしなさい」
「そうして欲しいならちゃんとした服着ろよ!」
「次逆らったら、あなたの人生メチャクチャにするわよ。まずは新聞にでも書いてもらいましょうか。見出しは……そうね、〈少年、黒髪の魅力に逆らえず〉なんてどうかしら?」
まずい。ここで逆らったらマジでやられそうだ。とりあえず命令には忠実に従おう。
ルークは彼女の顔を見た。
「ルーク・カルヴィンです。よろしくお願いします……」
「じゃあ私も。私は、クレア・エヴァンズ。よろしく」
鏡が無くても、赤くなっているのが分かる。
「あなた、顔が赤いわよ。風邪でも引いたんでしょう。これ、飲みなさい」
そう言って彼女、クレアが薬を四錠渡してきた。逆らったらどんな目にあうか分からない。
そう思ったルークは、何も言わずにその薬を飲み込んだ。
その直後。
何故だろうか。だんだんルークの体が熱くなってきた。
なんというか、体のある一部分が硬くなって、白く濁った液を出してしまいそうな感じだ。
その時、近くに置いてあったクレアの鞄から、怪しげな薬のパッケージがこぼれ落ちた。
『ビ・ヤックX 破壊力抜群!一瞬で男をその気にさせる!ヤり過ぎ注意!』
「なに飲ませてんだあんたは!」
ルークは全速力で部屋を飛び出した。
ルークが居なくなった後の部屋は、とても静かだった。そのせいで、クレアの声がよく響く。
「ごめんなさい、あなたと話すとドキドキして、普通でいられなくなるの……」
泣き声と共に。