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最高の勝負

 前に進み出た私は、すぐに攻撃を始めた。

 手をかざし、闘技場の中心で炎の渦を作る。一気に始末してしまおう。

 幸いもう一人の仲間は防御魔法が使えるし、観客席には防御魔法がかけてあったので問題ない。

 今頃相手は黒焦げだろう。そう思ったのだが、念のためさらに炎を強める。


 その時。


 超高温の炎をものともせず、一人の少女がこちらに向かって来るのが見えた。どうやらあとの四人は倒せたようだが、私は目の前の光景が信じられなかった。

 中心の最も高温になる場所にいるのに、完全に効いていない。

 私を除けばこの炎に耐えられる者はいなかったのに。

 その少女は立ち止まると、提案をしてきた。


「一対一で戦ってもらえませんか? この勝負は、邪魔者無しでしたいんです」


「私もそうしたかった。じゃあ、始めましょうか」

 

 断る理由は無かった。魔法が効かなかったのには少々がっかりしたが、それ以上に興奮してもいた。

 この人、どれだけ強いんだろう。どんな戦い方をするんだろう。楽しみで仕方がない。私は笑みを隠しきれなかった。


 何の合図もなく、勝負は始まった。私は炎を、彼女は氷をぶつけ合い、どんどんその威力は増していく。


「最高です! ここまで強い人と戦ったのは初めてですよ!」


「同感。大抵の人はここでリタイアしていく」


「じゃあまだ、本気を出せますよね?」


「ええ、もちろん」


「じゃあ、行きます!」


 彼女はそう言うと、今までのものより一回り大きい氷の塊を投げてくる。私もそれに対応して、炎をより強く燃やす。何度も繰り返し、繰り返し。

 その度に、私の興奮は高まっていった。


「そろそろ決着をつけましょう。時間切れなんて御免ですから」


「ええ。最後は、本気の本気で、悔いの残らないように」



  「「誰にも文句の言えない、決着を。」」



 二人同時にそう言った後、私は今まで使った事もないような魔力を使い、幾度となく使ってきた炎を形成する。

 相手も、今までとは比べ物にならない大きさの氷の塊を作った。


 そして、両者を激突させる。

 自分の全てを使って。

 一欠片の後悔も残らないように。


 会場は揺れ、天候は荒れる。だが、そんなものはもう気にしない。いや、気にしてはいけない。

 この勝負が無駄になる。


「絶対に、負けない。エヴァンズ家の誇りにかけて、あなたを叩き潰す」


「いいえ、勝つのは私です! 勝って、勝って、この学園の一位を取るんですから!」

 

 押しては押され、押されては押し返す。

 お互い、一歩も譲らない状況が続いた。


 だが、どんなに素晴らしい物にもいつかは終わりが来る。



 このままずっと戦っていたい。心からそう願ったが、その願いは叶わなかった。

 魔力の限界が近づいて来たのだ。瞬く間に炎の勢いは失われていき、氷の塊がこちらに向かってくる。


 負ける。そう自覚してなお、私は笑顔でいれた。

 今負けても、悔いは無い。

 こんなに素晴らしい物を、全力で楽しめたのだから。


 そして氷は私に直撃し、私の意識はそこで途切れた。




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