王国有数の名家
しばらく歩くと、学園が見えてきた。さすがは王国一の学園だ。とても大きい。
受付を済ませ、中に入ると、掲示板の前に人だかりができていた。
この受験は、作られたチームのトーナメントで行われる。そのチームの張り出しがあるようだ。
ゆっくり前に進んでいくと、段々内容が見えてきた。
《1チーム10人とし、上位12位以内に入ったチームは入学を約束する。ルーク・カルヴィン チーム8》
1チーム10人で92チームあるので、合計920人。定員は120人なので、なかなかの倍率だ。約八人に一人しか受からない。
だが学園側は、上位12位以内ならば受け入れてくれるらしい。
ならば簡単。そこを目指すだけだ。
ルークは控え室に向かって行った。
控え室に入ると、既にルーク以外の全員が揃っていた。
「遅い。五分後にはもう試合開始だから、早く準備して」
黒髪ロングの真面目そうな女子にそう言われたので、急いで持ってきていた短刀を装備する。
ルークの準備が整うと、チーム8のメンバーは闘技場に入って行った。
闘技場に入ると、相手チームは既に準備が終わっていたらしく、こちらを待ち構えていた。
正直に言って、相手はたいして強くはない。訓練を積んだので、ルークには分かる。全員倒すのに10秒もかからないだろう。
考えている内に、時間が経っていたようだ。試合が始まった。
「うおおおぉぉ!」
敵数人がこちらに突っ込んでくる。仲間を数人倒した後、こちらに向かって来たので、ルークは一瞬で後ろに回り込み、急所に一発ずつお見舞いしてやった。
すると今度は残った敵がルークに攻撃魔法を飛ばしてくる。それも、かなりの速度で。
チーム8の誰もが、仲間が一人減ったな、と思ったが、ルークはそれを楽々かわしてみせると、逃げる間も与えず攻撃魔法で敵を吹き飛ばした。
そうして初戦を勝ち上がった後、チーム8の勝利は続いていった。
あの黒髪の少女も強いらしく、敵を大量に倒していった。
だが、六試合目でそれは崩れる。
相手も試合を重ねてきているというのに、なかなか強そうな者が五人も残っていた。こちらはもうルークと黒髪の少女しか残っていないので、数だけで言えば不利な状況だ。
その時不意に、彼女が話しかけてくる。
「今回の相手はかなり強い。私が倒すから、ここで待っていてくれる? 今あなたを失うのは惜しい」
どうやら、実際より弱く見られているようだ。この程度の相手なら余裕だが、彼女の実力を見るという手もアリだろう。
「分かった。下がってる」
「ありがとう。エヴァンズ家の名誉にかけて、全力で戦います」
「え?」
その声を彼女は聞くこと無く、攻めに行ってしまった。
エヴァンズ家は、この王国有数の名家である。