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前期 《帝国1》

さて、更新!時間がだいぶ空いてごめんなさい!理由としては、リアルが忙しい!あと、性懲りもなく、<Novyi Mir><六神七王国八王記>に続く、三作目の構想を考えてた!まぁ、僕はこの通り文才がなく、プロを目指してるわけでもなく、ただ純粋に小説が好きでやってることなので!とにかく、思いついたので、いずれ載せたいと思います!

マルクス将軍は目の前にいる男…上将軍ガイウスをジッと見つめていた。


ガイウスは巨大な盤を広げ、盤にはユーロピアの地形が詳細に描き込まれている。その上面に広がる多くの駒を一人で動かしている。



そして、自陣を示す青い駒が敵の赤い駒を蹴散らし、赤の本陣を潰したことにより、戦争は青の勝利となった。



「これで100戦目、結果はどうですか閣下殿」

マルクスはボソボソとしゃべる


「96勝4敗だ。マルクスよ…お前ならどう動かす?」

ガイウスが尋ねる


「赤の駒を持ちましょう」

マルクスは赤の駒を持ち、進める



結果は青の有利な引き分けとなった


「ふぅむ、流石は“不敗”だな。戦術では敗北だが、戦略の観点ではユーロピアは大勝利なのだろう?」

ガイウスは顎をさする


「そして、マルクスよ。儂の下で学ばんかの?いやぁ~ルキウス君は優秀だが、いささか固すぎてな、お前のような戦略と戦術を兼ね合わせれるような者がほしくてな…」

ガイウスはマルクスをジッと見つめる



「買いかぶりですよ閣下…俺にはには戦略というものがわからない。この時代で閣下以外戦略を理解するものはいませんので、私は愚か、あのヒシャームですら理解が出来ませぬ。この度の遠征…負けるのが目的なのでしょう。何故負けなければならないのかが俺には理解できない」

マルクスは驚きの言葉を放つ



「はーはっはっはっは!良くわかったな!流石だ!そうだな…今回の戦争…是非ユーロピアに勝って貰わないと困るのでね。やはり、さじ加減が難しい!だから大将軍を全員呼んだのだよ。今は負ける理由…それはまだ早いのだ。ユーロピアを手中にするにはまだ早い。お前がユーロピアを欲しがってることはよくわかっているが待ってくれ」

ガイウスは眉を八の字にする



コンコン…扉がノックされる


「ルキウスです。入ります。ガイウス大将軍…他の大将軍が揃いました」

下将軍ルキウスが告げる


マルクスを確認したルキウスは顔を歪める。そこには嫌悪の色が浮かび上がる。そして嫉妬の色も…


「マルクス大将軍…久しぶりですね。今回の日が昇る地(マシュリク)の陥落…おめでとうございます」

ルキウスは顔を歪めながら言う


「ああ、次は日が落ちる地(マグレブ)だな」

マルクスはボソリと呟く




後世の歴史書によると、六人の大将軍が肩を並べて戦う場面は二度あり、これはそのうちの最初である。



繰り返しになるが…後世の歴史家達がこの時代最高の将軍を選ぶとしたら、マルクスか、ヒシャームのどちらかであろう。


だが、この時代で、最も優れているとされている将軍はこの二人ではない。最高といわれたマルクスとヒシャームですら彼の技術には及ばない。彼こそが、世界最強の軍の頂点に立つ男…ガイウスである。



かつて、帝国(ツアラ)がビザンティウムを残して、全ての領土を他国にむしりとられた時、総大将として君臨し、領土を取り戻した男である。将の資質としては、戦術面では平凡である。定石を使い、常に後手後手で、戦いを進める。故に、普通の敵では決して負けないが、強者との戦いでは…勝率は芳しくない。しかし、これは平原での戦い限定である。攻城戦や防衛戦では全体に渡って高い勝率を誇る。


しかし、これだけではマルクスやヒシャームは愚か、他の大将軍にも及ばない。彼を最高の将軍にたらしめたのは、そのたぐいまれなる戦略家としての力である。彼は世界で唯一100万の兵を指揮できるのである。そして、戦いの前に駒を使いシュミレートするのはこの時代では彼一人であり、実際100万同士の戦いでは、高櫓の上で実際の戦場を眺めながら、手元にある地図と駒を用いて指揮する様はまるで棋士のようである。


そして、帝国(ツアラ)では戦争を決定するのは皇帝(ツァーリ)ではなく彼である。いつ、どの国に、どのルートで、そして何万の兵力か、侵攻させる将軍は誰なのか、目標は、戦後の動きは。これら全てを彼一人で判断するのだ。そしてその判断は全て帝国(ツアラ)に益をもたらした。皇帝(ツァーリ)の絶対的な信頼、全兵士、全臣民の尊敬を全て欲しいまま手にした男である。







残りの大将軍が部屋に入り、六人は席に着く


「さて、普段集まらない我らがなぜ、この場に集まったかわかるか?」

ガイウスが問う



「…進行してきたローマへの報復、及び聖地ローマの獲得では」

そう答えたのは褐色の肌、真紅の瞳、白銀の髪をした美女であった。そして、耳が横にピンと尖っている



「それは違う…クラウディア」

マルクスがポツリという



「中央将軍よ…左将軍の間違いとはなんなんだね?この右将軍にも説明を頼む」

豊かなあごひげを生やすガイウスに対し、見事な口ひげをはやす老将が厳顔で問う



「理由としては、今回上将軍閣下が投入すると決めた兵力数は50万、ローマ報復なら大将軍全員を出す意味がない。もし、聖地ローマを確保なら100万を投入するはずだ。あの国の動員数は100万は上る」

マルクスが冷静に分析する


「馬鹿な!あの国の民の数は140万だぞ」

右将軍が驚く


「事実だマクシム。あの国は皆兵制をとっておる。だが、ほとんどはただの農民や女、子供、老人に槍や斧を持たせて突撃させる烏合の衆だがな」

ガイウスが失笑する


「だが、それが面倒だ。理由はいくつかあるが、一つは遊撃戦(ゲリラ)だ。あと、兵士でもない者を殺すと士気が下がる。そして、これが最悪だ…奴らは全員死兵のようなものだ。まぁ、今回は軽く戦争して終わりだろう」


「では、今回の遠征の目的は何なのだ!」

マクシムスが怒鳴る



「それは、儂の口から言おう…神託が降りた」


ガイウスの一言で全員が固まる


巫女(オラクル)が伝えるには、今回のローマが我らに攻め入ったのはどうやら、女神が関係しておるらしい…ユーロピアの民…特に白の民は無意識に女神の奴隷だからの…ルナ様がほかの神々と話した結果、今回の遠征が決まった。目的は女神への宣戦布告だそうだ。しかし、事が事だ…神々の対立がはっきりした今、我々は慎重に物事を起こさなければならぬ…」


これで一回目の会合が終了する




会合が終わり、部屋を出た直後…



「マルクス!」

マクシムスが呼びかける


マルスは振り返り

「何か…」


「お前は知っていたのか?」


「いや…俺は知らなかった。ただ…今回の遠征は勝つ気がないことはよくわかった」


「ふん、ならお前の”不敗”の手腕が存分に生かされるということか…まったく忌々しい!武人な勝つことを考えなければならんのに…ご老公もお前も何を考えてるのかさっぱりわからんわ!」

マクシムスは肩を震わせながら反対方向へ去っていく






右将軍マクシムスは典型的な武人といえる。ガイウスは彼のことをマクシムと呼ぶ。彼は少年のころから軍に入り、着実にキャリアを積んできた。超大国サラセン朝とタタールと数多く戦い、武功を上げてきた。しかし、あるとき、帝国(ツアラ)は未曽有の危機に陥り、帝都を除くすべての地域を失う。その当時、帝都の防衛司令官を務めていたのが彼である。彼は二年に渡る籠城に耐え、結果的にユスティニアの即位と新総大将ガイウスが現れる時間を稼いだといえる。ゆえに帝国の盾と呼ばれている。若いころから最前線で武器を振り回しながら戦ってきたため、策を使うマルクスやガイウスのことは認めているが大嫌いであり、それを隠そうとしない男である。



後年ヒシャームはマクシムスとの闘いについてこう言ったといわれている。「最も戦いたくない将の一人だったよ。一言で言うと堅い。こちらがいくら餌を撒いても食いつかないし、挑発しても乗らない。間諜をおくっても乱れない。まるで石のようだったよ。一見策に嵌めれるかと思えば全然嵌らないしね…結局ぶつかり合いになるんだよ。まぁ、一騎打ちを含めて僕が勝っているけど」



一方でマルクスは「閣下は兵をよく知っている。王道は強いから王道であることを…そして、士気を維持するのが上手かった。ヒシャームは士気を上げるカリスマを備えたモチベーターであるが、閣下は、カリスマはないが、全兵士に愛されていた。それが強力な結束を生み、強力な軍を作った」



「行くぞ…クラウディア」


「はい…マルクス様…」

二人は歩を進めようとして…



「おーい頭、待ってくださいよ~へへへ」


「…何か用ですかウェルキンゲトリクス…マルクス様はお疲れですので…」


マルクスは手を挙げてクラウディアの言葉を遮る


「ウェルキン…どうした」


ウェルキンと呼ばれた男…顔面の至る所…耳、鼻、目蓋、目元、唇、眉にピアスやリングと着け、顔面には真っ青な入れ墨を額、頬、鼻、顎に施した奇妙な男だ。剥き出しになった腕にも入れ墨が施されている


「ええと、うちの”蜥蜴”からなんですけど…敵は五か国で同盟くむらしいすよ!」


”蜥蜴”とは裏将軍が保有する部隊だ。つまりこの珍妙な男が裏将軍である


「わかった…上将軍には伝えたのか…」


「ええ、勿論!今、あっしは頭直属じゃないんでね…あの爺さんの下だから伝えるっしょ」


「なら、報告は終わっただろ!その醜い顔を見せるな!去れ!」

クラウディアが命ずる


「酷いっすよ!姉さん…あっしは頭の為に頑張ったのに!普通ならお礼に頭の女房である姉さんを抱かすぐらいは…ッ~」

ウェルキンは吹っ飛ぶ


ウェルキンを蹴り飛ばし、肩を震わせるクラウディア



「行くぞ…戦はもう近い」




ここでユーロピア史に大きな転換期が生まれる…結論から言おう、帝国(ツアラ)がユーロピアに侵攻したのは全二回、そのうちの一回がこれである。


では、二回目は?



それはいつか語ろう…

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