初期 《ゲルマニスク5》
今回はフリードリッヒとアレクサンダーの名コンビが活躍!
王宮にある王の書斎でフリードリッヒは静かに仕事をしていた。
数多くの秘書を手のように操っていた。
コンコンと扉がノックされる
「入れ!」
「失礼いたします。陛下」
入ってきたのは自分をいつも女装させ、化粧もさせ、最近では風呂場に乱入して髪、眉、睫毛を以外のありとあらゆる体毛まで除去しにくるエーデルワイスとヴァルトラウテを筆頭とする皇女親衛隊…戦乙女ではなく…ゲルマニスク教区統括アレクサンダー枢機卿である
「どうした…」
「はい、先ほど<宣教師>によって、重大な情報が手に入りました。こちらをご覧ください」
アレクサンダーは一枚の紙を渡す
そこには…
「フランクがヤゲローとボヘミアと手を結び、ヒスパニアと手を結んだのか…」
フリードリッヒは眉間に皺を寄せる
「あとこちらを…」
「これは…」
「フランク国王フィリップが指揮する諜報組織<フーシェ>が作ったとされている国力対応表です。裏の世界では高値で流通しているものをなんとか手に入れました」
国力対応表
ゲルマニスク 114(そのうち18がオストマルク)
フランク 74
ローマ 73
ヒスパニア 76
アルビオン73
ヤゲロー 51
ボヘミア 34
同盟市 53
ハンガリア 21
ロマンシュ 6
帝国 784
サラセン朝 751
「う~ん、見方がさっぱりわからん」
フリードリッヒがため息をつく
「この数字は、軍事力、経済力、政治的発言力、人口など様々なものを加味して計算されたものらしいです」
アレクサンダーは説明する
「ということは…わが、ゲルマニスクはユーロピアで頭一つ飛びぬけた存在だな!」
「ええ、中級国家から地域大国になったわけです」
「その地域大国とは?」
「それは…ユーロピア地域では大国だが、世界で見ればいまだに中級国家ということです」
アレクサンダーはバツが悪そうな顔をする
「ふん、そんなのはわかっておる。超大国と比べれば…天と地の差だ。けど…基準がわからん」
「でしたらこちらをどうぞ」
超大国500~
大国200~499
地域大国100~199
中級国家50~99
小国家 ~49
「なるほど…フィリップはこれを下にバランス外交をしてきたのか…しかし、いくらかは解せんな…」
「と、言いますと…」
「なぜ、同盟市の国力がこのように高いのだ…ヤゲローやボヘミアよりも高いではないか?」
「ええとですね…この都市は商業の町として、経済力が段違いに多いのですよ。たとえば、アントワープ、アムステルダム、ブリュッセル、ブリュージュの4都市は超大国の大都市並みの経済力を誇っています。簡単には桁違いの経済力を持っています。そういえば、ローマが都市国家を攻めた時に、ジェノヴァやヴェネチアなどの商業の町の商人とその財産をすべて受け入れたのがこ子です」
アレクサンダーは顔をしかめる
「普通なら、ここを攻めたいところだが…」
「はい、ここはフランクの支配下にある地域です。現在の我々では手の出しようがございません。まぁ、これの通りでしたら、フランクの国力は74に53を加えた127となり、我々の敗北です。それだけでなくロマンシュもフランクの支配下にある状態です」
「そういえば、アレクサンダーよ…アルビオンとはどうなった」
「ええ、それは後で、報告しようと思いましたが…報告いたします」
アレクサンダーは数か月前の出来事を思い出す。
「ここが、アルビオン…うわさに聞いた通り、ユーロピア最後の秘境とはまさにこのことだ」
港がほとんど整備されておらず、現に遠回りして西側のリバプールに到着した。
「お待ちしておりました、アレクサンダー猊下。私はアルビオンで女王補佐をしておりますメアリーと申します」
男性の軍服をなれた感じに着こなす女性がそこにいた
「これはこれは…ミスメアリー、ご足労ありがとうございます」
メアリーは首を振る
「いえいえ、及びません。では、こちらをどうぞ、この馬車でロンディニウムまですぐに行けますとも。護衛の方々は、後続の馬車にどうぞ」
アレクサンダーは馬車の中で、メアリーとの会話を楽しんだ。そして、楽しいときはあっという間に過ぎ、ロンディニウムのバッキンガム宮殿に到着した。
そのまま、案内され、そこで初めてアルビオンを統一した女王エリザベスと対面する。
第一印象は…まるで、妖精のような美しさを持つ少女だったと記憶している
「ご機嫌麗しゅうアルビオン王国女王エリザベス…私はゲルマニスク教区を管轄させていただいておりますアレクサンダーと申します」
「うむ、わざわざこんな田舎までご苦労であったな」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。ロンディニウムを見た感じですとなかなか洗練されてるじゃありませんか。統一してメアリー殿ともう一人の補佐ジェーン殿の賜物じゃないのですか?大変すばらしいことでございます」
アレクサンダーは褒め称える
「で、そんな上辺だけの言葉を唱えて要件はなんだ?」
アレクサンダーの目がキラリと輝く
「大陸侵攻の準備として海軍を整えているようですが、それに伴い偵察としての私掠船…海賊の活動をやめて欲しい」
「ほぉ~わが誇り高き騎士の国に海賊などはおらぬよ。それともゲルマニスクはわが国と戦争を望んでいるのか?」
エリザベスが冷めた顔つきで脅す
「いえいえ、そんなつもりはありません。ただ、海賊ですから多くの商船や民間船が襲われ、犠牲者が出ております。あなたがやめろの一言で解決するのですよ?例え、関係があろうとなかろうとね」
アレクサンダーは目をパチリとウィンクする
(こいつ…)
「まぁ、それは良しとして…このままでは大陸制覇どころか、侵攻ができなくなりますよ?」
アレクサンダーが追加の脅しをかける
「こちらの情報によりますと最近多くの船が沈んでるんじゃあありませんか?それは当然でしょう。ユーロピアで一位と二位の海軍を持つヒスパニアとフランクの海軍が放たれたのですから…我々ですらこの海軍に太刀打ちすることができません。このまま彼らを怒らせると逆に進行されますぞ!特にヒスパニアには気を付けてください。あの国は陸海ともにユーロピア最強なのですから…建国期から超大国と戦争を続けることは並大抵のことではありますまい」
余談なのだが、二番目に強いといわれているのがフランクである…ただしこの軍には決定的な弱点があるのだが、今はどうでもいいだろう
「しかし、アレクサンダー殿は我々の状況を打開する策があるのだろうう?故にここに来た。相違はないだろう」
メアリーが口角を上げながら尋ねる
「ええ、ありますとも…しかし、前提条件が一つ…我が国とヒスパニアに対する攻撃をやめることですな」
「ほう、完全に止めろではなく…一部をねぇ…なるほどねぇ…あなたは中々汚いわ。私たちを利用して敵対国にちょっかいをかけるつもりなのね」
ジェーンは嫌悪感を露わにして軽蔑する
それを侮蔑に満ちた笑みを浮かべるアレクサンダー
「ええそうですよ。けど、感謝してくださいね。私の言う通りにすれば、ヒスパニアの海軍が止められ、長年の夢であった大陸に侵攻できるのですよ。ですが、誇りというくだらない物に縛り付けにされている野蛮人はそんな選択が思いつかないだろうと考えた我々文明人が啓示を与えているのですよ。どうします?ああ、ここで私を殺したらすべてが無駄となります。陛下が大陸連合軍を率いてこの国を滅ぼすでしょう」
周囲の重臣は怒りに狂い今にも剣を抜きそうだが…ジェーンとメアリーは自分らの主を見据える
「一つ貴公に問おう。そなたの国には騎士はいるのか?」
エリザベスが尋ねる
「ええ、いますとも。まぁ、ほとんどは陛下が殺しましたけどね」
「何故」
「簡単ですよ。彼らは戦争になるとまったく使い物にならない。それでも陛下は学びの場と鍛えの場を提供したが、ほとんどの騎士たちは拒絶したのですよ。誇りのために…故に誇りごと殺しました」
周囲は唖然とする
「よかろう…ゲルマニスクとヒスパニアの船だけ攻撃を中断しよう。ヒスパニアを頼むぞ」
「御意」
ここで初めてアレクサンダーは片膝をついた。
時は戻り…
「…ということです」
「ふむ、大義であった…これで、フランクの包囲網があと一つで完成される。残りはヒスパニアか…いけるか?」
フリードリッヒは確認を取る
「今回の成果を携えれば確実です。これで包囲網が完成し、フランクを釘付けにしてる間、我らは東を攻撃できる訳です」
アレクサンダーはニヤリと笑う
「では、早速だが…行け!ヒスパニアを我らの手に収めようぞ!バルタザール!」
「ここに…」
先程まで、天幕の裏という目に見えない所に隠れていたバルタザールが現れる
「軍をかき集めろ!アレクサンダーの報告を持ってローマと共に東に攻め混むぞ!オストマルクの次はボヘミアだ!」
「御意!」
バルタザールは膝をつき、大急ぎで王の間から出ていく
ゲルマニスクはフランクの暗躍を知らず、フランクはゲルマニスクの企みに気付かず…
ただ神のみぞ、真実を知る。
そして、後に両者は知り、一方は歓喜に喜び、一方は絶望にひす。
愚者が災厄を呼び寄せたことに…
ふーむ、ネタバレちっくになっちゃったなぁ~まぁ、とうなるか想像してください(´ー`)




