早期 《ゲルマニスク2》
うん、自分はフリードリッヒがやっぱり好きだね…コイツは何かと書いてて楽しい(((o(*゜∀゜*)o)))
時は少し遡り…
「陛下…」
フリードリッヒッがニヤニヤと笑う
「安心しなよ。バルタザール。僕は別に悲しんではいないよ。これがゲルマニスクの実力だってことがよくわかったからね。軍制改革に反対する勢力はこれで一掃できると思うよ!」
「それは…そうですね。我が国の病巣を一掃できます」
バルタザールと呼ばれた男が首肯する
「だから君を含めた三人を新大将に任命したんだ。失望させるなよ…」
「御意」
バルタザールは片膝を地につける
ゲルマニスクの軍制改革…フリードリッヒはゲルマニスク軍を以前の封建兵主導から全て傭兵に切り替えたのだ。
このユーロピアで傭兵業に最も力を入れてる国はロマンシュ州同盟である。この国は、国土の大半が山岳地帯であり、主要な産業がないため、血を輸出する傭兵業の最大手である。今回フィリップが雇った外人部隊は全てロマンシュ兵で構成されている。
では、フリードリッヒはロマンシュ兵を雇ったのか?
否、
全ユーロピアで最も多く傭兵として雇われているのは、意外にもゲルマニスク人である。かつてゲルマニスクは封建体制のため、土地や家督を相続するのは長男のみである。農民も継ぐのは全て長男である。よって次男や三男などは収入を得るため、傭兵になり、各国の外人部隊として働いている。
フリードリッヒは各国に散らばったゲルマニスク傭兵を全て、買い取ったのだ。今回フリードリッヒの数々行った政策で最も金がかかったのはこれである。粛正の時、没収した莫大な財産、国庫だけでは足りず、多くの商人からも借りた。
だが、世の中には反対勢力が勿論いる
この軍制改革で多くの騎士が反発した。
騎士の十八番である戦闘がとられたのだ。屯田兵と、聞こえはいいが、農民とは全く変わらない!という意見が多く出たのだ。
フリードリッヒッはそれらの不満を全て解決しようと、軍学校への入校を推奨している。多くの騎士、及び貴族の子弟は入校し、戦術のノウハウを学び、将来指揮官として大成するべく学んでいるが…一部、旧式の…伝統的な…誇りのある…華々しい…騎士としての…堂々とした…一騎討ちの戦いをする騎士団が、傭兵と軍学校を、反対しているのだ。
貴族や騎士は誇りを持って正々堂々と戦い、そして華々しく散るという…夢のような物語を現実に持ってこようとするお花畑の頭脳をした老害が…
フリードリッヒッは彼らを何の罪もなしに処刑すると後々がメンドクサイので、敢えて、フランクを挑発し、小規模な戦闘を起こすことを決めた。フランクの侵入を確認した後、はじめは傭兵を出兵させると老害達を脅し、焦った騎士たちは墓穴を掘る
「彼らは金の為に容易く裏切る下賤な奴等ですぞ!そんな者共より、誇りに満ちた我らが敵を追い出して見せましょうぞ!」
悲惨な結末を迎えるとは知らず…
計画が予定通りに進んだフリードリッヒは次の手を打つべく奔走する
「よろしいのですか…」
「おお、バルタザール!別に構わぬぞ。奴等があの陸軍国家であるフランクの精鋭を追い返せる実力があるのならそれでよし、なくともよし、どちらに転んでも我が国は良いことしかない」
フリードリッヒはニヤリと笑う
「まぁ、無理ですな…我が国の騎士たちは長年、他国と戦争などしたことないですから…代わりに内紛はしょっちゅう起こしていますが、私闘ですから、軍を指揮しない事実上一騎討ちの形式ですし、日頃の訓練もメチャクチャなものですからな…」
デュースブルグの丘の上…
「くだらない…見ろよ!バルタザール!剣術のお稽古しかしたことがないカスどもを…1騎としての剣の振り方はわかっているが、集団戦になると互いの距離もとれてない。行軍はあれだけ偉そうに列を崩さなかったのに、一斉に突撃をさせてみたら、団子のように塊りになっている。問題点だらけだ!最も最悪なのが…」
「下がれ下郎!我は伯爵家に繋がる「やかましい!」
「待て!武器が……「知るか!」
「ボルトとは卑怯な!正々堂々と戦ッ…グエッ」
「クッ、紐が邪魔で剣がッ…「前に集中しろ!」
バルタザールは失笑する
「戦場は生きるか死ぬかの場だ。そんなことをする余裕などないのに…」
「ああ、矢を下賤な武器として見る…集団戦…後ろから切りつける…どれも勝つための手段にすぎない!戦争は勝てば正義だ!誇りなど犬に喰わせろ!帰るぞ!もう興味は失せた」
そして…現在…
「侯爵、何か言うことはあるか?」
フリードリッヒは怒りに満ちた目を向ける
「我が騎士団は精一杯戦いました!敵は卑怯な手段を用いて戦ったのです。今回の敗戦の責は我らではありませぬ!もう一度、ご機会を!必ずや、我らが勝利してみますとも!」
侯爵は必死にいい募る。自分は悪くないと…全て敵が悪いのだと…
「侯爵…騎士は誇りを持って死ぬ…相違はないな?」
「勿論ですとも!今回の戦いで死んだ者達は皆誇りを胸に散っていきました!」
侯爵は高らかに宣言する
「では、聞こう…何故貴殿は生きているのかね?」
空気が凍る
「なっ、何を言っ…」
イライラしたようにフリードリッヒはいい募る
「わからぬか?お前ら騎士は誇りを胸に戦うのだろ?敵に背を見せるのも、敵の手におちるのも恥だろ?誇りのある騎士は迷わず玉砕か自決を選んでるのに、何故貴様らは生きてるんだ?」
「へっ、陛下!」
フリードリッヒは手をあげる
周囲の近衛兵は封建兵の首魁である侯爵を捕らえる
「お前らは老害だ!まともな戦いが出来ないのに、我が物顔で、利権や特権に群がるゴミだ。そんなお前には私から死をプレゼントしてやろう。ああ、その代わりに名誉は守ってやる。喜んで死んでいけ!」
フリードリッヒは背を向ける
「嫌だ!離せ!私は、私はまだ死にたくない!陛下!陛下!何卒命だけは!」
侯爵は唾を吐き出しながら叫ぶ
「陛下~末代まで怨みますぞ!この国に呪いあれ!」
「ふん、見苦しい…残りの頭の固いやつも殺せ!私は強い軍しか求めない。弱いやつは淘汰されるべきだ!貴様らも日々の訓練を怠るな!」
再び粛正の嵐が吹く…
以前は忠誠を誓わない奴を殺したが、今回は無能を殺した…さて、次は何を殺そう
一週間後
「陛下、今回で敗戦となった指揮官を全て処刑致しました。捕虜となった者共は全て処刑しなくてもよいので?」
粛正の実行責任者が問う
「お前はバカか!組織は全てを処断してよい物ではないわ!処断してよいのは頭だけだ!コイツを連れていけ!」
また一人犠牲者が増える…これが兇王と呼ばれた男である
第二次粛正が完了後、フリードリッヒは今回の戦いの褒美と新たな軍の編成と新大将を正式に公布した
今回、フランク軍と本格的な戦闘が始まる前に、フランク軍と戦闘し、捕虜となった兵士は皆勲章を与え、昇給と昇官を与える。
今回出兵し、敗北した軍のうち、徴集された農民に関しては、生存者は国から年金を至急し、負傷者は年金と税の免除を、死亡者に関しては、家族に年金と税の免除と報償金を授与する。戦闘の前に捕虜となった農民も適用する
今回の戦いで無能さを呈した騎士、貴族は全員殉死を命じ、英雄として扱う。各家は名誉を与え、現在公職についてる者は全て勇退を命じる。復職したければ、文官武官共に学校へ学び直せ!
続いて軍の編成を発表する
軍は以前の王軍、国軍の二軍制から三軍制に変更する。
王軍とは、余の軍であり、国軍は貴殿ら諸侯の軍である。
強国を目指す我が国にとって、こんな無駄な編制は要らぬ!
第一軍…これは中央軍である!我が国の精鋭を集める。現在軍学校で学んでおる中央貴族と我の直属騎士が指揮官としてなり、傭兵部隊と市民軍を指揮せよ!
第二軍…これは地方軍である!現在学校で学んでおる地方貴族と下級騎士が指揮官となり、貴公らの従士、一族郎党、家臣を引き連れろ!今回死んだ中央の無能どもはいなくなった!奴等の元で腐らずに磨いた腕を存分に見せろ!
第三軍…これは王国軍である!貴殿らは、第一と第二から選ばれた本物の精鋭である!貴族には近衛騎士の称号を、騎士、および平民には宮廷騎士の称号を与える!
第一軍の任務は大都市の防衛、及び各国の侵攻
利益を求める傭兵は基本攻めるのに向いている
第二軍の任務は中小都市の防衛、及び国境の監視防衛
領主や屯田兵として土地と繋がっている彼らには最適だ
第三軍の任務は王都の防衛、及び警備兵と提携しての王都の治安維持、王宮の防衛、要人の警護である
これは優秀すぎる者や、クセのあるものなど、集団では扱いにくい、個人で優れた者を集めた兵だ。実戦には殆ど使わない飾りだと思われるが、侮ることなかれ、適材適所に配置すれば最も強い部隊である
第一軍大将 メルキオール
第二軍大将 カスパール
第三軍大将 バルタザール
以上
王宮の間…
ここにはフリードリッヒとアレクサンダーの他に、新大将三人がいた
「愉快だ愉快だ!私は満足だ!貴公らを雇ったかいがあるものぞ!貴公らは貴族の次男三男として生まれ、フランクの軍学校に留学して戻ってきた者で最も優秀な者共だ!貴公らに問おう!私が与えた兵の感想を!」
フリードリッヒは満足そうにグラスのワインを飲む
「では、私から…」
メルキオールが声をあげる
「うむ」
「この度の中央軍、軍団長を貴族、隊長を騎士、部隊を傭兵として纏めるのには反対です。優秀な者は私が勝手に昇進させたいと存じます。無能は所詮無能なのですから、故に陛下には私が推薦するものに騎士の称号や爵位を下賜なさるよう…」
メルキオールは頭を下げる
「よい!よいぞ!」
「なら、不満はありませぬ。私の軍は全体的にプライドが高いですから、身分差をはっきりしたほうがやり易いです。傭兵は収入の為に戦い、上は家の為に戦う。それで十分です」
「では、カスパール…貴殿はどうだ?」
「私はいいわよぉ。皆愛国心に満ち溢れてるものぉ、どうかお願いがあるんだけどぉ、農民を徴集するのはやめてよぉねぇ~、畑を耕す人がなくなりそうなのよぉ…」
「おお、それは考えておったぞ!今回学校の門戸を市民にも開けようと思っておるのだ!優秀な市民を優先的に第二軍にまわそう!」
「ありがとー」
因みにマッチョなオネェである
「バルタザール…貴殿は?」
「我が軍は抜かりありません。何か勘違いした奴等が多かったので、私自ら鍛え直してるところです。皆私に従順になるでしょう」
「そうか…だが、覚えておけ…貴殿が出るときは国は終わりだということを…」
「肝に命じときます」
「では、貴殿らに初任務を与えよう」
フリードリッヒはニヤリと笑う
「第一軍全軍8万を東に侵攻せよ!狙う国は小国オストマルク!首都ヴィエナにある西ユーロピアの王冠を我が下へ!行け!」
七王国がひとつ、ゲルマニスク王国が動いた。
この情報は瞬く間にひろがり、世界に衝撃を与えた!
ゲルマニスクが大国にのしあがる一歩に踏み出したのだが、その一歩は険しいものであった…
何故なら…
オストマルクは周囲と連合を組んで待ち構えていたからだ
その数、6万3000
両国は1カ月間国境付近でにらみ合いを続けた
間もなく開戦だ
さぁ、勝利の女神を抱くのはどっちだ?




