誕生
部屋の中が魔力の光で明るくなる。トシばあちゃんの橙色、リーアお姉さんの若草色の二色の中に徐々に朱色が加わる。産まれてくる赤ん坊の魔力の光だ。最初は淡かった朱色の光は、段々その明るさを強め、部屋一杯に拡がった。光が強まる毎に、赤ん坊の体はその姿を表していく。そして、一際光が強まった瞬間産声と魔力の竜巻が発生する。咄嗟に僕は、赤ん坊を自分の魔力で包み側に引き寄せた。臍の緒を切ってタオルに包み抱き抱え、赤ん坊の顔を覗き込む。赤ん坊の魔力を遮断したことで竜巻は掻き消え、部屋に被害が出るのは食い止められた。それを横目で確認しつつ、僕は赤ん坊に対して魔法を展開する。
「我、汝の契約者としての絆をもちて汝の力を預からん。魔力封印」
魔法が完成すると、赤ん坊から魔力が僕の中に流れてくる。その魔力を、体内にイメージした金庫に入れ鍵を掛ける。僕の中の金庫に魔力が全て収まると、部屋に満ちていた魔力の光も収まり消えていた。
「とりあえず、ほぼ全ての魔力を預かったからこの子の感情で魔力が暴走する危険は無くなったかな」
キョトンとした顔で僕を見上げる赤ん坊は、自分の魔力が減った事がわかっていないようだ。
正確には、魔力が減った訳ではなく魔力が生じるそばから僕の方に流れてくるのだが、産まれたての赤ん坊がそれを理解していたら逆に恐ろしい。生命維持に必要な分を除き、全ての魔力を預かる僕の負担が全くない訳ではない。まあ、普通の魔力量の人なら預かった魔力に呑まれ、暴走から廃人コースは間違いない。
「凄まじい魔力量だねえ」
「我が子ながら予想以上の魔力ね。死ぬかと思ったわ」
トシばあちゃんと身繕いをしたリーアお姉さんは、僕の腕の中にいる赤ん坊を見つめ、疲れた表情で呟いた。