翌日
翌日はいつもよりゆっくりと起きだした僕は、そっと隣の部屋を覗き込んだ。
「おはよう。ルクス」
すでに起きだしていたリーアお姉さんは、僕の姿を認めて声をかけてきた。
「おはよう。リーアお姉さん。体調はどう?」
臨月であることを主張するお腹を見ながらの僕の問いに、お姉さんは苦笑して
「大丈夫よ。ただ、少しお腹が張ってきたから今日・明日あたりに生まれるかもしれないわ」
と爆弾を落としてくれた。
「わかった。朝ごはんすんだら産婆さんを呼んでくるよ」
「ありがとう。そういえば私、門を通らずに町に入ってしまったから不法侵入になるんじゃない?」
「大丈夫だよ。そこは僕のほうでどうにかなるから。リーアお姉さんは気にしないで。じゃあ、朝ごはん作るから下に降りてきてね」
爆弾発言に同じく苦笑して返し、僕は朝ごはんを作りに階下に降りた。
(今朝のメニューは………トーストにサラダ、それと野菜スープの残りでいいかな)
献立を決めると、素早く準備を進める。すべてのメニューが机に並ぶ頃、身支度を整えたリーアお姉さんが降りてきた。
二人で向かい合って席に着き、顔を見合わせ
「いただきます」
声を合わせて唱和し、食事を始める。
スプーンで、スープを掬って口に運ぶリーアお姉さんをじっと見つめる。
「何?ルクス。じっと見つめて照れるじゃない」
「いや、スープの味が口に合うかなと思って」
「ああ、そういうこと。おいしいわよとても」
ニコッと笑って答えたリーアお姉さんは、手を休めず食事を続けた。それを見て、僕も自分の食事を再開した。
食事が終わり、食後のお茶を飲んでいる時それは訪れた。
「ルクス、どうやら陣痛が始まったみたい」
お腹を押さえたリーアお姉さんは、苦笑を浮かべて教えてくれた。
「わかった。産婆さんを呼んで来る」
僕は椅子から立ち上がると家を飛び出し駆け出した。