遭遇
妊婦は必死に防御結界を張っていたが、あちこちに罅が走り今にも結界は崩壊しそうな状況だった。それを見て取った僕は、妊婦の結界を補強し妊婦と魔物・魔獣の間に身を滑り込ませ剣を抜いた。そして手近にいた魔物を斬り飛ばした。突如現れた魔族の僕に、妊婦は驚いた様に目を見張った。
「大丈夫ですか?」
魔術で魔獣を消し飛ばし、剣で魔物を斬り捨てながら、僕は後ろに庇った妊婦に声をかける。
「ええ。何とか大丈夫よ。貴方、フリーの魔族よね?なぜ、契約者でも無いのに助けてくれるの?」
「フリーって判るんですか?」
「一応、妊娠するまでは守護者だったの。契約してたのは聖族だったけど」
フリーであることを見抜かれた僕は、思わず妊婦に問い返した。
「契約していた聖族はどうしたんですか?妊娠して一時的に守護者の力が揮えなくなっても、契約は解除されないはずですよね?」
問い返す間も、魔術を放ち4~5体の魔物と魔獣を消し去り剣で斬り捨てる手は休めない。
そんな僕の問いに、妊婦は寂しそうに答えてくれた。
「彼は、死んだわ。守護者としての最後の仕事でドジやっちゃって、私をかばって死んだの。その後、身ごもっていることがわかったの」
妊婦の答えに、僕はどう返していいかわからなかった。ただひたすらに向かってくる敵を排除することに注力していた。
何十体目かの魔物を斬り捨てた僕は、自分を呼ぶ気配が段々強くなるのを感じていた。気配が強くなるごとに、自分の魔力量が上昇し、攻撃力が増していく。
「この感じ・・・・・・ひょっとして」
あることに思い当たった僕は、自分と妊婦を囲うように結界を張り妊婦の傍に下がる。
そしてそっと妊婦のお腹に手を当てた瞬間、強烈な光が迸り圧倒的な力の奔流が手を伝って流れ込んできた。
「間違いない。僕の契約者は、この子だ。まだ生まれてもいないこの子が、僕をここへ呼んだんだね」
迸った光と、僕のつぶやきに事態を察した妊婦は自分のお腹と僕の顔を、交互に見つめ驚いた表情を浮かべた。
「まさか、胎児の状態で契約者になりうるなんて、今まで聞いたことがないわ」
「僕も聞いたことないですよ。でも、実際自分の身に起こったことだから認めないわけにはいかないし。きっと最年少の守護者ですね。いいのか、悪いのか判りませんけど」
「悪いとしかいえないわ。まだ善悪の判断もつかない状況で、強い力を持てばトラブルに巻き込まれるだけよ。自分で判断がつくようになるまでは、周りで守る存在が必要になるわ」
「確かにそうですね。でも、だからこそ僕が契約者に選ばれたのかな。この子が自分で判断できるようになるまで、力のほぼ総てを僕が預かりますね。幸い僕自身魔力量が多いので、制御するのは難しくないですし」
「そうね。親和率も高そうだし、そうするのが一番よさそうね」
「その為に今は、ここから撤退しないとですね。今の接触で、かなり魔力が増加したから、アレが出来るかも」
妊婦の承諾の言葉を受けて、僕は増加した魔力を使い術を発動した。