01 /想い出の日々よ、愛しき人よ *
古きよき時代だった。
何故なら、善きにつけ、悪しにつけ、人々が情熱を持って命を賭けていたからだ。
運命がその強大な力を持って介入しても、人は享受しただろう。
と言うより人が運命を求めていたのかもしれない。
――この頃頻繁に観る、覚えの無い光景
女がただ立ち尽くし見守る中を、
男がゆっくりと無言で、血を流しながら微笑み崩れていく
そして女は言う――
“愛してました”
“愛してたのです――”
“ユーデリウスさま……!”
己のしでかした事に慄きながら、泣き叫ぶ女は、
風に舞うように、腕を大空へ広げる
愛の証に女は身を投げたのか
わかるのは――
わかるのは、私はその時そこにはいなかったはずだ、
ということ
だが、彼は死してなお、運命の輪を廻し続け
逆らう術を持たぬ私に、より強い呪縛を投げかける
『星を往く船、海を渡る船には、
羅針盤を操る水先案内人達が乗るだろう。
嵐に迷い、その航跡が失われることのないよう、
彼らが祈り求めるたび彼らが名を口ずさむたび、
船の標を打ち立てる守護神が寄り添わねばならない……
その船は、至高者が造りたもうたものであるからだ――』
ルイーザはけだるい夢の中から、醒めつつあった。
過労からくる軽い発熱のせいか、夜着がわずかに汗ばんでいる。
「……」
仄かな明かりの灯る、ひと気のない寝室で何を言おうとしたのか、乾いた唇を微かに動かしては、疲れが癒されてないように再び目を閉じた。
暫くして扉の外を柔らかな足音と、抑えたような廊下を踏みしめる足音がし、やがてそれは扉の前にたどり着き、小声で低く囁き合い、遠慮がちにガチャリと重々しい扉が開かれた。
入ってきたのは二人だとわかった。
「……ルイーザ様…」
恐る恐る掛けてくる声は、ルイーザの屋敷にいる侍女である。
「ルイーザ様」
彼女はもう一度言った。